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【INTERVIEW】インターネットによる映像配信はビジネスに結びつくのか。キヤノンの田村秀行氏に聞く

1998年09月09日 00時00分更新

文● 報道局 浅野広明

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 インターネットを利用した映像配信は、どのような可能性を持ち、一方でどのような課題をはらんでいるのか。キヤノン(株)では、4月にホームページ“WebView Tokyo”(http://www.x-zone.canon.co.jp/WebViewTokyo/)を立ち上げた。

 WebView Tokyoはもともと、同社のVC-C3(コンピュータ制御可能なビデオカメラ)、PC、ビデオキャプチャーボード、サーバー用ソフトなどをセットにしたWeb映像配信システム『WebView/Livescope』(以下、WebView)を広く告知するために開設されたホームページ。ここでは、首都圏を中心とした約30ヵ所の街角にビデオカメラを設置し、各地の模様をライブ映像としてインターネットに流すという試みがなされている。ユーザーは、Webブラウザーからカメラの向きやズーム倍率のコントロールも行なえる。

 今回インタビューした田村秀行氏は、このWebViewシステムの開発プロジェクトのリーダーである。

田村秀行氏。キヤノン商品開発本部CyberMediaプロジェクトのチーフ。また、キヤノンが基盤技術研究促進センターと共同出資して設立した(株)エム・アール・システム研究所の研究開発ディレクターも兼務している
田村秀行氏。キヤノン商品開発本部CyberMediaプロジェクトのチーフ。また、キヤノンが基盤技術研究促進センターと共同出資して設立した(株)エム・アール・システム研究所の研究開発ディレクターも兼務している



---- WebView Tokyoを始めようとお考えになったきっかけは。

「キヤノンではこれまで、PCで制御できるビデオカメラや、それを用いた遠隔モニタリングシステムを開発、販売してきました。これをインターネットに応用したのがWebViewです。ところが実際には、WebViewはイントラネットで用いられることが多かったので、インターネットでの魅力的な利用法の紹介を兼ねて始めたのが、WebView Tokyoというわけです」

「WebView Tokyoは、目的を首都圏の街角をライブ中継することに絞ったホームページで、約50ヵ所へのカメラの設置を目標としています。道路渋滞や天気の確認など、多目的に利用されているようです。これまでに、トップページだけで約16万件のページビューがありました。全ページビューだと、その10倍以上になるでしょう。色々な雑誌で紹介されたことで、アクセス数も順調に増えています」

----人気のページは。

「新宿アルタ前やお台場など、人の動きが激しいところほど、アクセス数も多いようです。また、渋谷にあるTOKYO-FMのスペイン坂スタジオの映像も常に流しているのですが、ゲストによって非常に多くのアクセスがあります。人気アーティストのGLAYが出演したときには、回線がパンク寸前になったほどです。季節によって左右される場所もあって、夏休みには、湘南の材木座海岸が人気でした」

「また、WebViewを導入したホームページへのリンク集も設けていて、ここでは日本各地、世界各地のサイトが紹介されています」

WebView Tokyoのトップページ
WebView Tokyoのトップページ


(http://www.x-zone.canon.co.jp/WebViewTokyo/)


いかにして収益を上げるか

----このホームページから収益は上がっているのでしょうか。たとえば、広告収入は。

「アクセス数も多く、ひとりの滞留時間も長いので、広告を入れないかという話は広告代理店から来ていますが、まだそこまでは考えていません。あくまで、WebViewを買っていただくための広報用サイトであり、インターネットを利用したライブ映像配信にネットサーファーたちがどう反応するのか、新しいメディアの可能性を見極めるための実験と考えています」

「この種の実験でライブ映像配信が人目を引き、そこからECや実ビジネスに繋がればと思っています。まず、横浜の中華街や、原宿の竹下通りのページに、その商店街の特売情報を載せることで、どのくらいの効果があるのかなどを調査しています」

----広告収入以外についてはどうでしょうか。

「これから始めたいのは、WebViewのレンタルサービスです。システム全体を購入して常設するとなると費用がかさむため、期間限定で開催されるイベントなどでは特に、レンタルや設置サービスの要望が強いのです。これまでWebViewは、都市対抗野球、大阪国際マラソン、ルマン24時間レースなどのライブ中継にも利用されましたが、主催者にとって、ユーザーがカメラをコントロールできるというのは大きなセールスポイントだったようです。今後も短期イベントでの利用は増えそうなので、運用サービスつきのレンタルパッケージを検討しています」

ニュービジネスを探索して

---- WebView Tokyoを今後どのように展開されるお考えですか。

「WebView Tokyoの開設と同時に、“サイバーメディア・フォーラム”を設立しました。これはWebViewユーザー会といった趣きで、インターネットによる映像配信について勉強したり、情報交換したりする場です。WebViewの導入事例、ビジネスへの活用法、肖像権の問題などを討議しています。湘南ビーチFMと同期して実際に映像配信を行なっておられるジャーナリストの木村太郎さん、パソコンやインターネットの権威、石田晴久さんのお二人に代表幹事をしていただいています」

「効果的な導入事例や、熱心なユーザーの声が聞こえてくることで、WebViewを採用するホームページが増え、全国各地で魅力的な映像発信サイトが立ち上がることを期待しています。もっとライブ映像を見たいというユーザーは多いのに、情報発信側があまり熱心でないというのが実情です。まだ映像を発信する価値が見出せないのでしょう」

「動画を流すとなると負荷が大きく、沢山の人が同時にアクセスしてくる人気イベントだと、回線の準備やルーターの設定などが面倒だという声もあります」

----これら課題への対策については。

「通信料金が安くなることが最大の解決策です。WebViewの導入費用よりも、回線利用のランニングコストが馬鹿になりません。ただ、負荷の集中に対しては、同時に多人数に配信できる配送サーバーを用意していますし、設置の簡単なニューモデルの発売も計画しています」

「また、インターネット関連ビジネス全体の問題ですが、ユーザーは無料で視聴できるのが当然だという風潮ができあがってしまいました。情報提供側は、課金する価値のある魅力的なサービスや手軽な支払いの仕組みを提供するか、あるいはテレビと同様に広告収入を当てにして運営することが必要となるでしょう」

「いずれにせよ、われわれとしてはそういった利用に耐え得るシステムを開発してゆくと同時に、自ら率先してインターネットビジネスを探索していきたいと考えています」

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