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NTTとMIT、情報通信やコンピューターの基礎技術を共同研究

1998年09月21日 00時00分更新

文● 報道局 浅野広明

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 日本電信電話(株)(NTT)と米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、情報通信分野、コンピュータ関連分野について基礎技術の共同研究を開始することを発表した。研究テーマが決定したことに伴い、両組織3名ずつ計6名で構成される運営委員会が、記者発表会を行なった。

 共同研究期間は5年間。NTTが1800万ドル(約25億円)を上限に研究費を出資し、NTTおよび同グループが研究成果を無償で利用できる、という契約になっている。MIT人工知能研究所(AI Lab)およびMITコンピュータ科学研究所(LCS)が研究拠点となる。



運営委員会の面々。このうち松田晃一氏とRodney Brooks氏の2人が委員長を務める。 上:左から市川晴久・NTTソフトウェア研究所広域コンピューティング研究部部長、東倉洋一・NTT基礎研究所所長、松田晃一・NTT基礎技術総合研究所所長 下:左からRodney Brooks(ロドニー・ブルックス)・MIT人工知能研究所所長、Michael Dertouzos(マイケル・ダトゥーゾス)・MITコンピュータ科学研究所所長、Victor Zue(ヴィクター・ズー)・同副所長
運営委員会の面々。このうち松田晃一氏とRodney Brooks氏の2人が委員長を務める。 上:左から市川晴久・NTTソフトウェア研究所広域コンピューティング研究部部長、東倉洋一・NTT基礎研究所所長、松田晃一・NTT基礎技術総合研究所所長 下:左からRodney Brooks(ロドニー・ブルックス)・MIT人工知能研究所所長、Michael Dertouzos(マイケル・ダトゥーゾス)・MITコンピュータ科学研究所所長、Victor Zue(ヴィクター・ズー)・同副所長



 両組織は本日午前、7つの研究テーマを決定し、記者発表会ではそのうちの主たる3テーマが解説された。概要を以下に示す。

●モバイル機器が自動接続できる無線ネットワーク

 現在、ノートPCなどのモバイル通信機器同士を無線通信で接続する場合に、赤外線、電波などの無線通信手段や、各機器の動作条件などが異なるため、通信設定が複雑だったり、接続自体が行なえないなどの問題がある。これを解決するネットワーク環境の構築を目的としている。

 各モバイル機器が自分の利用する通信手段や動作条件を使用環境に対して提示し、逆に使用環境や他機器の情報を学び取ることで、通信設定の自動化を図る技術がメインの研究対象となる。この技術により、環境に応じた異機種間のスムーズな接続が可能となり、個々の所有するモバイル機器を通して、会議室での名刺交換、レストランでのメニュー表示なども行なえるという。

●好みのアングルでのスポーツ観戦ができるコンピュータ映像システム

 これは、スポーツやコンサート、演劇、ニュースなどの映像を視聴者の好みの視点で見られる技術の開発表明である。多数のビデオカメラから検出した映像を再合成することで、これまで不可能だった視点からも視聴できるようにしたいという。そのために開発すべき技術としては、任意の視点で見た映像を再構成するCG(コンピューターグラフィックス)技術のほかに、映像に対する違和感を感じさせないためのVR(バーチャルリアリティー)技術や、視聴者ごとに異なる映像を配信する伝送技術などがある。

●複数の言語で情報にアクセスできる会話インターフェース

 この研究では、ユーザーとコンピューターが多言語で会話できるシステムの構築が最終目標となる。MITコンピュータ科学研究所では、以前から音声対話システムの研究を進めており、記者発表会では、世界の500都市以上をカバーした対話形式の天気概況サービス“Jupiter”のデモも行なわれた。これはフリーダイヤル(TEL.1-888-573-8255)で電話をかけ、天気を知りたい場所の名前を言うと、コンピューターが意味を理解し、音声で回答してくれるというもの。現在、英語およびスペイン語のサービスが完成しているため、当面は両組織でJupitor日本語版の開発に取り組み、その後、音声認識や言語解析、音声合成などの性能を向上させる方針だ。

Dertouzos氏がJupitorのデモを行なった。「ボストンの天気は?」(Dertouzos氏)、「晴れです」(コンピューター)。
Dertouzos氏がJupitorのデモを行なった。「ボストンの天気は?」(Dertouzos氏)、「晴れです」(コンピューター)。


それでは、「人生の意味は?」、「情報を持ち合わせておりません」

 これらテーマは両組織の研究員から募集したもの。提案された35テーマの中から7つに絞った。なお、今後も研究の進展状況などに応じて随時テーマを追加していく予定で、1テーマあたり2、3年のスパンを想定しているという。運営委員会の委員長を務める松田晃一氏は、「NTTの基礎研究を活性化するためには、技術交流が大事。MITとは古くから研究者同士の結びつきがあり、互いに求めていたものも一致した」。MITサイドの委員長であるRodney Brooks氏も、「AI LabおよびLCSの研究開発において10パーセント程度の規模を荷う大きな提携だ」とし、本発表の重要性を強調した。

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