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【INTERVIEW】「Alphaプロセッサーを64bitの標準にしていく」--コンパックのAlpha戦略

1998年12月07日 00時00分更新

文● 報道局 植草健次郎

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 10月1日の日本 ディジタル イクイップメント(株)(DEC)との合併によりエンタープライズ向けの製品ではローエンドからハイエンドまで幅広く製品をそろえたコンパックだが、製品数が増えたことでターゲットとするユーザー重なるOSや製品も出てきており、製品の統廃合なども予想される。今後の企業向けサーバーの戦略を畠中有道(はたなかありみち)同社製品統括本部エンタープライズ製品本部長、市原隆保(いちはらたかやす)製品統括本部エンタープライズ製品ハイパフォーマンスサーバ&ワークステーション製品部長の両氏に伺った。

左:市原隆保(いちはらたかやす)製品統括本部エンタープライズ製品ハイパフォーマンスサーバ&ワークステーション製品部長、右:畠中有道(はたなかありみち)製品統括本部エンタープライズ製品本部長
左:市原隆保(いちはらたかやす)製品統括本部エンタープライズ製品ハイパフォーマンスサーバ&ワークステーション製品部長、右:畠中有道(はたなかありみち)製品統括本部エンタープライズ製品本部長



・これまでの流れ

----DECとの合併後Alphaプロセッサーを前面に出した戦略を発表していますね。

市原「1月に米コンパックがDECを買収したことでそれまで業績の不安定だったDECは持ち直すことができ、コンパックは製品ラインを大きく増やしました。しかし、従来は開発型の企業でなかったコンパックがDECのAlphaアーキテクチャーなどのテクノロジーを継続していかないのではという懸念がユーザーにあったようです。DECはシステムインテグレーター的な企業で、コンパックは独自の技術を持つことに慣れていない企業でした」

「4月にインテルとの訴訟が和解し、Alphaを自由に作れるようになったのが大きな転機になります。今までは自社以外ではAlphaプロセッサーを製造できませんでしたが、和解によりAlphaをどのメーカーでも作れるようになったのです。Alphaプロセッサーの製造はそれまでDECが米国内に持っていた工場で行なっていましたが、製造の専門家に製造をまかせたことでスピードアップしたこと、また複数の企業が製造しているので競争原理が働き、安く調達できるようになったのです。当初DECが持っていた工場は歩留まりが悪くAlphaプロセッサーの製造は高コストでしたが、現在ではそのころの約5分の1のコストでAlphaを調達できるようになりました。現在はAMD社や韓国サムソン電子社などがAlphaプロセッサーを製造しています」

「米コンパックのエッカード・ファイファーは5月にAlphaを64bitの標準にすると表明しています。Alphaが新しいコンパックの方向性を示したとも言えます」

・今後のアーキテクチャー採用の動向 

『COMPAQ AlphaServer GS140』『COMPAQ AlphaServer GS140』



----10月の『COMPAQ AlphaServer GS140』の発表の際に『Himalayaシリーズ』やPCサーバーにもAlphaプロセッサーを搭載するとおっしゃっていましたが、具体的にはどの機種にどのプロセッサーを搭載するのですか?

畠中「『Himalayaシリーズ』ではMIPSをやめてAlphaへ転換します。これには理由が2つありまして、MIPSプロセッサーがロードマップを明示しておらず、その将来がグレーであることと、自社製品に良い物があるのでそれを使うということです。HimalayaにMercedを搭載することは考えていません。このクラスの製品になるとCPUが何であるかはあまり問題にならないので、自然に自社製品へ足が向いたということです。2000年末から2001年頭にかけてEV7コアのAlphaプロセッサーに転換していきます」

「AlphaサーバーではもちろんAlphaプロセッサーを搭載します。PCサーバーではローエンドではインテル系プロセッサーを、ハイエンドではAlphaプロセッサーを搭載していきます。今のインテル系の32bitのプロセッサーを搭載した製品は今後、Mercedと32bitのプロセッサーを搭載した製品のの2つの製品ラインになるでしょう。これらのインテル製プロセッサーを搭載した機種はローエンドの製品として。ハイエンドの製品にはAlphaを搭載していきます。Windows NTのプラットフォームとしては、インテル系プロセッサーのほうが動くアプリケーションも多いのでMerced搭載の製品も作ります」

----Windows NTのプラットフォームとしてはインテル系プロセッサーの方が有利とのことですが、Windows NTをもっとAlphaに適したものに改良することでAlphaをローエンドからハイエンドまで使用するという方法もあるのでは?

