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'98年に経営トップが株を売った会社~ビル・ゲイツ氏はMS株を2189万株売却~

1999年01月14日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 今週に入って、米国のハイテク関連の大手企業が相次いで決算を発表。'98年10~12月期では、米インテル社は売り上げが前年同期比17パーセント増加、米アップルコンピュータ社も8パーセント増加した。こうしたハイテク産業の好調によって、株式相場の指標となるNYダウは、この8日(現地時間)には史上最高値の9607ドルを記録した。

 しかし、ここ数日、ブラジルの経済危機でNYダウは値を下げており、アメリカのエコノミストの中には、「アメリカの株価は、もう上がらないのでは」という見方も多いという。これらのエコノミスト達が、個別企業の株価の今後を判断する材料として参考にしているものに“インサイダー取引情報”というものがある。インサイダーとは、企業の重要な内部情報を知っている経営トップ、役員、大株主のことである。これらのインサイダーは、自分の会社の将来の業績について、もっともよく知る立場にあり、彼らが株を売るということは、経営者自身が自分の会社の株価はもう上がらないとみている、と判断されるため株式投資の重要な指標として注目されている。

 企業の情報開示に関する規則が日本より厳しいアメリカでは、経営者などのインサイダーが、ある一定の金額以上の自社株の売買を行なった場合には、それを届け出て公表しなければならない。そして、インターネット先進国のアメリカでは、その情報がウェブサイトで容易に入手できるのだ。米インテュイット社が運営する“Quicken.com”に開設されている“Insider Trading”のデータをもとに、各社の'98年に経営トップが株を売った会社、売らなかった会社を紹介しよう。

Quicken.com
Quicken.com



●米マイクロソフト社~ビル・ゲイツ氏はMS株を2189万株を売却~

 米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長兼CEOは、同社の株式を'98年に2189万株売却している。1株90ドルで計算すると約20億ドル(約2200億円)のお金が懐に入った計算になる。同氏は、それでも、まだ同社の株式を5億株以上保有しており、株だけで450億ドル(約4兆9500億円)の資産を保有している計算になる。ただ、同氏の場合、株を売る計画を公表したものの、結局売れなかったケースも多いようだ。

●米インテル社~クレイグ・バレット氏は80万株を売却~

 増益決算を発表した米インテル社。昨年春に社長に就任した、クレイグ・バレット氏は、ストックオプション(自社株購入権)を行使して、インテル株を数ドルで購入、すぐさま1株80ドル以上の価格で売却している。社長就任後の8月には、ストックオプションを行使して123万株を取得しているが、そのうち70万株を売却しただけなので、まだ株価は上がると判断したようだ。同氏は、トータルでは、まだ80万株以上保有している。

●米アップルコンピュータ社~8月以降は誰も売らず~

 米アップルコンピュータの'99年度第1四半期('98年10月~12月)決算は、iMacの販売好調で売り上げは8パーセントも増加した。同社のスティーブ・ジョブズ暫定CEOは、アップルに返り咲く前にアップル株を売却してしまったのは有名な話。ただ、昨年iMacを発売してからの、同社の業績の好転は目を見はるものがある。インサイダー取引情報を見ても、'98年7~8月に同社の3人の上級副社長が株を売ったのを最後に、同社のインサイダーは誰も株を売っていない。彼らは、アップルの好調がまだまだ続くとみているわけだ。

●米デルコンピュータ社~マイケル・デル氏は825万株を売却~

 急成長を続けている米デルコンピュータ社の会長兼CEOのマイケル・デル氏も、'98年に825万株を売却、売却総額は全体で6億8000万ドル(約750億円)に達している。同社は株式の分割を行なっているため、マイケル・デル氏の持ち株数は1億9262万株にまで増加しているが、昨年11月にも毎週のように売却計画を発表したのが、ウォールストリートなどで話題を集めたという。

 こうした経営トップの株式の売却は、株主だけではなく、その会社の社員にとっても、自分の会社の先行きを判断する材料になっている。特に、米国の企業では、給料の一部としてストックオプションが付与されることが多く、自社株を売るタイミングを図るために、これらの情報を参考にすることが多いという。特に最近、米国のハイテク企業の日本法人の社員の間でも、こうしたインサイダー取引情報が関心を集めているという。

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