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PCメーカーが運営するインターネット接続サービス、主要3サービスの戦略を紹介

1998年09月14日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 Webブラウザーが統合されたOS、Windows 98が発売され、パソコンはますますインターネットへの入り口としての機能をはたすようになった。パソコンメーカーの経営者は、「パソコンをもっと売るには、魅力のあるコンテンツが必要だ。中でもインターネットのはたす役割は大きい」と口を揃えて語っている。

 日本電気(株)の“BIGLOBE”を担当している小見山太洋BIGLOBEパーソナル販売本部本部長、富士通(株)の“InfoWeb”を担当している加藤雄一ネットワークコンテンツ本部ネットワークサービス統括部長、ソニーグループの“So-net”を担当している、ソニーコミュニケーションネットワーク(株)の平林信隆企画管理グループ事業戦略マネージャーの3氏に、それぞれのプロバイダーとしての戦略を伺った。



サービス名


運営母体


サービス
開始


会員数


BIGLOBE


日本電気(株)


'96年7月


261万人('98年8月末時点)


InfoWeb


富士通(株)


'94年6月


46万人('98年8月末時点)


So-net


ソニーコミュニケーションネットワーク(株)(ソニー(株)などが出資)


'96年1月


35万人('98年8月末時点)


 このほか、大手のインターネットコンテンツプロバイダーには、ニフティ(株)(富士通と日商岩井が出資)が運営する“NIFTY SERVE”(8月末の会員数264万人)、AOLジャパン(株)(米アメリカオンライン社、三井物産(株)、(株)日本経済新聞社が出資)の“AOL Japan”(8月末の会員数は推定15万人)などがある。

BIGLOBEは、Realに裏打ちされたコミュニティーを提供する

日本電気(株)の小見山太洋BIGLOBEパーソナル販売本部本部長 日本電気(株)の小見山太洋BIGLOBEパーソナル販売本部本部長


----BIGLOBEの発足の経緯と、現在の会員数などについてお聞かせください。

「BIGLOBEは、パソコン通信の“PC-VAN”や、インターネット接続サービスの“mesh”などを統合するかたちで、'96年7月に設立されました。その時点では、ほとんどが旧PC-VANの会員で、会員数は180万人程度でした。現在の会員数は、8月末時点で261万人に達しています」

----BIGLOBEの事業としての、収支はいかがでしょうか。
「損益については、対外的には公表していません。まぁ、単年度で言えば黒字です。累損については、どこから数えてよいかわからないので、難しいので、お答えはできません。キャッシュフローについても、そこそこ頑張っている、というところでしょうか」

----業界全体も含めて、最近のインターネット事業の動向について教えてください。

「まず、BIGLOBEに関して言いますと、サービスの基本となる接続サービスは着実に伸びています。また、昨年11月に、NECが『PC-98 NX』シリーズを発売した時から、BIGLOBEの無料体験用ソフトをバンドルするようになりましたが、この無料体験用ソフトでBIGLOBEにアクセスした人は相当な数にのぼっています。ただ、このうち何人が会員なったかは、企業秘密なので申し上げられませんが・・」

「BIGLOBEでは、接続サービスのほかに、有料コンテンツ、ショッピング、広告、デジタルリサーチの4つを今後発展させていく付加サービスとして、力を入れてきましたが、このうち有料コンテンツ、ショッピング、広告の3つは、昨年の暮れぐらいから急速に立ち上がってきた、という実感を得ています。特に、広告の伸びが大きいように感じていますが、では、なぜそうなったのかについては、私自身にもよくわからない部分があります。あえて言えば、インターネットがメディアとして認められ出した、ということになるのでしょうか。昨年の秋ごろから、新聞にもインターネット広告に関する記事がたくさん載るようになりました。また、広告業界においても、“クリック・レート”というような、広告を評価する手法が確立したことも大きいのではないかと思います」

