このページの本文へ

【INTERVIEW】ファイル検索を要にアプリをつなぐOffice9に勝算----ジャストシステム浮川和宣社長に聞く

1998年12月15日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦、白神貴司

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 リストラの断行など我慢の年ながら、新しい取り組みには一定の成果が上がった----ジャストシステム(株)の浮川和宜社長は、'98年をこう振り返った。看板ソフトである『一太郎』と『花子』をバージョンアップ。自然文検索システム『ConceptBase Search』や音声認識システムを応用した『Voice一太郎9』も発表した。これら、新たな取り組みも見られたジャストシステムの'98年の総括と、'99年への展望を聞いた。

ジャストシステムの浮川和宣社長 ジャストシステムの浮川和宣社長



我慢しつつ、新たな取り組みも

----ジャストシステムの'98年は、どんな1年だったのでしょうか

「徹底したリストラを行ない、経費を節減し、コスト削減に努めた1年でした。その一方で、新製品の開発にも力を入れました。『一太郎』、『花子』のバージョンアップを行ない、『Justsystem Office9』、『インターネットブーメラン』、『Voice一太郎9』などを発売しました」

----'98年は、出版部門の大幅な縮小など、大胆なリストラを断行しましたが、そのことについて、経営責任は感じていますか

「金融、経済の影響で、パソコン業界のみならず産業界全体が不況を読み切れない部分があったと思います。ジャストシステムでも、出版部門を大幅に縮少しました。当然責任は感じています。今後、出版部門は自社製品のガイドブックや子供向けの教材などに絞って展開していくつもりです。また、決算に関しては、今年リストラを敢行した効果もあり、来期は黒字を見込んでいます」

----6月にソニー(株)から出資を受けましたが、事業面での提携はどこまで進んでいるのでしょうか

「すぐに発表できるようなものはありません。現在、どのような方向で提携ができるのか、両社から派遣したメンバーで構成する研究するチームで検討しています。おそらく情報家電の分野での提携が第一歩となるでしょう。ただ、提携を正式に発表したのがこの6月です。発表できるような内容にまとまるのはもう少し先になると考えています」

----オフィスユーザー向けに『Justsystem Office9』を発売しましたが、マイクロソフト(株)のOfficeシリーズに対する勝算はあるとお考えですか

「確かに、OSを支配し、シェアを圧倒的に取っているマイクロソフトは強敵です。しかし、これまでオフィスでは、文書や図表を作成することばかりにとらわれ、作成したものをいかに活用するかについては省みられることがなかったと思います。『ConceptBase Search』と連携させて、データベースからのファイル検索が適切にできる『Office9』なら、作成したファイルを効率よく検索できます。単に情報を作成するのではなく、それをいかに活用するか、という点をユーザーに提案できる製品と考えています」

『ConceptBase Search』と音声認識システムの融合がパソコンを変える



----新製品の中で浮川さんが現在もっとも注力しているのはどの製品になるのでしょうか

「新しい製品の中でも、自然文検索システム『ConceptBase Search』と、音声認識システムを導入した『Voice一太郎』に、現在もっとも力を入れています」

「『ConceptBase Serch』は、発表以来、相当数の引き合いを受けました。ロータス(株)と提携し、『ConceptBase Search for Lotus Notes』を開発したのが一例です。その他にも、(株)ビーコンインフォメーションテクノロジーとの、企業向け情報システム構築分野での提携など、さまざまな形で導入されています」

「また、11月に発売した『Voice一太郎9』には、かなりの反響が寄せられました。音声認識には、まだまだ応用方法があると考えています。例えば、音声認識システムを『ConceptBase Serch』と連携させて、パソコンメーカーのユーザーサポートに利用することも考えています」

----音声認識をユーザーサポートに利用するのですか

「ええ。ユーザーからメーカーのサポートセンターに入る電話は、ハード、ソフト、周辺機器と、実に多岐にわたります。このユーザーサポートを、音声認識システムで対応するのです。ユーザーが自分のマシンの状況を電話で話すと、センターの音声認識システムでそれを認識、識別する。その内容をConceptBase Searchで検索し、最適な対応方法を検索、それをユーザーに伝える。こうすれば、電話口でユーザーを待たせる時間がかなり削減できるでしょう」

「音声認識の技術は、やがてはパソコンのインターフェースを変えるほどの可能性を持っていると考えています。何年かしたら、キーボードも、ディスプレーもなく、音声認識による入力で動作するパソコンが登場するかもしれません」

Java上で動作する一太郎で、プラットフォームの問題をクリア

----'99年の目玉となる新製品はありますか

「15日に、Java上で動作する一太郎を発表します。マルチプラットフォームであるJava上で動作する、一太郎です。詳しいことは発表を待っていただきたいのですが、機能的には、一太郎Liteと遜色ないものになると思います。この製品の最大の特徴はそのプログラム容量です。現在、約1MBを予定しています。びっくりするぐらい小さいでしょう。製品の発売時期は未定ですが、インターネットを利用したダウンロード販売も視野に入れています」

----最後に、'99年の展望をお聞かせください

「やはり、現在もっとも力を入れている『ConceptBase Search』と、『Voice一太郎9』をさらに伸ばしていきたいですね。先ほども言いましたが、この2つの技術の融合は、パソコンの未来を変えるだけの力を持っていると考えていますから。また、Java上で動作する一太郎で、長年パソコンが抱えてきた、プラットフォームの差異という問題をクリアする1つのステップを提供できると考えています」

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン