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デジタルハリウッド、“クリエイターズトーク'98 ”Part2を開催。~メイキング ザ ムービー“TITANIC”

1998年10月20日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

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 デジタルハリウッド(株)は、16日と17日の2日間、学園祭“DH98 in Yokohama”を開催した生徒作品のコンピューター・グラフィックス(以下、CG)を使ったCDジャケットの展示が中心。映像合成が体験できる仮設ブルーバックスタジオ、PlusやSEといった古いMacintoshの展示などのブースも設けられた。

生徒作品の展示。オリジナルCDジャケットがずらりと並んだ
生徒作品の展示。オリジナルCDジャケットがずらりと並んだ



入場者全員に配られた卵型マラカス。“クリエイターの卵”にちなんだもの
入場者全員に配られた卵型マラカス。“クリエイターの卵”にちなんだもの



 2日目の17日、(株)東京放送(TBS)開発局マルチメディアセンターの曽利文彦氏が「メイキング オブ ザ ムービー“TITANIC”」と題した講演を行なった。プロジェクトに参加した日米の映画“TITANIC”(配給:20世紀フォックス映画会社)、“アンドロメディア”(配給:松竹)のメイキングビデオをそれぞれ上映、また各現場の様子などを紹介した。

米Digital Domain社の“TITANIC”CG製作プロジェクトに参加

 曽利氏は'96年末、TBSの仕事の縁で南カリフォルニア大学の映画学科インターンとして渡米した。ジェームス・キャメロン監督の大ファンである氏は、米Digital Domain社で“TITANIC”のCG製作プロジェクトが進行しているということを聞き、アニメーション製作ソフト『Softimage 3D』で作った作品を持ち込んだ。評判は上々で、当時Digital Domainは『Softimage 3D』 の使い手が不足していたこともあり、プロジェクトメンバーに採用する。

メイキング ザ ムービー“TITANIC”

 当初“TITANIC”は、'96年7月2日アメリカで公開予定だった。「“TITANIC”の群集シーンは、その1人1人がCGでできています。'97年2月の時点で完成していたのは出港のシーンの船上の群集だけ。CGのムービーは5月にアップしなければならないのに、沈没のシーンの群集などにはまったく手がつけられていませんでした」

 「当初の手法は、モデルの動きをモーションキャプチャーし、直接データで調整をしていました。このやり方では、1人の人物をつくるのに2週間もかかってしまいます。当然我々は、方向転換を考えなくてはならなくなりました」

 そこで考えられたのが、“ロト キャプチャー”という方式。モーションキャプチャーのデータはあくまで参考とし、それを見ながら手作業で1から3Dアニメを製作したそうだ。「“ロト キャプチャー”という名前は、勝手に我々で命名したものです。この方式の採用で、5倍近くスピードアップしました」

日本のCG製作現場

 帰国した氏は、この夏松竹系で公開された映画“アンドロメディア”のビジュアルエフェクトスーパーバイザーに抜擢される。製作にあたり、日本のCG業界で勢いのあるジャパニメーションやゲームの製作プロダクションを起用。また、ヒロインのCGは、人気アイドルグループSPEEDの島袋寛子さんの全身スキャンでなく、手作業でアニメーションを作成しゲームのキャラクターのような魅力を出そうと心がけた。日本人のもつ強みを前面に出したかったという。

 「デジタルクリエイターは、ハリウッドに行かなければ一人前になれないかというと、決してそうではありません。ハリウッドですと、よほどの腕がない限り大勢の中の1人で、ずっと同じ作業しか割り当てられません。しかし、日本の製作会社の多くは小規模で、モデルの撮影からひととおり任せられ勉強になります。チャンスを見つけてください」と、会場のCGデザイナーの卵たちに向けてエールを送った。

 一般の入場者のことを考えてか、専門的な内容にはふれず、具体的なCG技術はビデオで簡単に紹介されただけであった。専門的な知識を持つ学生には、少しもの足りないものであったかもしれない。しかし、アメリカと日本のCG業界の第1線で活躍した氏の話は、これから学校を巣立つ生徒には興味深いものであったであろう。

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