'98年4月1日、ファイルメーカー(株)が誕生した。同社はクラリス(株)から社名を変更。『クラリス』シリーズをアップルコンピュータ(株)に移管し、『ファイルメーカー
Pro』シリーズに絞って展開していくと語った。社名変更から早6ヵ月、ファイルメーカー(株)の動向を代表取締役社長、宮本高誠氏にお話を聞く。
ファイルメーカー(株)代表取締役社長宮本高誠氏 |
社名“ファイルメーカー”の効果
----ファイルメーカーと社名が変わった'98年を振り返って、いかがでしたか。「社名変更と同時に、『ファイルメーカー Pro』シリーズ1本に絞って特定の分野に注力し、経営資源の集中ができたという点で成功の年だと思っています」
----名前が変わったことについて、顧客からのリアクションはどうでしたか。
「なかなか慣れないということはありますが、半年経ってみて社名が結構浸透していると思っています」
----製品名が社名というのは御社の場合、製品の知名度がもともと高いという意味で正解だったと思われますが。
「そうですね。製品が露出すればするほど、社名の知名度が上がるという相乗効果が見込めます。そのため十分にブランディング効果があると思っています」
----しかし一方で、社名を変更したことはマイナスだったと思うことはありませんか。
「それは特に思いません。総合ソフトメーカーから『ファイルメーカー Pro』1本に絞ったのだし、むしろクラリスのイメージを引きずるよりもいいと思っています」
----クラリスという名にはネームバリューがあると思いますが。
「確かにクラリスに対する郷愁がある人々は多いです。しかし、Macintoshユーザーのなかで『ファイルメーカー Pro』というソフト名を知らない人はほとんどいません。ですから、ファイルメーカーという名でいいと思います。むしろ、Windowsを使っている人にとっては、クラリスという社名が持つイメージよりもプラスの面もあると思っています」
“FileMaker Forum'98”
10月6日から11月27日まで、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の全国7都市で10回に渡って実施された“FileMaker Forum'98”。『ファイルメーカー Pro4.1』がビジネスユースをもターゲットにしたものとあって、会場は多くのビジネスユーザーでにぎわったという。FileMaker Forumは、ファイルメーカー(株)の新しいイベントである。----FileMaker Forumで全国を回られて、印象的だった開催地はどこですか。
「東京・大阪以外では、なかなかこういうイベントを開催しないので、そういった場所での反響は大きかったです。福岡では、鹿児島や沖縄からいらっしゃったお客様もいて嬉しかったですね」
----どれくらいの参加者がいたのでしょうか。
「ここまで(※)で、合計で2500名くらいです。2年前のビジネスセミナーに比べると、約3倍近くに増えています」
(※)インタビュー時点で東京・大阪の残り3回を残していた。
----FileMaker Forumのテーマとして、どのようなことを掲げていらっしゃったのですか。
「企業の“TCO低減”(※)です。『ファイルメーカー Pro4.1』では、クロスプラットフォームコストでのパフォーマンス(*)が高いと考えています」
(※)TCO=Total Cost of Ownership:管理コストをも含めた、コンピューターの維持にかかる経費の総計。なお、ASCII24では、通常は、減ることを「低減」、減らすことを「削減」と表現している。
(*)同社では、単にクロスプラットフォーム環境で動くということでなく、データのポータビリティー(可搬性)をサポートする工夫を施してあるので、コストパフォーマンスが高いと説明している。
----イベントの中で、どのようなものがユーザーの関心を引き付けましたか。
「やはり、『ファイルメーカー Pro』のデモです。普段は大規模のRDBMSを併用しているユーザーが多かったので、こんなにデータベースの操作が簡単なのかという反応がありました」
----『ファイルメーカー Pro4.1』は企業のビジネスユーザー向けとのことですが、実際会場での反響はどうでしたか。
「会場にはビジネスユーザーが多く、問い合わせを受けました。来場者の約3割が新規ユーザーであったこともあり、実際に、導入を検討してみようという企業ユーザーが多くいたと感じています」
アプリケーションが大事、OSは関係ない----Windows:Macintoshは55:45
----ところで御社の製品はWindows対応のものが多く出てきていますが、Windowsにシフトしていると見ていいのでしょうか。「そうではありません。ユーザーが求めるものを提供をしているだけです。もうOSがどうのという時代ではないでしょう。今はアプリケーションソフト、ソリューションが大事な時代であって、MacとかWindowsとか言っていた昔とは違います。比率から言っても、Windowsのユーザーが多いのですから、こういう流れになるのは当然かもしれません」
----御社はWindows版、Macintosh版、ハイブリッド版と3種類の製品を出していますが、シェア比較はどうですか。
「WindowsとMacintoshの比率は45:55くらいです。ハイブリッド版を購入したユーザーがどう使い分けているかを調査したところ、見事に半々でした。50:50なのには、驚きました」
「ただ、新規ユーザーに関しては55:45の比率でWindowsの方が多いです。Windows使用者の数から考えると、本当は65:35くらいになってもおかしくないとは思います」
----Macintoshでのスタンドアローンユースというイメージが強い一方で、サーバーバージョンを出されたりと企業への対応を図っていらっしゃいますが、規模によって住み分けを考えているのですか。
「オラクルに代表される大規模データベースソフトのミッションクリティカルな部分、つまり基幹システムとは、相互補完的なシステムでありたいと考えています。たとえばオラクルなどで構築された基幹システムを活用するために、各部署でファイルメーカーを導入して欲しいと考えています」
----企業で導入するとして、『ファイルメーカー Pro』の強みはどこでしょうか。
「『ファイルメーカー Pro』では、オラクルなどからデータを各個人がインポートすることができます。基幹システムに携わるSEの手を借りずに、データを活用できるところが便利であると考えています」
----基幹システムのできてしまっているところにも『ファイルメーカー Pro』を導入することで、TCOを削減、貴社の言葉でいうと“低減”できるとお考えですか。
「はい。SEの人件費も“低減”できます。日本では企業の中でデータを直接に見ることができる人は少ないです。データを本来活用すべき、営業など最前線の人たちが各々活用できれば、中間のコストが“低減”できると思っています」
----TCOの削減、貴社の言葉でいうと“低減”を強調していらっしゃいますが、対象企業の規模的はどういったたところですか。
「主に、小~中規模です」
----『ファイルメーカー Pro4.1』はビジネスユーザーを対象にしていらっしゃいますが、それはターゲットが個人ユーザーから移行したということなのでしょうか。
「そうではなく、エンドユーザーが何を求めているのかを追求したら、個人ユーザーだけでなくビジネスユーザーへも幅を広げる形になっただけです」
----企業での導入状況はどうですか。
「企業内のシステムを見ても、全社的にWindowsのみとか、Macintoshのみというところは少ないです。基本的にはWindowsだけど、部分的にはMacintoshを導入しているというケースが多く見られます。そこで、互換性のある『ファイルメーカー Pro』を導入するところも増えてきていると思います」
----では来年の展望をお聞かせ下さい。
「今年は社名が変わりました。これをステップに、来年は1歩ビジネスを飛躍させる年にしたいです」