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Windows NT、UNIXで稼動するネットワークアプリ開発、運用環境、アップル『WebObjects』(上)

1998年10月26日 00時00分更新

文● システムコーディネーター 小林剛

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 アップルコンピュータ(株)が、同社のネットワークアプリケーション開発/運用環境『WebObjects(ウェブオブジェクツ)』で日本でも攻勢を掛けようとしている。米国では3000サイト、7000セットという実績を誇る。Windows NT、UNIXでの稼動が保証されているが、Mac OS X Serverでの稼動について正式アナウンスがまだ、という異色の製品だ。アップルコンピュータの事業推進本部事業開発部長の有本一氏をはじめとする3氏に最新バージョン『WebObjects 4』の概要と今後の事業展開について伺った。インタビューおよび構成は、システムコーディネーターの小林剛氏。本日は、そのうち前半部として、開発、運用環境としてのWebObjectsの位置付けについて述べた部分を掲載する。取材日時は、10月21日から東京国際フォーラム(東京・有楽町)で開催された“DATABASE'98 TOKYO”における『WebObjects』ワークショップの直後。

WebObjectsについて語る3氏。向かって左から、秋元氏、有本氏、小林氏
WebObjectsについて語る3氏。向かって左から、秋元氏、有本氏、小林氏



最新バージョン『WebObjects 4』はさらに“オープン”に

 WebObjectsとは、httpサーバーベースのネットワークアプリケーション開発、運用環境である。NeXT社(米アップル社が買収)が開発したオブジェクト指向開発環境を基盤とし、データベースパブリッシングをWeb上に実現する。以下のような特徴を備えている。

■開発言語が種々用意されている(C、C++、Objective-C、Javaをサポート)
■運用環境が種々用意されている(Windows NT/95、SUN Solaris、HP/UX)
■運用サーバーに依存しない(NSAPI、ISAPI、CGIへの各対応アダプターにより各種httpサーバーと接続可能。データベースサーバーは、Oracle、Sybase、ODBC、JDBCで運用可能)

 さらに次期バージョンである『WebObjects 4』[本インタビュー記事の(下)で触れる]では、今後拡大するであろうWebパブリッシングでの要求に応えるために、マルチスレッド化による高速化やJavaへの対応も強化されている。このように、WebObjectsは、アップル社が最近、強く標榜している“オープン”な製品だといえる。これはインターネットを利用してシステムを構築していく上で非常に大切なことである。

「『WebObjects』は、展開されている数、規模ともにNo.1」

 アップルの事業推進本部事業開発部長・有本一、事業推進本部プロダクトマーケティングソフトウェア製品担当課長・小林衛、事業推進本部事業開発WebObjectsビジネスシステムエンジニア・秋元雄二郎の3氏に、近々発売を控えたWebObjectsの最新バージョンである『WebObjects 4』の概要と今後の事業展開について伺った。

----競合製品と比べたときのWebObjectsの特徴を教えていただけますか?

小林「WebObjectsには、最初から最後まで、つまり、ページのレイアウトから、運用とそのパフォーマンスチューニングまで、すべての段階できちんと答えが用意されています。競合製品の多くには、開発ツールはユニークだが運用環境がないとか、非常に小さなマシンで動く点あるいは逆に負荷分散や凝ったアルゴリズムを売り物にしていても、実は開発環境はプアであるとか、少しデコボコがある製品が多いと思います。

「HTMLの中にロジックを書き込まない点がミソ」と小林氏
「HTMLの中にロジックを書き込まない点がミソ」と小林氏



次に、WebObjectsには、オブジェクトという基盤があり、そのノウハウの蓄積もあります。それをベースにして、業務ロジックとHTMLページ表現といった本質の異なるものの混在を避けます。企業にとって非常においしくて大事なところは、大切に再利用と改善に励み、HTMLを生成する部分は、アプリケーションの中ではなく、フレームワークが参照するデータとして格納しておきます。

重要なロジック、HTML生成、あるいはバックエンドとのアクセス部分(基幹データベースとのやりとりなど)、というようにはっきりと区分けされています。アプリケーションの構造として、HTMLの中に重要なロジックが書き込まれるというスタイルではありません。これが大きな特徴といえます」

有本「特徴に付け加えるとすれば“スケーラブルで、フレキシブルな構成をしている”という点です。そのため、大きな企業で利用されている例が多いのです。これは実際、他のどんなツールと比較していただいても、その数といい、その展開されている規模といい、間違いなくNo.1だといえます。ある意味では、この実績が物語っているところが、キーであると思います」

「実績自体が特徴」と有本氏(向かって右)と「WebObjectsならデータを中核にして、各種メディアに出せる」と秋元氏
「実績自体が特徴」と有本氏(向かって右)と「WebObjectsならデータを中核にして、各種メディアに出せる」と秋元氏



秋元「今は、ある意味でシームレスな世界が1つのトレンドです。コンテンツであるデータをシームレスに、デスクトップでもWebでもVANへも展開できます。データを中核として、さまざまな形で見られる、ということが、進めていきたいことの1つでもあり、これはWebObjectsだからこそ、実現できることです」

「日本におけるWebObjectsへの期待が高まる」

----ターゲットとしているユーザー像は?

小林「最初にこのテクノロジーを理解してもらわなければならないのは、“開発者よりは少し上で、ビジネスのスピードアップといった問題を抱えて、その答えを求めている方々”です。その方々にキーマンとなっていただき、その方から、WebObjectsを使ったソリューションを要求してもらう形で開発者に理解してもらう、という手順だと思っています」

----日本では、まだWebObjectsの認知度は低いと思うのですが、それについてはどうお考えでしょうか?

有本「米国では、3000サイト、7000セットの実績があります。製品のライフサイクルでいえば、現在は成長期として広がっています。WebObjectsをベースにしたパッケージ商品、附随サービスも増えてきているところです。日本では、米国での良い事例を紹介してご理解いただき、少しでも立ち上がりの時期を早めたいですね。さらに、“Enterprise Alliances Program(エンタプライズ・アライアンス・プログラム)”も、早急に立ち上げたいのです。プログラムを通してデベロッパーと対話し、WebObjectsで開発していただける方を増やしていくのが急務だと考えています。

 これまでWebObjectsを“アップルの製品として”紹介する機会はなかったといえます。しかし、本日のワークショップ(*1)に関しては、お断わりしなければならないほど応募が多く、WebObjectsに対する期待が非常に高いことを強く感じました。今後は、『WebObjects 4』のリリースを機会にさらに進めて行こうと考えています。」<(下)に続く>

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