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【INTERVIEW】ソニー『VAIO PCG-C1』ってどんなモノ? 開発担当者に直撃

1998年09月07日 00時00分更新

文● 千葉英寿、報道局 植草健次郎

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 ソニー(株)は、小型デジタルカメラを内蔵したA5モバイルノート『VAIO PCG-C1』を3日発表した。これまでのVAIOシリーズと大きく外観の異なる『VAIO PCG-C1』(以下VAIO-C1)は、どのようなコンセプトによって生み出されたのだろうか? ハードウェア面の開発を担当した同社モーバイルプロダクツ部課長の澁谷昇(しぶやのぼる)氏とソフトウェア面の開発を担当したモーバイルプロダクツ部統括係長の末吉隆彦(すえよしたかひこ)氏に、開発の経緯などを伺った。

『VAIO PCG-C1』
『VAIO PCG-C1』



パソコンらしくないパソコンを作る

----VAIO-C1は、従来のVAIOシリーズとはさまざまな面で異なっていますが、どのような経緯で開発されたものなのですか。

末吉「まず最初に、携帯できて、デジタルカメラを使った遊びができるものにしたいというのがありました。普通のパソコンとは違ったパソコンの新しい楽しみ方、使い方を提案できるようなものを作ろうと発想し、1年くらい前から開発を始めました。携帯できるという部分については、B5サイズの『VAIO PCG-505』シリーズがありましたので、これとバッティングしないようにするという点はひとつのポイントとなりました」

モーバイルプロダクツ部統括係長の末吉隆彦氏
モーバイルプロダクツ部統括係長の末吉隆彦氏



----普通とは違うパソコンということですが、それはどのようなコンセプトなのですか。

末吉「他にはない発想で、パソコンの将来を感じさせるようなものを作りたかったということです」

澁谷「パソコンとしての機能は十分に持っていて、ビジネスでも十分に使えるスペックのものですが、スペックよりもどういう使い方をするのかということです。そうした部分に重点を置いて開発しました」

モーバイルプロダクツ部課長の澁谷昇氏
モーバイルプロダクツ部課長の澁谷昇氏



----開発される際に苦労した部分はなんでしょうか。

澁谷「特にMOTION EYE(モーションアイ)というデジタルカメラ部分と液晶画面ですね。私は以前はハンディカムなどのビデオカメラを開発する部門におりまして、VAIO-C1からパソコンの開発に加わったのです。今回のVAIO-C1では、液晶画面の入ったトップパネルにあうサイズの小型のCCDカメラを新たに開発したり、従来にないサイズの液晶画面といった部分を新開発した苦労もありましたが、研究部門と共同して製品化にこぎつけました。液晶画面は表示が1024×480ドットという変形した比率である上に、精細な表示をするものなので、従来品が使えなかったのです」

----B5でなく、ほぼA5の現在のサイズになったのはなぜですか。

澁谷「タイピングのしにくいキーボードにはしたくなかったので、B5サイズのPCG-505と同じサイズのキーボードにしました。携帯できるように小型にすることを決めていましたので、キーボードのサイズから大きさが決まりました。最初にこのサイズが決まり、あとはこれに合わせて各部品を考えていき、このようなサイズになったのです」

「ビデオカメラ内蔵のパソコン」という発想は、ただ単なるアイディアではなく、ビデオカメラ開発に携わっていた澁谷氏のような人材がいたからこその、必然的な指向のように思える。また、小型CCDカメラや新開発の液晶画面などは、新たな要素技術を短期間のうちに開発している。基礎技術の研究も含め、ソニーの持つ幅広い技術力がうかがえる。

ハードウェアの新発想とそれを支える技術

----それではハード、ソフトの各特徴をそれぞれお伺いできますか。まずは澁谷さん、ハード面はいかがでしょうか。

澁谷「ハード面では、最大の特徴はやはりMOTION EYEです。MOTION EYEは、液晶画面のあるトップパネルと同じ厚さに収めなければいけないので、非常に小さな物にしなければなりませんでした。そのため研究部門に6分の1インチサイズのCCDを提案してもらい、これを使用しました。取り付け位置は、自分を写すとき視線を考えるとセンターになるわけですが、真ん中は液晶画面が有りますので(笑)、センターの液晶画面のすぐ上になりました。ただ取りつけるのではなく、自分とその向こう側を撮るということが自然と発想され、回転できるようにしました。まあ、ハンディカムなどでもやっていましたので、当たり前のようにすぐに思いついたんですけどね(笑)」

「画素数は27万画素と決して高画質なものではありませんが、手軽にスナップを取ったり、取り込んだ画像をメールで送信するような使い方を考えていましたので、画像のファイルサイズを大きくしないために、この程度の画素数にしました。また、カメラまわりについては、独立したキャプチャーボタンをキーボードの右上に設けてあります」

