プロ向けならではのハイスペック、デザインクオリティー
アップルコンピュータ(株)は、新しい『PowerMacintosh G3(以下、New
PowerMac G3)』シリーズをリリースした。New PowerMac G3は、'97年12月にリリースされ大成功を納めた『Power
Macintosh G3シリーズ』の後継となる製品群で、銅配線技術を採用した最高400MHzで動作する最速のPowerPC
G3プロセッサーを搭載、さらに業界に先駆けて最新にして最速の2D-3Dグラフィックアクセラレーターチップ『ATI
RAGE 128』を初めて採用している。New PowerMac G3は、これまでアップルおよびMacintoshを支え続けているコアユーザーであるデザイン、印刷、出版に関わるプロフェッショナルが待ち望んでいた製品群といえる。プロフェッショナルが使うマシンである限り、そのスペックがコンシューマー機である『iMac』を超えるものであるのは当然といえるが、さらにそのデザインも挑戦的かつこれまでのPCにはない画期的なものとなった。
同社代表取締役の原田永幸氏は、昨年10月、筆者のインタビューの際に「プロフェッショナル向けにデザイナーの方にも満足いただけるデザインのマシンをご提供します」とこたえてくれたが、今回はそれが現実のものとなった。
さらに好評を得ているiMacは新しくスペックを強化し、新たに5色のiMacをラインナップに加えた。
それではNew PowerMac G3は、iMacがコンシューマーを対象に世界的に広く受け入れられたように、プロフェッショナルには受け入れられるのだろうか? 第一線で活躍するデザイナー/アートディレクターに聞いた。
iMacはカラーバリエーションがあって当然!~サトウ・リッチマン氏
6日に発表された『iMAC』の新色5色 |
東京・渋谷にあるスタジオスーパーを率いるアートディレクターのサトウ・リッチマン氏は、まずiMacについて語ってくれた。「いや~、やはりでましたか。iMacは、最初からカラーバリエーションがあってはじめてコンセプトが成り立つ商品だと思っていました。僕自身もデザイナーだから、iMacのデザイナーの気持ちがよく解ります。商品も爆発的に売れているし、カラーバリエーションも揃えられた。多少の不満は残っても、これで本望でしょう」とiMacの展開について評している。
New PowerMac G3については、「これでひとまず十分ですね。“Think
different”のラインの上に、どこにでもありそうな形のG3は不要だよね。で、USBもEthernetもFireWireも備え、何だか凄いハードディスクを載っけて登場したNew
PowerMac G3は、それだけでOK! 文句なしです」と手放しで絶賛する。
しかし、そのデザインについてはやや難色を示した。「個人的な趣味を言えば、ツートーンカラーは嫌いなんです。全身真っ赤とか、黄緑とか、オレンジとか好きなんだけどな……。日本の市場では、このままのスタイルで、全身半透明の黒にしたら売れそうだよね。アップルには、この調子で円柱形のMacや薄いだけじゃないPowerBook(お願いだから軽くして!!)などをどしどし創ってもらいたいな。使っていると、名前をつけたくなるような、かわいいヤツをね」とデザインに対してさらなる注文は忘れなかった。
デジタルビデオもラクラクですね~栗原公氏
(株)公デザインアソシエイツは、東京・神宮前にオフィスをかまえ、DTPをはじめマルチメディアコンテンツやウェブデザインまで総合的なデザイン・ワークを行なっている。同社を率い、Japan
Publishing Consortiumの理事も務めるデザイナーの栗原公氏は、New PowerMac
G3について「こうなるだろうと予測してはいましたが、いざ目にするとNew
PowerMac G3は久しぶりにそそられるマシンです」と評している。そのデザインについては、「実はiMacはまだコンシューマーラインで、メインデザインの流れではないと思っていたのです。ところが今回のNew PowerMac G3を見て打ちのめされました。ジョブス氏は本当に中身も外見も全てを変える気なんですね。まだ手元にあるわけではないのでデザインや使い勝手の面などで詳しいことは言えませんが、ちょっと見ただけでは少なくとも過去10年の中で最も画期的な変身ですね。良かれ悪しかれ本当にデザイナーを刺激するマシンだと思います」とその画期的なインダストリアル・デザインに驚いていた。
スペックについては、「まず、400MHzのG3に2D-3Dグラフィックアクセラレーターチップ『ATI RAGE 128』が標準というのがすごいですね。これではWindows陣営もうかうかしてはいられないでしょう。10/100BASE-T Ethernet、USB、400MbpsのFireWireが組込みとあれば、スーパーなビデオ編集システム環境が簡単に構築できます。もうアナログラインに変換する以外の専用ビデオシステムは殆ど要らないでしょう」とNew PowerMac G3がコンテンツ・クリエーションの分野で優位性があることを指摘した。
おなじく6日に発表された新しい『Power Macintosh G3』 |
Macはやっぱりパソコンのフェラーリだ~柴山信広氏
「僕がMacをはじめたとき、他のマシンとは違うものを感じていました。それはまさにフェラーリに対する感じ方と同じだったと思います。僕のとって、Macはフェラーリだったのです」と4Dのデザイナー・柴山信広氏は語っている。さらに柴山氏は「今度のNew
PowerMac G3にもそれを感じることができますね」とMacに往時の勢いが戻ったことを指摘した。「デザインについては正直びっくりしましたが、このスペックにも驚きました。これだけのハードディスクがあれば常にレコーディングでもしておきたいぐらいですね。これだけのマシンがこの価格で手に入るというのも驚きです。まさに『フェラーリがこの値段で』ですね(笑)」と価格面について、手ごろであることを評価した
。
もちろんいずれの方も実機を見ていないのだが、基本的には歓迎の姿勢を示している。スペックについては文句のないものが用意されたかもしれないが、サトウ氏のようにデザインに対する好みは各人各様。それがビジュアルのプロであるデザイナーならばその目はさらに厳しいものになるはず。今後、New PowerMac G3もiMacのようなカラーバリエーション展開が用意されていれば別だが、そうした要求に応える用意はアップルにはあるのだろうか?