「BIGLOBEが力を入れている付加サービスのうちの、4つめのデジタルリサーチもこの7月より本格的に開始しました。マーケットリサーチを行ないたい企業などから、BIGLOBEが委託されて行なうサービスです。7000人の協力会員が登録されており、ある新聞広告に対する評価などを電子メールで依頼し、Webで回答してもらうというものです。協力会員には、1問の回答につき1ポイントというふうに計算し、1年ぶんを集計して商品券などを提供します」

----BIGLOBEのコンテンツサービスについてお聞かせください。

「BIGLOBEでは、発足当初から有料のコンテンツに力を入れてきました。いいものは有料で提供すべきだ、と考えたからです。現在、有料コンテンツが90以上、無料コンテンツが40ぐらいです」

「ただ、サービス開始当初は、有料コンテンツもなかなか受け入れられませんでした。BIGLOBE発足直後の'96年8月から、写真家の渡辺達男さんが撮ったアイドルなどの写真を有料で提供する“TWO~素肌のメッセージ”を始めたのですが、これがなかなか会員数が伸びませんでした。少しずつ会員が増えていって、ちょうど昨年の秋ぐらいから会員数がどっと増えだしました。1年近く待たされた感じです。これに比べると、今年の2月から始めた篠山紀信の“インターネット篠山紀信”は、初めから会員数はどっときました」

----コンテンツを提供するうえでの方針をお聞かせください。

「BIGLOBEのキャッチフレーズというのがありまして、発足1周年目に決めたものが“V&Rコミュニティー”というものです。V&Rとは、Virtual&Realの略で、Real(リアル)のコミュニティーをVirtual(ヴァーチャル)に写し込んでいくことを意味しています」

「たとえば、'97年4月に関連会社として、(株)サイバーウィングを設立し、“サイバーウィングゴルフ倶楽部”の運営を開始しました。これは、実際の会員制のゴルフクラブを運営しながら、その活動をネットで支援していく、というものです。ゴルフ場の予約やハンデの登録などがWeb上で行なえるようになっています。プロのゴルファーや、ゴルフ雑誌の編集者などの意見を聞きながら、運営するもので、実際のコミュニティーをWeb上に再現していくことをめざしています。これがひとつのモデルケースであり、パソコン通信のフォーラムのような閉じたコミュニティーとは異なるコミュニティー、つまり、Realに裏打ちされたコミュニティーの確立をめざしています」

----NIFTY SERVEのフォーラムをどのようにみていますか。

「BIGLOBEは、“コミュニティープロバイダー”をめざしています。BIGLOBEの提供するコミュニティーは、先程も申し上げましたが、Realに裏付けされたコミュニティーをめざしています。NIFTY SERVEの提供するフォーラムとは、このRealに対する考え方が違うと思っています」

----So-netのPostPetは、どのようにみていますか。

「PostPetは非常に遊び心にあふれたものだと思っています。しかし、遊び心は必要だと思っていますが、それだけで十分であるとは、思っていません。遊び心は二次的なものであって、BIGLOBEとしては、実際に役に立つコンテンツを提供していきたいと考えています。BIGLOBEは、10月よりドラえもんを使った“ドラネット”を開始しますが、これは、子供たちに人気のあるドラえもんを使って、学習の素材を提供するもので、楽しめる上に、役に立つコンテンツだと思っています」

InfoWebは、信頼の高いインターネット接続プロバイダーをめざす

富士通(株)の加藤雄一ネットワークコンテンツ本部ネットワークサービス統括部長 富士通(株)の加藤雄一ネットワークコンテンツ本部ネットワークサービス統括部長



----InfoWebの現在の会員数などについてお聞かせください。

「'94年6月の設立で、8月末の会員数は46万人です。来年の3月末までに、55万人を目標にしています。ただ、これは固めの数字で、60万人くらいにはなるとみています」

----InfoWebの事業としての、収支はいかがでしょうか。

「単年度でギリギリ黒字というところでしょうか。累損については富士通内の帳簿上の処理の問題もありますのが、いちおう解消しています。キャッシュフローについては、設備投資が先行していますので、収支はマイナスになっています」

