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大学研究者のアーカイブ団体、“ディジタル・アレキサンドリア”の可能性

1998年12月04日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

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“デジタル・アレキサンドリア”とは

 “ディジタル・アレキサンドリア第1回国際シンポジウム”が3日、都内で開催された。“デジタル・アレキサンドリア(略称:D-Alex)”とは、最終的に文化財の画像情報の収集・管理と配信を実行することを目指して、今年4月に設立された非営利団体。今回の国際シンポジウムの実行委員は、東京大学副学長青柳正規氏、同じく工学部教授青山友紀氏、慶應義塾大学教授小野定康氏ら識者8人。本稿では、午前中の第1部、第2部の内容から、一部を紹介する。

 今年'98年は、地方公共団体や企業が中心となり、美術品や伝統技術をコンテンツとするデジタルアーカイブ団体が多数設立された年である。D-Alexの他団体との差は、主催者が大学研究者や弁護士といった識者で構成されている点。東京大学副学長青柳正規氏、同じく工学部教授青山友紀氏、慶應義塾大学教授小野定康氏らが名を連ねる。デジタル化したデータは、主に学術研究や教育への利用を考えているという。

 現時点で軌道に乗っている活動としては、慶應大学教授の高宮利行氏を中心にしたHUMIプロジェクトと高精細画像による古文書研究が挙げられる。国際協力の面では、フランスの美術館2つ、アメリカ、ドイツ、オランダの美術研究団体とのコラボレーションを相談している段階である。今回、初のシンポジウムを開催した背景には、シンポジウムを通して同団体の今後の方向性を探りたいという意図がある。

古代遺跡発掘現場におけるデジタル技術の活用

 午前中に大学教授や美術館運営者ら6人のセッションが設けられた。東京大学文学部の青柳正規氏の講演を紹介する。

青柳正規氏青柳正規氏



 同氏は、'92年からイタリアのティレニア海を北に100キロ北上した町、カッツアネルロで遺跡発掘作業を行なっている。現在、発掘現場でデジタルカメラを積んだミニチュアの飛行機を飛ばし、作業過程を撮影している。同氏は「その場で画像を見ることができます。そのおかげで、研究所まで帰り、フィルムを現像して分析するという作業がなくなりました」という。

 そのデータを蓄積していくと、さらにメリットが出てくる。ある程度予測を立て、現場見取り図を製作した後で発掘作業を進めることが可能になった。過去、採掘作業はあてずっぽうに進められ、余計な穴を掘って遺物を傷つけることもあった。発掘された遺跡の写真のデジタルデータ化自体に加えて、作業の組み立てのデジタル処理化は後続の研究者にとって大きな手引きとなる。

 前述のように、D-Alexの主催者の多くは研究者である。青柳氏の発掘作業のような、特殊なデジタルデータがアーカイブ化され、公開される日も近いかもしれない。

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