'98年秋、米レゴ社がアメリカとイギリスで発売した『LEGO MINDSTORMS』。レゴブロックで作ったロボットを、パソコン上で作成したプログラムによって動作させる、このコンセプトの素晴らしさによって、米国では初期ロットが即日完売。日本でも、まだ正式発売されていないにもかかわらず、すでに一部のマニアに圧倒的な支持をえている。
ASCII24では、11月中旬に米レゴ社のLinda Dalton(リンダ・ダルトン)グローバルプランドマネージャーにインタビューを実施。'99年春に全世界に向けてオンライン販売を開始することや、日本語版の発売が'99年秋になること、また『LEGO
MINDSTORMS』廉価版の発売を計画していることが明らかにされた。このインタビューからは、レゴという玩具メーカーが、ロボットというデジタル玩具の世界へ足を踏み入れていく上での戦略を伺い知ることができる。かつては、花札とトランプのメーカーにすぎなかった(株)任天堂が、ゲーム業界で急成長を遂げたのを彷彿とさせるものでもある。
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さて、『LEGO MINDSTORMS』は、一部のマニアが英語版の製品を米国の玩具店から直接購入したり、あるいは小ロットずつ日本の小売店が販売しているような状態だが、'99年秋の日本語版の正式発売によって、日本での大ブレイクも間違い無し、と言われている。さて、上記のインタビューを行なった際に、米ニューヨーク市で入手した『LEGO
MINDSTORMS』のレビュー記事をお届けしよう。
●『LEGO MINDSTORMS』を紹介する
『ROBOTICS INVENTION SYSTEMS』。このほか700個以上のレゴブロックが含まれている |
ここで『LEGO MINDSTORMS』について簡単に説明しよう。'99年秋に発売された『LEGO
MINDSTORMS』は、基本セットというべきものであり、これは『ROBOTICS
INVENTION SYSTEMS』(RIS)という名称がつけられている。
モーター(左)とRCX(右) |
このRISは、“RCX”という名称のコントロールユニット、700個以上のレゴブロック、2つのモーター、2種類のセンサー、赤外線トランスミッターがセットになっている。コントロールユニットのRCXには、日立製作所(株)の8bitのマイコンが搭載されており、RCXを核にしてロボットを作成する。
赤外線トランスミッターでプログラムを伝送する |
パソコン上で作成したプログラムを赤外線トランスミッターを使用して、RCXに伝送し、そのプログラムでモーターやセンサーをコントロールする。動作環境は、OSがWindows
95、CPUがPentium-90MHz以上、メモリー16MB以上、4倍速以上のCD-ROM、シリアルポート1基を搭載したPC/AT互換機で、英語版のソフトでもWindows
95日本語版で、問題なく動作する。
パッケージには、レゴブロックやRCXのほか、2冊のマニュアルとプログラム用のCD-ROMが同梱されている。いちいちマニュアルを読まなくても、CD-ROMにチュートリアルモードがあり、その指示に従っていけば、RISの仕組みや概要が理解できるようになっている。
チュートリアルやプログラミング環境のほか、設定された課題に挑戦するチャレンジコースなどがある |
このCD-ROMのチュートリアルはユーザーごとのチュートリアルの進捗状況を記録しており、いったんパソコンを終了させても次のステップから始めることができる。特にマニュアルなどで仕組みを勉強する必要もない。赤外線通信用のトランスミッターのセッティングがうまくいかなくても、トラブルシューターの指示に従えば解決できるようになっている。また、プログラムのチュートリアルでは、まずロボットの動作を動画で見せ、続いてプログラムを作成する過程を表示し、そしてダウンロードし実際に動作させる、という手順を繰り返す。
各コマンドのブロックを組み合わせてプログラムを行なう |
このチュートリアルは非常にわかりやすいもので、パソコンの操作にあまり詳しくない人でも『LEGO
MINDSTORMS』のプログラミングを楽しむことができるだろう。プログラミング環境はドラッグ&ドロップのGUIを採用しており、コマンドが記されたブロックを組み合わせてプログラミングを行なう。モーターのオン/オフや回転方向の制御、タッチセンサーと光センサーの制御のほか、繰り返し、条件設定などのコマンドがある。
●マニュアルには6つのロボットが
付属のマニュアル |
付属のマニュアルには6つのロボットの作り方が示されている。とりあえず、これをみながらロボットを作っていけば、モーターやギヤの組み合わせ方、部品の使い方、タイヤの種類などを学習できる。CD-ROMやマニュアルによると、『LEGO
MINDSTORMS』はロボットを3つのカテゴリーにわけている。RCXが直立したスタイルの“ROBO”、RCXが寝かせたスタイルの“PATHFINDER”、RCXが直立したり横になったりして移動する“ACROBOT”の3種類である。
RCXが直立したスタイルの“ROBO” |
RCXを横に寝かせたスタイルの“PATHFINDER” |
“ACROBOT” |
マニュアルに記されている6種類のロボットは、3つのスタイルがそれぞれ2体ずつ示されている。これらのロボットは、各スタイルのごく簡単なモデルを示したものにすぎない。RISのCD-ROMには、“チャレンジ”コースも設定されている。“ROBO”、“PATHFINDER”、“ACROBOT”の3つのカテゴリーの中から、作りたいロボットを選択すると、ロボットの動作状況を動画で紹介した後、必要な部品数やプログラミングのポイントを簡単に紹介する。その情報をヒントにして、自分でロボットを組み立てていくのである。このコースでは、あらかじめ作成されているプログラムをそのまま使用することもできるので、『LEGO
MINDSTORMS』に対する自分の理解度に応じて、楽しむことができる。
●実際に作ってみた
初めから大きな構想をたててチャレンジするよりも、チュートリアルやマニュアルに従って、簡単なロボットやプログラムを一つ一つ試していっても、『LEGO
MINDSTORMS』の醍醐味を十分に楽しむことができる。ロボットを作る過程はプラモデルを作るような楽しさがある。また、プログラミングをする過程は、かつて遊んだことのある電子ブロックのようなパズル的な面白さを味あうことができる。付属の“TEST PAD”上でテスト中の自作の光センサー搭載ROBO。床の明暗を感知して、動作方向を変える・・はずだが動かない・・ |
ただ、日本語版を発売する際に、少し改善した方が良いと思われる点もいくつか気づいた。パッケージ内のプラスチックの容器の形状を、部品をなくさないようにするために、もう少し収納しやすいものにして欲しいこと。また、プログラムの動作確認を行うための“TEST
PAD”が畳1枚分くらいあって、もう少し小さく、せめてこたつの上で広げられるサイズにして欲しいこと。この方が、狭い日本の家庭に適しているのではないだろうか。
『LEGO MINDSTORMS』のニュースを聞いたときに、是非遊んでみたいと思ったが、実際、玩具のレベルでここまで完成度の高いものとなっていることに非常に驚いたのが正直な感想だ。その一方で、ユーザーの想像力や創造力に委ねる部分も残しており、このあたりのバランスも絶妙といえるだろう。単に個人で組み立てて遊ぶだけでなく、いろいろなイベントを展開させる可能性も感じられる。
すでに、『LEGO MINDSTORMS』のホームページでは、個人ユーザーが作ったユニークなロボットを紹介するコーナーもあるが、ユニークなロボットやプログラムを作成するクリエィティビティーを競うイベントも考えられる。その一方で、マイクロマウス大会やロボットコンテストのような、何かの課題を達成するロボットのコンテストも考えられるだろう。可能性という意味では、本当に大きな可能性を秘めた新しいジャンルの玩具といえるだろう。