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【INTERVIEW】世界の市場で戦えるソフトウェアベンダーへ----エー・アイ・ソフト上田社長に聞く

1998年12月11日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司

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 エー・アイ・ソフト(株)は12月、世界市場への進出を開始する。その第一弾は、圧縮・解凍ユーティリティー『DiskX Zip PRO』。日本国内のほか、北米地区でダウンロード販売を開始する。今回は、同社の上田芳郎社長に、海外での製品戦略も含めて、エー・アイ・ソフトの今後について聞いた。

エー・アイ・ソフト上田芳郎社長
エー・アイ・ソフト上田芳郎社長



海外への進出はユーティリティーツールから

----エー・アイ・ソフトの'98年はどんな1年だったのでしょうか

「収益に関しては、'97年の減収減益から、今年は増収増益に転じる見込みです。ビジネス、システム向けのユーティリティーツールを中心に製品開発を行ないました。なかでも力を入れた『DISK X』シリーズが好調です。シェアに関しては、ユーティリティーの分野で月ごとに1位と2位を行ったり来たりしている状態です」

----ユーティリティーツールは、フリーウェアやシェアウェアが市場に出回っていますが、それらとの差別化はどのように図っていくのですか

「いわゆるフリー、シェアウェアとの一番の差は、サポート体制をしっかり構築している点です。ユーザーに対してきちんとしたサポートを提供することで、安心感も提供していく。こうしたサポートがユーザーの他社製品への乗換えを防ぎ、固定ユーザーをつかむことへつながると考えています」

----圧縮・解凍ユーティリティー『DiskX Zip PRO』が海外進出の第1弾となるわけですが、どうしてこのジャンルからはじめられたのですか

「『WX-WORD』などのワープロソフトや、『まっぷっぷ』などのグラフィックツールの場合、やはり言語の壁というものが厳然として存在します。その点、ユーティリティーツールなら、この壁をクリアしやすいと考えました。また、プログラムのサイズが比較的小さいという点も理由の一つです。海外進出を計画した当初から、オンラインでの販売を想定していましたから」

「オンライン販売には、流通や在庫管理にかかるコストを低減できるという大きなメリットがあります。しかも、米国ではオンライン販売が日本よりも浸透している。ビジネスチャンスは十分にあると判断しました」

注:同社は11月5日に記者会見を開催し、海外進出計画について発表している。ASCII24でもこのニュースを扱っているので参照されたい

【関連記事】エー・アイ・ソフト、『DiskX Zip PRO』を北米市場でオンライン販売すると発表
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/
981105/soft03.html



米国と日本国内の売り上げを2000年にはイーブンに

----米国での販路はどのように構築するのでしょうか

「エー・アイ・ソフトの親会社であるセイコーエプソン(株)の米現地法人、エプソンアメリカが、“エプソンソフトウェア”というソフトウェア群のブランドを展開しているのですが、その中の1製品として販売します。形としては、エプソンアメリカへのライセンス提供ということになります。また、エプソンアメリカの意向で、現地ではパッケージ版も販売します」

----米国での売り上げ目標はどの程度に設定されていますか

「'99年は400万ドル、2001年には2000万ドルを想定しています。2000年には、米国と日本国内の売り上げ高をイーブンに持っていくのが目標です」

----今後は、ユーティリティーツール以外にも海外へ進出していく予定ですか

「もちろんです。積極的に海外進出を行ないます。当初はユーティリティーがメインですが、その他のジャンルの製品も、英語にローカライズして提供していこうと考えています。米国での製品開発とマーケティングの拠点として、シリコンバレーのパロアルトに研究所を設置しています。ローカライズはエー・アイ・ソフトが行ない、販売はエプソンアメリカ、という路線を当面は踏襲します」

----日本語版にない製品を米国向けに開発するということはあるのでしょうか

「可能性としてはあります。マーケットのニーズ次第ですが、英語版が最初で、日本語版がその後、という製品が登場することもあるかもしれません。いずれにせよ、あくまでマーケット次第です」

----日本でのオンライン販売については、どのように考えておますか

「日本では、まだまだ浸透しているとは言えません。また、実際に手にとって商品を見てから買いたい、という消費者意識が根強いのも日本市場の特徴です。ただ、インターネットの急速な普及と共に、ダウンロード販売は徐々に伸びていくだろうと予想しています」

----全ての製品をダウンロード販売で提供していく予定ですか

「そのつもりはありません。プログラムのサイズの点から、従来どおりパッケージによる販売のほうが適しているものもあります。また、製品によっては操作マニュアルを添付しなくてはならないものもあります。そういう製品に関してはパッケージでの販売を行ないます。オンライン販売へシフトしていくというわけではなく、あくまで製品に最も適した販売形態を取るということです」

世界市場での競争力を持ったソフトウェアベンダーに

----最後に'99年の展望をお聞かせください

「エー・アイ・ソフトは、'99年から“3ヵ年計画”を掲げています。'98年3月時点で約22億円だった売り上げを、2001年には50億円にしたい。そのためには、これからの3年間は毎年20パーセント以上の売上増が必要になる。この目標は達成できると考えています。さきほどお話した、2000年には米国と日本国内の売り上げをイーブンに持っていくというビジョンも、この3ヵ年計画の達成が前提です」

「製品については、新製品を10タイトル程度、バージョンアップに関しては15~6タイトルを予定しています。製品開発のコンセプトとしては、“ニーズの一歩先を行く”がモットーです。あまり先走りすぎず、ニーズにマッチした製品を提供していこうと思います」

 上田氏は最後に、エー・アイ・ソフトを日本国内だけでなく、世界市場での競争力も備えたソフトウェアベンダーに育てることが最大の目標、と語った。

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