このページの本文へ

フィンランド大使館技術部、都内で移動体通信セミナーを開催

1998年10月30日 00時00分更新

文● 報道局 鹿毛正之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 29日、フィンランド外国貿易協会の主催で、“Future Mobile Networks(移動体通信の将来)”と題したセミナーが、東京・港区の芝パークホテルで開催された。このセミナーは在日フィンランド大使館技術部が企画したもの。出席者には、同国の公式代表団として来日中のMatti Aura通信運輸大臣をはじめ、ビジネス代表団として来日したノキア社やソネラ社などフィンランドを代表する有力通信関連企業の経営陣が列席した。

 冒頭、駐日フィンランド大使のPekka Lintu氏が挨拶し、セミナーに登場する5人のスピーカーを紹介した。

駐日フィンランド大使のPekka Lintu氏駐日フィンランド大使のPekka Lintu氏



 続いて、セミナー開会の挨拶として、Matti Aura(マッティ・アウラ)通信運輸大臣がスピーチを行なった。Aura大臣は、フィンランドは電気通信分野が著しく発展しており、特に携帯電話の普及率が50パーセント超と世界一の水準にあることを強調。学校や図書館はすべてインターネットに接続し、公務員は全員が電子メールを利用していると紹介し、フィンランドが欧州諸国をリードする情報化社会を達成していることをアピールした。

 この状況を踏まえた上で、Aura大臣はワイヤレスシステム・移動体通信分野がますます重要性を増すと指摘。電子メールや電子会議システム、電子商取引(エレクトリック・コマース)などさまざまな機能が移動体通信に収束していくとの予測を語り、「コンバージェンス(収斂、収束)がキーワードになる」とスピーチを締めくくった。

開会の挨拶を行なうMatti Auraフィンランド通信運輸大臣開会の挨拶を行なうMatti Auraフィンランド通信運輸大臣



 次に、ノキア・ジャパン(株)のJouko Paivinen(ヨウコ・パイヴィネン)副社長が、次世代の移動体通信サービスについてスピーチを行なった。パイヴィネン氏はエンドユーザーから見た視点が大切であると主張。マーケットリサーチが重要であり、あらゆるサービスをより早く市場に投入する必要性を強調した。また、今日のライトユーザーは明日のヘビーユーザー予備軍であり、ビジネスユーザーを個人ユーザーに取りこむ必要性を強調した。

 移動体通信の支払い方式に関しては前払い方式(プリペイド)が伸びており、特に新規契約者に限れば半数近くがプリペイドを選択していることを紹介。今後10年で、プリペイドは全体の半数に達するという予測を見せた。この理由として、現在の不透明な価格体系に不満を持っているユーザーが多く、利用料金の把握しやすいプリペイドが支持されているとのことだ。

 端末についてはWCDMA方式を用いて広帯域のサービスを行ない、インターネットのワイヤレス化、画像通信のワイヤレス化を推進して行きたいと語った。

 続いて登場したのはソネラ社のPekka Rauhala(ペッカ・ラウハラ)副社長。ソネラ社はフィンランド最大の通信事業者で、同国の携帯電話市場において65パーセントのシェアを占めている。

 ラウハラ氏は、フィンランドで移動体通信が発展した理由として、規制のない自由競争を一番にあげた。通話料金についても規制がなく、そのためフィンランドの携帯電話使用料金は、ほかの先進国にくらべ約60パーセントと割安であることを紹介した。また、産業の発展のためには「市場から学び、市場を教育する」必要があると語り、現在の市場におけるソリューションは次世代の基盤になると力説した。

 同氏によると、フィンランドの携帯電話所有率は'98年8月現在で52.1パーセントにのぼり、将来的には全フィンランド国民が携帯電話を持つようになるという観測を述べた。そのうえで、これからの携帯電話ではバンキングサービスなど付加価値的サービスが必要とされ、いずれ携帯電話は“マルチパーパス・コミュニケーター(多目的通信機)”になるだろうと語った。

 今回フィンランドから訪日したビジネス代表団には、企業経営者に加えてハイテクパークの責任者も含まれていた。フィンランド北部のハイテクパーク“テクノポリス・オウル”の代表者であるPertti Huuskonen(ペルティ・フースコネン)氏は、テクノポリス・オウルがフィンランドのシリコンバレーを呼ばれていることを紹介。160社・3000人以上がテクノポリス・オウルで働いており、産業と大学に加え自治体が結びつくことで、飛躍的な成果をあげられる事例を紹介した。

 セミナーの最後に登場したのは、NTT移動通信網(株)の専務取締役である森永範興氏。森永氏は、移動体通信事業は不況化のアジアにあって年数10パーセントの成長を記録していることを紹介し、普及率が30パーセント超の日本でも、さらに携帯電話の普及が伸びていくという予測を語った。同氏は移動体通信が伸びる要素として、多用な付加価値を安く提供すること(パーソナル)、インターネットなど非電話系サービスの拡充(マルチメディア)、ひとつの端末で場所を選ばず通信環境を利用できること(ユニバーサル)の3つが重要であると語った。

 これからの普及に関しては、日本の人口が1億2000万人だからこの数が限界だという見方を退け、1億台の自転車や6000万台の自動車などすべての移動体に携帯電話を普及させることで、約3億6000万台の需要が見込めるという予測を語った。

NTT DoCoMoの森永範興専務取締役がスピーチを締めくくったNTT DoCoMoの森永範興専務取締役がスピーチを締めくくった

 

 セミナー全体を通しての印象として、人口500万人のフィンランドが通信分野においてリーダーシップを取ることができるのは、通信事業の発展が国是とされているからだと感じられた。フィンランドと日本の貿易は日本の入超だが、通信機器が占める割合は3パーセントほどに過ぎない。この数字が将来的に高くなる可能性も十分に大きいと感じられるセミナーだった。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン