このページの本文へ

「パソコン・スピード組立世界大会決勝戦」レポート

1998年10月26日 00時00分更新

文● 報道局 原武士

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 25日、(株)亜土電子工業主催の「パソコン・スピード組立世界大会決勝戦」が開催された。

 日本、韓国、台湾の3ヶ国、約800名の中から予選を勝ちぬいてきた豪の者達15名が一同に会し、その中からパソコン(ATX筐体)を最も早く最も正確に組みあげることができるかを競うのである。ちなみに、元々アメリカも参加する予定だったのだが、アメリカではアジア諸国ほど組み立てに対する需要がないことと、予算の都合から米国内での大会が実現できず、結局3ヶ国のみで試合を行なうことになったそうだ。

 ルールは制限時間内(予選は30分、決勝は40分)で、パソコンを規定数台(予選は2台、決勝は3台)組みあげるというもの。ただし、時間内に1人が組みあがった時点で全員組み立てを終了する。そして“起動できる”、“CPUファン結線”など、37にも及ぶ項目数から点数がつけられ、点数の1番高かった者が勝ちとなる。採点には、実際にマシンの組み立てラインで働いた経験のある(株)プロトンの林氏が担当する。

 予選(準決勝選)は国別に行なわれた。まず、各国の予選を勝ちぬいてきた5名が戦い、その中から2名が決勝戦に勝ち進む。最終的に勝ち残った6名が賞金をかけて戦うのである。優勝者には80万円、2位50万円、3位30万円の賞金が与えられる。

 金山和男社長による開催の挨拶の後、高らかなファンファーレとともに競技開始となった。

亜土電子工業、金山社長
亜土電子工業、金山社長



韓国チーム予選

 優勝賞金の80万円は、韓国の通貨(ウォン)に換算すると、韓国の一般的な家庭の年収の約半分に当たるという。しかし、優勝賞金は何に使うかと言う司会者の質問に選手全員が「パソコンに使う」と答えた。日本や台湾の選手に比べかなり緊張した表情の韓国選手たち。そして、戦いの火ぶたは切られた。全員横一線、ほとんど同じスピードでパソコンを組みあげていく。CD-ROMドライブにレールつけなければならないというひっかけに、手間取りながらも、25分でBAE選手が2台を組みあげ終了。結果、BAE選手とKWON選手が決勝に勝ち進んだ。

熱心にパーツのケースの開け方の説明を聞く選手たち
熱心にパーツのケースの開け方の説明を聞く選手たち



KWON選手(左)、BAE選手(右)
KWON選手(左)、BAE選手(右)



台湾チーム予選

 韓国チームの予選を見ながら、口々に「楽勝」と強気の発言をしていた台湾チーム。良くしゃべっていたが、試合が始まるやいなや沈黙し、キビキビした腕の動きでパソコンを組み立て始めた。韓国チームの予選を見ていたこともあり、手間どることもなく、スピードも韓国チームより早かった。23分でLIU選手が組みあげ、終了。結果はLIU選手と、CHANG選手が決勝戦進出を果たした。

PENG選手。FDD取付中。選手はほぼ全員、自分で工具を持ってきていた
PENG選手。FDD取付中。選手はほぼ全員、自分で工具を持ってきていた



決勝進出を聞き満面の笑みのCHANG選手決勝進出を聞き満面の笑みのCHANG選手



日本チーム予選

 台湾チーム以上に強気の日本チーム。「韓国、台湾の選手には悪いが、観光だけして帰ってもらおう」という発言も飛び出した。最も強気だったのは阿部選手。「10分で1台組み上げる」と宣言。強気だけでなく実力もあり、予告どおり9分48秒で1台を仕上げた。圧倒的な実力差を見せ18分5秒で阿部選手が2台を組み上げ、切田選手と決勝戦進出を果たした。

