松下電器産業(株)は、マスコミを対象とした技術説明会“10月度MMT会”(松下とマスコミがテクノロジーを語る会)を開催した。櫛木好明(くしきよしあき)同社マルチメディア開発センター所長により、『ネットワーク時代におけるデジタル家電を支えるマルチメディア技術』というテーマで、家電のデジタル化の流れや、同社のデジタル放送への取り組み、その基礎となる技術などが説明された。
櫛木好明(くしきよしあき)同社マルチメディア開発センター所長 |
家電のデジタル化
家電にマイコンを搭載したはじめたことがデジタル家電の始まり。これによりソフトウェアによる機能の拡張が図れるようになり、ソフトウェア設計の比重が増大していることが説明された「2005年には設計技術の比重の半分がソフトウェア設計に費やされると思われます。従来はハードの開発がほとんどであった家電も、現在ではソフト、ハードが同じ比重で取り組まれ、いわばハードとソフトは車の両輪ともいえます」
「同様にソフトウェアのサイズも大きくなってきています。洗濯機や電子レンジなどはソフトウェアをすべて合わせても数10KB、処理をおこなうマイコンも4~16ビットのプロセッサーですんでいました。しかし、DVDプレーヤーや、ハイビジョンテレビ、衛星デジタルセットトップボックスなどではプログラムサイズが数100KB、携帯電話やPDA(Personal Data Assistants)などでは数MB、プロセッサーも16~32ビットのものを使用しています。このくらいになってくると全体を統御するためにOSが必要になってきます。この全体の中核となるOSにはITRONなどのほか、独自の『PiE-OS』を使用しています」
デジタル放送の中核技術『PiE-OS』と『MCP』
「現在開発を進めているデジタル家電の大きなもののひとつとしてデジタル放送技術があります。この中核となるのが『PiE-OS』、そして独自のプロセッサー『MCP』(Media Core Processor)です。PiE-OSはPersonal Information Entertainment OSの略で、通信機機用のOSです」家電向けのOSでは、ITRON(Indutrial-TRON(The Realtime Operating System Nucleus))などが多く使われている。PiE-OSは、松下がCSデジタル放送用セットトップボックス用に開発したOSで、今後デジタルテレビ向けに汎用化させていくという。家電用のOSは特定用途に合わせた設計を行なうこと、PC用OSより長い5~10年の使用を考慮して設計する。
「MCPは0.35μmルールで製造し、54MHzで動作する『MCP1』を97年にリリースしています。これはPiE-OS V1.0世代に対応したもので、今後PiE-OS V1.5世代に対応した『MCP1+』(0.25μmルール、81MHz)、PiE-OS V2.0世代に対応した『MCP2』(0.25μmルール、108MHz)をリリースする予定です」
MCPは汎用のものだが、CSデジタル放送用セットトップボックスのデコーダーなどに使用している。
デジタルホームライブラリー
「デジタルホームライブラリー(DHLib)は、HDDとDVD-RAMチェンジャーを併用した機器に録画を行うというものです。EPG(Electric Program Guide)を用いて1週間分のテレビ放送をまとめて録画といったことが可能になります。ここでの核となる技術に“HAVi”と“Hybrid VBR”があります。“HAVi”はAV機器のネットワーク接続を可能にするためのアプリケーション・プログラミング・インターフェースの規格で日欧8社で現在策定を進めています。例えばIEEE 1394のネットワークを用いて、別の部屋にあるテレビなどから遠隔操作でDHLibに録画された番組をとりだすといった際に必要な技術です。“Hybrid VBR”は“QC-VBR”と“視覚感度変調技術”の2つの技術により録画時のデータの圧縮効率を向上し長時間の録画を可能にするというものです」このほか、(株)ディレク・ティービーの衛星デジタル放送サービス『DIRECTV』で実用化したデータ放送システムなどが紹介された。