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【INTERVIEW in N.Y.】『LEGO MINDSTORMS』を'99年春、全世界に向けてオンライン販売開始--米レゴ社のディレクター、リンダ・ダルトン氏に聞く

1998年11月16日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 9月1日にアメリカとイギリスで発売されたものの、初期ロットが即日完売したという『LEGO MINDSTORMS』。レゴブロックで組み立てたロボットを、パソコンで作成したプログラムで動作させるというコンセプトの妙が、まだ正式に発売されていない日本でも多数のマニアを生み出している。

 そんな『LEGO MINDSTORMS』の日本での発売時期や今後の商品展開について、米レゴ社のグローバルブランドディレクターであるLinda Dalton(リンダ・ダルトン)氏に、米ニューヨーク市内のホテルで伺った。なお、世界のレゴ・グループの本拠地は、デンマークである。

米レゴ社のグローバルブランドディレクター、リンダ・ダルトン氏
米レゴ社のグローバルブランドディレクター、リンダ・ダルトン氏



 『LEGO MINDSTORMS』とは、米レゴ社と米マサチューセッツ工科大学とが共同で開発した教育用玩具を製品化したもの。『LEGO MINDSTORMS』の基本キットである『LEGO MINDSTORMS ROBOTICS INVENTION SYSTEM(RIS)』が、9月1日にアメリカとイギリスとで発売された。この製品には、拡張キットとして『ROBOSPORTS』(米英で発売中)、『EXTRA CREATURES』、『EXPLORATION MARS』の3つが用意されている。

日本語版発売は'99年秋を予定

----『LEGO MINDSTORMS』は、まだ正式に発売されていない日本でも、すでにマニアが多数いて、『月刊アスキー』などのパソコン専門誌などでも特集が組まれています。日本語版の発売はいつになりますか。

「わたしが聞いたところでは、日本からわざわざこれを買うためだけにアメリカにきた人もいるそうです。日本でも話題になっていることは知っています。英語版のソフトでも、Windows 95の日本語版上で動作するようですね。しかし、正式な日本語版の発売を、'99年の秋に予定しています。『LEGO MINDSTORMS』のソフトを、日本語版に作り替えるのに、結構時間がかかります。また、9月1日にアメリカとイギリスとで発売しましたが、2ヵ国だけでも需要が多く、生産が間に合わないという事情もあります」

----イギリスとアメリカでの反響はいかがでしたか。

「すぐに完売しました。多くの人が、レゴが実際に動くことを期待していたと思いますが、その夢がかなったわけで、それが今回の反響の大きさにつながったのではないかと思います。大人の人たちが、子供の時から遊んでいたレゴが動くことに喜んだようです。また、特にたくさんのエンジニアや科学者、プログラマーが、自分で組み立ててみたり、分解してどうなっているかを研究したりするために、いくつも買ったというケースもあったようです。他の購買層としては、12~14歳ぐらいの、小さい頃レゴで遊んでいた年代の子供たちが、『これは自分たちにあったおもちゃだ』といって、興味を持つようになっています」

よりシンプルな製品の発売も検討

----レゴの製品としては、少し値段が高いような気がしますが。

「値段が200ドルと、今までのレゴの製品に比べ高めの価格設定なので、これに対して多少の懸念はありました。しかし、実際に販売してみたところ、この点は、まったく問題にはなりませんでした。親が考えるところにしても、子供が実際に遊びながら、コンピューターを学ぶ、特に自分でプログラムを作成できるという点がユニークで、他にはない製品であることを理解してくれたようです」

「ただ、『LEGO MINDSTORMS』は第1世代の製品であって、もう少しシンプルな製品を、もう少し低年齢層に向けて出すことも考えています。この際には、今の『LEGO MINDSTORMS』よりも、少し低価格なものになると思います」

----その製品の発売は、いつになりそうですか。

「アメリカでは、来年の9月には発売できると思います」

----価格は100ドルくらい・・。

「それは申し上げられません。なぜなら、いま発売している『LEGO MINDSTORMS』の需要が非常に高く、我々は、その可能性を追求しているところなのです。ですから、次の製品に関しては、価格設定をする段階にはきていません」

----『LEGO MINDSTORMS』と同じかそれ以上の高価格で、『LEGO MINDSTORMS』以外のラインナップを強化する方針はありますか。

Dalton「イエスとだけは、お答えできますが、それ以外は、製品を開発中なのでお答えできません」

----ゲームと同じように、パソコンではなく専用機を使用してプログラミングさせた方が簡単だと思うのですが、『LEGO MINDSTORMS』を発売する際には、そういった検討はしましたか。

「プログラム専用機といったハードを新たに作るとすると、『LEGO MINDSTORMS』のそもそものコンセプトが変わってしまうと思います。すでに、アメリカで普及しているパソコンをベースにし、そこでプログラムを作成した方が、当初のコンセプトにあっていると思います。ただ、さきほどお話しした、来年9月に発売を予定している、よりシンプルな製品については、専用機を使用することも考えています」

----専用機というのは、すでに存在する『PlayStation』や『Nintendo 64』などを利用するものになるということですか。

「ええ。改めてハードのシステムを作ることは考えていません」

----具体的な機種はもう決まっていますか。

「はっきりしたことは、まだ、決まっていません。専用機を使用することも選択肢の1つだということです」

'99年春には、全世界に向けてオンライン販売開始


----9月1日に発売したRIS(『LEGO MINDSTORMS ROBOTICS INVENTION SYSTEM』)には、“RCX”という8bitマイコンを内蔵したコントロールユニット、2つのモーター、3つのセンサーのほか、700個以上のブロックがパッケージされていますが、パーツの数をこの数に決めた理由はあったのですか。

「いろいろな可能性を試してみて、そういった可能性の中で必要なものをすべて入れたつもりです。結果として、パーツの数がちょっと多すぎたのではないか、と思うくらいにパーツを入れて発売することになりました。そのために、さまざまな可能性に対応できるようになりました。マニュアルについている6つのロボットをみてもわかるように、いろいろなタイプのロボットを作成できるようなパーツをいれたわけです」

----ユーザーから、具体的に、このパーツをこうして欲しいといった要望はありましたか。

「歯車やブロックなどの部品に関しては、もっと欲しいという要望はありませんでした。ただ、モーターがもっとたくさんあった方がいい、という声は多かったですね。このモーターと、コントローラーの“RCX”は単品で売り出す計画はあります」

日立製の8bitマイコンを内蔵したコントロールユニット“RCX”(左)とモーター(右)
日立製の8bitマイコンを内蔵したコントロールユニット“RCX”(左)とモーター(右)



----モーターとRCXを単品で売るのは、いつからですか。

「おそらく、来年の3~4月になります。ちょうどそのころに、インターネットでのオンライン販売を全世界に向けて開始する予定ですので、ちょうどそれにあわせて単品販売も開始します」

----インターネットサイトでいろいろ試みていますね。

「『LEGO MINDSTORMS』のサイトでは、ユーザーが実際に作ったロボットやプログラムを掲載しています。おもしろいロボットを作った子供には、ロボットと本人を紹介するコーナーも作っています。また、“RoboTour(ロボツアー)”という発売記念イベントの模様も掲載しています」

----そこに参加している人は、子供が多いのですか。

「60パーセントが大人で、残りの40パーセントは子供です。しかし、今年のクリスマスを過ぎれば、パーセンテージは変わるのではないでしょうか。親が子供にクリスマスプレゼントとしてあげるケースが増えるでしょう。生産も、12月には需要に見合ったものになると思います」

ライバルはマイクロソフト、ソニー

----『LEGO MINDSTORMS』を発売したことによって、レゴという会社の位置づけが変わってくると思うのですが、これからのレゴにとって、どの会社がライバルになると思いますか。

「話すぬいぐるみを作っているFURBY(ファーピー)という会社や、ロボットのように話すぬいぐるみを開発している米マイクロソフトなどが、ライバルになってくると思います。また、ペットロボットを作っているソニーもライバルになるでしょう」

----ソニーのペットロボットをどうみていますか。

「ロボットを製作する技術に関しては、非常に面白い可能性を持っていると思います。現在では、世界中の人々がロボットの技術に非常に興味を持っています。そういった意味で、ソニーのペットロボットは、これからも発展しうる可能性をもった製品だと思います」

----これからは、どのようなロボットに注目が集まると思いますか。

「いろんなレベルで開発されているロボットとして、自ら考えることのできるロボットがあると思います。これからは、考えるロボットが非常に重要になってくるでしょう。これについても新しいアイデアができたら、製品化していきたいのです。現在の『LEGO MINDSTORMS』は、とても自ら考えるようなレベルの製品ではありません。しかし、『LEGO MINDSTORMS』では、インターネットを通して、さまざまなアイデアを相互に活用することが可能になっています。つまり、商品自体が古くならないのです。このことは、近い将来、非常に重要なポイントになってくるのではないかと思っています」

(現地時間の11月13日、米ニューヨーク市 Warwick Hotelにて)
(現地時間の11月13日、米ニューヨーク市 Warwick Hotelにて)



インタビューを終えて


 今回のインタビューは、当初は米コネティカット州にある米レゴ本社にて行なわれる予定だった。しかし、ダルトン氏のスケジュールの都合などにより、米ニューヨーク市内のホテルでインタビューすることになった。本社ならば、ひょっとしたら次期製品の試作機などをみることもできたかもしれない。そう思うと少し残念だったが、ニューヨークにきたことのメリットもあった。



 実は、“F.A.O SCHWARZ(エフ・エー・オー・シュワルツ)”というニューヨークでも有数の玩具ショップを覗いたところ、なんと10個以上の製品が積まれていたのだ。

 生産を大幅に上回る需要のために、製品はほとんど出回っていないと聞いていたが、やはりあるところにはあるものだ。予想販売価格の200ドル(約2万4000円)より、少し高い220ドル(約2万6400円)だったが、迷うことなく購入(もちろん自費で・・)。12月には、ASCII24で、レビュー記事をお届けしよう。

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