阿部選手の作業を立ちあがって見つめる観客達。18分5秒で2台完成。何者だ
阿部選手の作業を立ちあがって見つめる観客達。18分5秒で2台完成。何者だ



CD-ROMドライブにレールを取り付ける、斎藤選手。レールはどの選手にも鬼門となっていた
CD-ROMドライブにレールを取り付ける、斎藤選手。レールはどの選手にも鬼門となっていた



決勝戦進出の阿部選手(右)と、切田選手(左)
決勝戦進出の阿部選手(右)と、切田選手(左)



世界大会決勝戦

 開催から5時間が経過。会場の空気はここにきて異様な盛り上がりを見せていた。予選を勝ちぬいた各国代表2名ずつが順に紹介され、全員が「自分が勝ちます」と意気込みを見せた。

 予選より1台増えた3台を、40分以内で組みあげる決勝戦。日本代表の阿部氏は「25分で組みあげます」とあくまでも強気。

 はたして、戦線の火ぶたは切られた。異様な熱気に包まれる会場。ほぼ総立ちで見守る会場の人々。最初に、1台目を組みあげたのは阿部氏であった。時間は約10分、それより約1分ほど遅れて韓国のKWON選手、台湾のCHANG選手も1台目を組みあげた。かなりの接戦である。

 会場からは、1台組みあがるたびに、ざわめきや拍手が巻き起こる。開始から20分経過。すでに全員が2台目を組みあげていた。台数を重ねる毎に、選手たちの組あげのスピードはどんどん早くなる。観客からも感嘆の声が次々にあがる。会場はまさに修羅場の様相を呈していた。

 25分経過。韓国のKWON選手、台湾のCHANG選手、日本の阿部選手、3名ともにラストスパート。ケースのカバーに手をかけた。3名の誰を見て良いか戸惑う観客達。「組みあがったら手をあげてください」司会者の絶叫がこだまする。張りつめる緊張。25分48秒、阿部選手が高らかに拳をあげた。試合終了の合図と同時に会場全体から拍手と喝采が巻きおこった。

高らかに拳を突き上げる阿部選手高らかに拳を突き上げる阿部選手



表彰式

 長い審査の後、結果発表及び表彰式となった。ポイントは公開できないと言うことであったが10点差以内の壮絶な戦いだったと言う。3位は、韓国のKWON選手。今大会の最年少16歳の高校生だ。2位は台湾のCHANG選手。スピードではやや劣勢であったが正確な組み立てでポイントを稼いだ。そして優勝は日本の阿部選手。名前を呼ばれるよりも先に表彰台に歩いて行く。最後まで強気ぶりを発揮した。

 最後に金山社長は「非常に素晴らしい戦いでした。パソコンに国境は在りません。次回はもっと賞金を増やして、大規模にやりましょう」と修辞を延べた。これで「パソコン・スピード組立世界大会決勝戦」は終了した。しかし、終了と同時に観客が会場になだれ込み会場はお祭り状態になった。パソコンに国境はないと言う金山社長の言葉を強く感じることの出来た戦いだった。

30万円と聞いて、今にも倒れそうな表情のKWON選手30万円と聞いて、今にも倒れそうな表情のKWON選手



左から3位KOWN選手、1位安部選手、2位CHANG選手
左から3位KOWN選手、1位安部選手、2位CHANG選手



最後に全員そろって記念撮影
最後に全員そろって記念撮影



台湾、韓国の選手たちは非常にノリが良かった
台湾、韓国の選手たちは非常にノリが良かった



世界チャンピョンは阿部選手

 表彰式の後、阿部選手に授賞の感想などを聞いた。

--試合の感想を聞かせてください

「厳しかったです。台湾の選手とか、かなり早いし、何とか取れたって言う感じです。」

--賞金は何に使いますか?

「そうですね、まだ考えてないですけど、パソコンか趣味に使います。」

--趣味とは?

「それは秘密です(笑)」

 残念ながら、ここまでインタビューした時点で、大量の報道陣が阿部選手のもとへ押し寄せてきたため、インタビューは終了した。

80万円を手に満身の笑みの阿部選手、趣味が気になる
80万円を手に満身の笑みの阿部選手、趣味が気になる

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン