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【INTERVIEW】プロ集団が発射台になってこその“やってみなはれロケット”--シリコンバレーにあって日本にないのはプロによる人的支援

1999年01月07日 00時00分更新

文● 野々下裕子、

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 “関西がシリコンバレーのようにベンチャー企業を輩出する地域になるように--”との願いのもと、'97年3月にKS(関西・シリコンバレー)ベンチャーフォーラム(以下KSVF)が設立された。それから約1年後、シリコンバレーへの調査団派遣やシリコンバレーから関係者を招待しての勉強会が開かれることになる。'98年12月にこの会を通じて、同団体から1冊の本が出版された。タイトルは『ベンチャーズインフラ』。本著について、著者でもあるKSVF事務局長の籔内新吾氏と関西電力(株)秘書室副長の北村雅昭氏にお話を伺った。

 なお、KSVFは6日、KSVFベンチャーアイデア大賞の募集を発表した。ここへきて活動がさらに活発化してきている。

KSベンチャーフォーラム/チーフセクレタリー籔内新吾氏(左)、関西電力(株)秘書室副長北村雅昭氏(右)
KSベンチャーフォーラム/チーフセクレタリー籔内新吾氏(左)、関西電力(株)秘書室副長北村雅昭氏(右)



----KSVFの概要について聞かせてください。

薮内氏「KSVFは関西という地域に米国のシリコンバレー地域のような、起業家(ベンチャー)を育てていく風土作りをしようとい思いから設立されました。'97年5月に準備会をスタートし、 同年12月のシリコンバレーへの調査結果をもとにフォーラムの仕組みや事業内容を検討しました。'98年3月には正式にフォーラムをスタートしています。関西企業を中心に49社の企業と約400名の会員とで構成されており、参加者の中には大学関係者や一部個人の方もいます」

----起業家を育てることを念頭に置いているのですか。

北村氏「そうですね、ベンチャーそのものよりも、ベンチャーを支援する側の意識を育てることに主眼に置いています。会計やマネジメントといった専門的なワークショップを開催しているのもそのためです。専門家や経験豊かな企業経営者などに起業家の応援団(メンター)として参加してもらうことで出会いのチャンスを作り、お互いが知識を磨きながらビジネスを創造してもらおうというわけです」

----KSVFの具体的な活動内容は?

薮内氏「定期的に開かれる交流会や講演会のほか、専門分野を対象としたワークショップ、“メンタークラブ”と呼ばれる特別会員による会合などを開催しています。その他にも、学生が参加する“サマープログラム”なども開催しました。ユニークなシステムとしては、起業家の応援団である“メンタークラブ”の活動や、再挑戦を狙う起業家を支援する“起業研究所”というバーチャルな研究所作り、海外のストックオプション制度に似たフォーラム独自のルール“50%ルール”などがあります。現在は“KSVFベンチャーアイデア大賞”の募集を実施し、企業家支援に一役買っています」

KSVFは6日、“KSVFベンチャーアイデア大賞~関西若手研究者新規事業提案コンペ~”の募集開始を発表した。対象は、福井、徳島を含む関西2府7県の大学で研究する若手研究者。大賞1件には研究調査費助成100万円、優秀賞2件には同30万円、特別賞2件には同20万円を与える。参加申し込みの締切は2月12日。URLは、この記事末尾のKSベンチャーフォーラムと同じ。

----今回出版された『ベンチャーズインフラ』出版までの経緯を聞かせて下さい。

薮内氏「'98年3月に5名のアドバイザリーカウンシルをシリコンバレーの調査団として派遣しました。これをきっかけに、シリコンバレーの方々と具体的な交流関係が生まれてきました。KSVFの活動も大きな影響を受け、少しずつKSVFならではノウハウが築かれてきたんです。そうした財産を少しでも共有してもらおうと、事務総長である今井賢一氏のアドバイスもあって1冊の本にまとめたのが主な経緯です」

----出版までの段取りで苦労されたことはありますか。

北村氏「筆者の方々がそれぞれ忙しいということもあり、ほとんどオンラインを通じて仕事が進みました。そのため、専門分野はもとより前半はシリコンバレー、後半は関西というようにそれぞれの地域についても幅広い意見を盛り込むことができました。インターネットがなければ今回の出版はありえなかったでしょうね」

----KSVFの活動が始まって間もない段階で、出版を決意した理由は。

北村氏「あとがきにも書いていますが、この本をきっかけにベンチャーに関する意見交換を電子メールなどを使って、もっとやりとりしていきたいと考えたらからです」

----シリコンバレーと日本の違いをどう考えますか。

北村氏「日本に最も欠けていると感じるのは人的ネットワークです。資金的な援助も必要ですが、専門の弁護士やアナリストといったプロフェッショナルによる人的支援はこれから不可欠となるものです。ところが、日本ではベンチャーの基準もばらばらですし、成功事例もほとんどありませんね」

----『ベンチャーズインフラ』がそのための足がかりになればいいと。

北村氏「ええ。“ベンチャーはビジネスになる”という雰囲気作りのためにも、企業意識は変えるべきだと思います。また、この本がプロフェッショナルを育てていくきっかけになってくれればと願っています」

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