畠中「マイクロソフトと協力してWindows NTをもっとAlphaに適したものにに改良するという選択肢もありますが、それはとり得るべき選択の1つではあります」

・OSはDIGITAL UNIX? それとも Windows NT?

----例えば米SCO社のUnixWareとDIGITAL UNIXにようにターゲットとするユーザーが重なっている製品もあります。また、今後はDIGITAL UNIXをやめてWindows NTのみにしていくことも考えられますが、サポートするOSを減らしていくことはあり得ますか?

畠中「OSの統廃合は考えていません。どのOSもまだまだ求める顧客がいるのでやめてしまうことはないでしょう。逆にDIGITAL UNIXをMercedに移植します。もっとも安定していて、アプリも多いDIGITAL UNIXをMercedで動くように移植することで、DIGITAL UNIXの販売を拡大していきます。MercedとAlphaはデータをメモリ中へ格納する方式が同じなので(共にLittle Endian)親和性が高いのです。DIGITAL UNIXもリコンパイルするだけですぐ動くものができます」

----個々の製品ではどのOSを使用しますか?

畠中「個々のハードを見るならば、『Himalaya』ではNonStopカーネル、AlphaサーバーではDIGITAL UNIXとWindows NTの両方で行きます。販売数ではWindows NTのほうが多いでしょうが、単価が違うのでDIGITAL UNIXもWindows NTも金額的にはあまり変わらないでしょう。PCサーバーではWindows NTの比率が高いでしょうが、従来どおりNetWareやUnixWareのサポートも行なっていきます。ハードウェアは同じものなので、ソリューションをなくしてしまうつもりはありません」

市原「OpenVMSもまだまだ使っている顧客が非常に多くいます。ビジネスのミッションクリティカルな環境では特にOpenVMSが使われています。OpenVMSは顧客が育て上げているもので、汎用機のOSに近いものです。顧客も多く、利益の大きいものでもあるので、サポートを続けていきます。OpenVMSは今後も機能強化を行なっていき、'99年2月に新しいバージョンのリリースを予定しています」

----Alphaサーバーがターゲットとする市場はどの市場ですか?

市原「大きく分けると以下の4つになります。

1、科学技術計算の分野
2、ERPなどの企業の基幹系業務システム
3、データウェアハウス
4、インターネットの大規模なシステム。

 3のデータウェアハウスでは企業の情報系として利用されています。また預金の予測など、経営のためのシュミレーションにも使用されています。4の大規模なインターネットシステムではISP(インターネットサービスプロバイダー)やYahoo!、Lycos、AltaVistaなど検索エンジンに採用されています」

----Alphaサーバーの今後の製品計画は?

市原「'99年第1四半期にローエンドのDSシリーズとミッドレンジのESシリーズの製品を出します。ローエンドの製品は年明け早々にも発表できると思います。'99年第3四半期には、今年10月に発表したGSシリーズよりもさらにハイエンドな製品をリリースします。名称はGSシリーズになると思いますが、CPUを現在の最大14基から、最大192基まで搭載できるものにする予定です」

“EV6”コアのAlpha21264“EV6”コアのAlpha21264



----Alphaプロセッサーの開発状況は?

市原「順調です。むしろ現在発表しているロードマップより早まりそうなくらいです。現在『COMPAQ AlphaServer GS140/ GS60』に搭載しているAlpha21264プロセッサーの“EV6”チップと同じコアで、0.18μmプロセスで製造する“EV68”の製造を韓国のサムソン電子社に委託しています。サムソンが思ったよりも早く製造にとりかかれそうで当初“EV68”の発表は'99年12月を予定してましたが、'99年秋ぐらいには出てきそうです」

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