----InfoWebを運営していく上での方針についてお聞かせください。

「InfoWebとしては、まず、インターネット接続プロバイダーとして、つながりやすく、安全なプロバイダーをめざしています。接続プロバイダーとしての基礎収入をもとにして、有料を含めたコンテンツを、今後拡充していこう、という方針です。まずは、会員を増やすことをめざしています」

「InfoWebだけのコンテンツを作るのは難しい、と考えています。コンテンツを作ろうとしても、ユーザーの興味を明確につかまえきれない部分があります。今後も、コンテンツだけを強調していくつもりはありません。InfoWebとしては、ネットワークの接続の早さや信頼性のほか、情報の検索のしやすさを重視していきたいと思っています」

「インターネットは、本当に欲しい情報になかなかたどりつけないというデメリットがありますが、InfoWebの中に、“InfoNavigator”という検索サイトがあります。また、“招き猫”というサイトを7月から開設しています。これは、実際のショツプ専門のナビゲーターで、登録する店舗の加入資格を厳しくして、一定の基準を満たした店舗の情報しか登録していません。“招き猫”では、ショップの登録料は無料で、情報検索を利用するユーザーも無料で利用できます。こうしたサイトを作ることによって、情報検索のしやすさを実現しています」

----富士通は、NIFTY SERVEを運営する(株)ニフティに50パーセント出資しており、また、社長も派遣していますが、InfoWebとの関係は、どうなっていますか。また、BIGLOBEのように統合される可能性はありますか。

「ユーザーからみると、InfoWebとNIFTY SERVEは、まったくの別物で、特に意識している人はいないと思います。どちらも、富士通が関係していますが、そういう質問をするのは、新聞、雑誌などのマスコミの方だけで、ユーザーはそんなことはあまり意識していないと思います。両者を統合するかどうか、についてはコメントする立場にない、と思っています」

----So-netのPostPetは、どのようにみていますか。

「これも、マスコミの方と話していると、よく話題になります。記者の方に、『PostPetはInfoWebにとっても、脅威ですよね』とか、よく聞かれることが多いのですが、これもインターネット業界の内輪の話題のような気がします。ただ、So-netの会員でもPostPetのことを知らない方は結構いらっしゃると聞いています。実際には、InfoWebにとっては、それほど脅威ではないと認識しています」

So-netは、エンターテイメント系プロバイダーのナンバーワンをめざす

ソニーコミュニケーションネットワーク(株)の企画管理グループ事業戦略マネージャー ソニーコミュニケーションネットワーク(株)の企画管理グループ事業戦略マネージャー



----So-netの発足の経緯と、現在の会員数などについてお聞かせください。

「数年前に、ソニー(株)内のコーポレートベンチャーとして、いくつかの事業が企画されたのですが、そのうちのひとつとして、ネット事業を戦略的に行なう組織として、オンライン事業推進室というのがありました。それが、'95年11月に、独立した会社として、設立されました。'96年1月から試行サービスを開始し、'96年4月から本格的にサービスを開始しました。現在、ダイヤルアップ接続の会員は35万人です。'99年3月末までに、50万人をめざしていますが、これはあくまでも目標としての数字です」

----So-netの事業としての、収支はいかがでしょうか。

「事業的には、会員が25万人ぐらいのところで、収支はあうようになりました。単年度とでみると、今期は黒字です。当初の事業計画は、3年目で単年度黒字化、5年目で累損解消を予定しており、その通りに進んでいます。キャッシュフローの面では、設備投資が先行して、収支はマイナスになっています」

----So-netまたは、ソニーコミュニケーションネットワークのソニーグループにおける位置づけは。

「So-netの立場は、すべてのパソコンメーカーに対して、ニュートラルです。パソコンメーカーとしてのソニーとも、大人の関係を保っています。『PostPet』が、ソニーの『VAIO』にバンドルされていますが、あくまでもビジネス上の関係です。So-netのミッションは、『VAIO』を売ることではありません」

