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【TPMフォーラム'98】「2005年、通信業界は劇的に変っている」----NTT、宮津社長の講演より

1998年12月21日 00時00分更新

文● 報道局 原武士

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 通信業界が、“今後考えなければならない、マルチメディア時代の新課題”として“電力問題”を取りあげ、製品紹介や講演をする“TPM(トータル・パワー・マネージメント)フォーラム'98”が東京・品川で15日と16日の2日間開催された。

 ここでは、初日のフォーラムの中で、“キーノートスピーチ”として行なわれた、日本電信電話(株)の宮津潤一郎(みやずじゅんいちろう)代表取締役社長と(株)NTTファシリティーズの田中順三(たなかじゅんぞう)代表取締役社長の講演を紹介する。

「2005年には、“メガコンテンツ”が家庭に普及する」

 宮津潤一郎氏は「21世紀の情報流通社会」というテーマで講演を行なった。

NTTの宮津潤一郎(みやずじゅんいちろう)代表取締役社長NTTの宮津潤一郎(みやずじゅんいちろう)代表取締役社長



始めは不安だったデジタル化

 宮津氏はまず“NTTの現状”として話を切り出した。

「近年は電話回線を利用した情報伝達には、音声だけでなく、デジタル化した画像・動画などのデータが増えてきた。それに伴って、NTTでは電話だけでない部分からの収入も増加傾向にある。携帯電話やISDNなどコンピューターによる“マルチメディア利用”というところからの収入が増えてきている」

「毎年5、6000万円も使ってデジタル化を進めてきた。ようやく去年になって、デジタル用設備への投資がひと段落付いたが、デジタル化へ向けて動き出した当初は、果たして事業としてなりたつかどうか不安だった」

マルチメディアの3つのキーワード

「マルチメディアをテーマに取り組みだした当初は、漠然としていて何が何だか分からなかった。だが、最近になって、マルチメディアに何が含まれているか分かってきた」

 宮津氏はそう言って、マルチメディアにある、情報流通の3つの波として“移動電話(シームレス・パーソナル通信サービス)”、“インターネット(デジタル化した、映像、音声の流通)”、“イントラネット・エクストラネット(企業間のネットワーク)”という3つのキーワードを掲げた。これらが、現在のNTTを支える大きなカテゴリだという。

NTTの見る情報産業のロードマップ

 続けて、“デジタル産業の今後”として、デジタル産業全体のロードマップを紹介した。

・2001年、“デジタル化とネットワークTV”が広がり始める(端末の大衆化)。

・2002年、“メディア・バザール”(マスメディアコンテンツ流通)、ウェブを利用したコマーシャルや、TVがあふれだす。

・2005年、“メガコンテンツ”毎秒10Mbit(双方向)の光ネットワークの利用が家庭にも普及する。

「このように技術が発展するために、情報流通・ネットワークに必要な用件は“便利”“安全”“速い”ということ」とコメントし、NTTが技術発展を目指してデジタル回線化を推し進めてきたことをアピールした。

デジタルは3倍コストがかかる

「デジタル回線は常時電気を流しているのでアナログ回線に比べて3倍電力を使う。今後、情報産業の発達と共にデジタル回線が普及して行くことは目に見えている。しかし、エネルギー資源は無限にあるわけではない。きたるべき情報流通時代にはエネルギー対策が必要不可欠になってくる。今のままでいけば、電力供給が間にあわなくなる。今後は低エネルギー化を考えていかなければならない。電力全体から“情報流通社会に向けた新たな視点”として、我々は“リスク”“コスト”“環境”の3つをあわせた“トータルパワーマネージメント”を考えていかなければならない」

「NTTグループとしては、広い意味での資源が育ってほしいと思っている。今後、我々は、情報流通企業グループという流れに乗っていくだろう。そして、電力問題は、新しい情報流通の中での課題となるだろう」と締めくくった。

“リスク”と“コスト”と“環境”を同時に考えなければならない

 宮津氏に続いて、(株)NTTファシリティーズの田中順三(たなかじゅんぞう)代表取締役社長が“情報流通社会を支えるTPM”として、なぜNTTグループがTPMに対しての提案を行なうかに付いて説明を行なった。

田中順三(たなかじゅんぞう)氏田中順三(たなかじゅんぞう)氏



「もっとも重要で緊急性のあるのがエネルギー問題。エネルギーを中心とした課題には“リスク”“コスト増”“環境問題”の3つがある。今こそ、これらのマネージメントが必要になる。現在、企業におけるインフラ設備に関わる数々の問題は、問題が一時的に去っただけで状況すら忘れられてはいないだろうか。しかし、それでは設備の発展はありえない」

 田中氏は3つの課題をひとつひとつ取り上げ過去の例を取り上げ説明を行なった。

リスク

「阪神大震災の際、非常用電源や、非常用通信がまるで使用できなかった。病院の9割以上が、水や電気が使えず、診療に支障を来した。管理体制がずさんだったからだ、いまだに、非常用電源が、いざという時に動作しないというトラブルが多い」

コスト増

「多くの人がインフラ増加に対して無関心すぎる。会社のインフラ問題に親身になって取り組んでいる社員はまずいない。電力も同様に使いまくりというのが実状。このままでは、2010年には電力消費が現在の5倍以上になると予想されている」

環境問題

「いまや、環境対策への取り組みは市場からの評価に直結する時代。環境に対する企業責任が重視されている。すでに、欧米では、企業の環境問題対策の有無で株価も左右されている。環境対策に対して企業意識をより積極的にする必要がある」

トータルな最適化に導くことが何よりも重要

田中氏は「“リスク”“コスト”“環境問題”の一部分だけに対して対策をとっても意味がない。この3個は同時に取り組まなくては意味がない。トータルな最適化に導くことが何よりも重要」と述べた。

 そして、“トータルパワーマネージメント”における同社の取り組みを紹介した。リスクマネジメントとしては、雷・ノイズ対策、蓄電池の劣化管理など。コストマネジメントとしては、高信頼電源、空調管理、工事・管理、保守・運用など。環境マネジメントとしては、太陽光発電、風力発電など。「マルチメディアとエネルギー環境の融合、ユーザーサイドに立った技術ノウハウを紹介していきたい」と締めくくった。

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