「So-netが、将来担うべき役割のひとつとして、家庭からネットワークへのゲートウェイとしての機能をはたす、というのがあります。情報家電、ホームサーバーなどのアプリケーションやミドルウェアを更新する、というような実用的な役割をはたすことが、将来のSo-netに求められている機能のひとつです。ただ、この場合でも、対象となる製品は、必ずしもソニーのものだけではありません」

----So-netがめざすものは何ですか。

「So-netとしては、まず、接続サービスとして立ち上げる、その次にコンテンツを提供する、さらにデータベースマーケティングを行なうことをめざしています。現状では、コンテンツの提供のところまでは、実現できています。企業向けのマーケティングサービスも、少しは始めていますが、本格的なものではありません。本格的なデータベースマーケティングを行なうには、100万人ぐらい会員が必要だと思っています」

----So-netといえば、やはりPostPetのヒットが大きいと思いますが、PostPetの今後の展開についておきかせください。

「もう、すでに発表していますが、ペットのキャラクターを増やします。また、キャラクターグッズも、販売していく予定です。すでにある“ポストペットパーク”のようなコミュニティーを拡充していく計画もあります」

----PostPetを、ゲームにしたり、アニメにするような計画はありますか。

「ゲームにする可能性はありますが、アニメにはならないと思います。PostPetのキャラクターは、みなしゃべれないので、アニメにはならないと思います。ユーザー層も、男性、女性ともに20~40歳が中心ですので、そこにアニメを持ってくるのは無理があります。ユーザーの年代を考えると、ゲームでも厳しいかも知れません」

----So-netのコンテンツで、PostPet以外でヒットしたものは何ですか。

「So-netには、80くらいのコンテンツがあって、その半分が有料です。8月に始めたサービスに、医療関係者向けの情報提供サービス“My Medipro(マイ メディプロ)”というコンテンツがあります。One-to-One機能を用いたサービスで、あらかじめ登録したデータをもとに、ユーザーひとりひとりに必要な情報だけを表示したり、メール配信してりするサービスです。こういったセグメントを絞り込んだサービスは、うまく行っているものが多く、このほかでは、格闘技の専門サイト“パンクラス Official Site”などがあります」
「また、PostPetのような、ネットワーク+アプリケーションというタイプのコンテンツでは、カラオケを楽しめる“KaraOK!”というコンテンツがあります。このほか、社内の資源を投入しているものでは、童話を紹介する“The Story Gate”というサイトがあります。これは、Web上でコンテンツを配信するタイプのものですが、100人くらいのクリエイターを投入しています」

----お話をお伺いしていますと、PostPetの成功体験が大きい一方で、PostPetに変わるコンテンツがまだ出てきていない、という印象を持ちましたが、その点はいかがでしょうか。

「当社の場合、コンテンツがヒットするかどうかは、コンテンツのプロデューサーの熱意にかかっている部分が大きいと言えます。PostPetは、サービスを始める前からプロデューサーやスタッフが魅せられる部分があって、それがヒットに結びついたと思います。PostPetについては、かなり普及しましたが、それでもまだまだ成長を見込める商品である、と思っています」

「ただ、So-netとしては、あくまでも“楽しめるSo-net”をめざしていますので、そういうコンテンツを新たに開発するような努力は常にしています。その基本線は、はずしたくないと思っています。So-netは、エンターテイメント系のコンテンツプロバイダーとして、ナンバーワンになりたいと思っています」

----ライバルは、どこになりますか。

「BIGLOBE、NIFTY SERVE、AOL・・といったところでしょうか。これらのプロバイダーは、エンターテイメントのコンテンツだけをやっているわけではありませんが、会員数が多く、提供するサービスが豊富です。5年後に生き残るプロバイダーは、5社ぐらいだと思っていますが、この3つは生き残っていると思います。So-netも、これらのプロバイダーと、互していけるようになりたいと思っています」

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