「筐体には、PCG-505と同様にトップパネルなどにマグネシウム合金を使用しています。筐体をキーボードサイズにして小さくしたせいで、放熱性が低下したのですが、金属材料を使うことで、だいぶ放熱性が向上しました。さらに、全体の熱分布を解析して、キーボードの右側面にファンを取りつけてあります。ファンはHi/Lowの2モードで動作し、内部の温度センサーと連動してモードを切り替えますので、効率もいいのですが、なんといっても静かですね。また、外付けのFDドライブがUSB対応のものとなっています。FDドライブはFDからの起動が可能なものになっています」

ハードウェアを補完する斬新なソフトウェア群

----続いてソフトウェア面ですが、いろいろと珍しい機能があるようですが。

末吉「MOTION EYEがついていますので、これをどのように使うのかをソフトウェアの形で提案しています。ハードウェアが行なっている提案をソフトウェアで補完するようになっているわけです。動画、静止画の取り込みを行なう基本的な機能はもちろんですが、このほかに新しいものとして『CyberCode(サイバーコード)』や『Sonicflow(ソニックフロー)』といった新機能を独自に開発し、搭載しています」

「CyberCodeは2次元のバーコードシステムで、VAIO-C1ではバーコードをカメラで認識させるとバーコードごとに関連付けてあるアプリケーションが起動する『CyberCode Finder』をプリインストールしています。例えば、名刺にCyberCodeを貼っておき、これを読み取らせると地図ソフト『Navin'You Ver.2.0 Lite』が起動して、名刺の相手の会社周辺地図を表示する、といったことができます。また、写真にCyberCodeを貼っておき、VAIO-C1内の動画データと連動させることで、“動かない写真”を動かすというようなこともできます。この場合、カメラが写真の部分だけをトレースして動画再生しますので、写真の写っている部分にだけ動画が表示されます。たとえば机に置いてある子供の写真にMOTION EYEを向けると、連動して「パパ、がんばって!」といったメッセージを再生するとか、CyberCodeに関連付けたデータだけ先に送っておき、後からはがきにCyberCodeだけを印刷して送り、バースデーメッセージを再生するといったこともできます」

「CyberCodeのバーコード表示は縦横の比率とコントラストさえはっきりしていればサイズに関係なく認識することができます。Tシャツにプリントしたり、ビルの壁に貼りつけるといったことさえも可能です。CyberCodeは24bit、約1600万通りのバーコードを作成できますが、VAIO-C1ではこのうち100万通りを使用できます。今後はVAIO以外のものへの応用も考えています」

CyberCodeを貼った名刺と写真。写真は人物の部分だけが動画と連動する。ちなみに写っているのは末吉氏のお嬢さん
CyberCodeを貼った名刺と写真。写真は人物の部分だけが動画と連動する。ちなみに写っているのは末吉氏のお嬢さん



「Sonicflowは、MOTION EYEに写る被写体に反応して音を出す自動音楽生成ソフトです。Sonicflowを起動するとウィンドウ内にランダムに動く複数のアイコン=サウンドオブジェクトが表示されます。MOTION EYEが何かをとらえると、それにあわせてポインターが移動します。ポインターとサウンド・オブジェクトが重なるとサウンド・オブジェクトに関連付けられたWaveファイルが再生されます。たとえば、VAIO-C1の前を人が通ると風鈴が鳴るとか、VAIO-C1の前で指揮を振る真似をすると音がかなでられる、といったことができます。いわば、音楽スクーリーンセーバーのようなものです。ウィンドウ内の背景ビジュアルとサウンドのデータは自作も可能ですので、これらを関連付けたより環境音楽的な楽しみ方もできます」

『Sonicflow』
『Sonicflow』



VAIO-C1はパソコンの分岐点!

----ズバリ、VAIO-C1はパソコンのスタイルを変えるのでしょうか。

末吉「アップルコンピュータ(株)の『iMac』などもそうだと思いますが、パソコンは性能を追いかけるだけではなく、どのように使うのかが製品作りの主眼になってくるのではないかと思います。そうした意味において、VAIO-C1は、性能を追求するパソコンと、使い方を提案していくパソコンの分岐点だと思います」

澁谷「VAIO-C1では、どこに行くにも、何に使うからという目的が特になくても持ち歩いて、そのとき思いついたことを、そのときの風景や自分のスナップとともにメールにするような、文字だけにとどまらない新しいコミュニケーションの形を提案したいと思っています。財布のようにいつでも持ち歩いてほしいです」

 インタビューの中で筆者は、VAIO-C1が良い意味で「大人のおもちゃ」に仕上がっていて、思わず欲しくなるような、物欲をかき立てる製品だと感じた。
 VAIO-C1は、既存のものを組み合わせたように見えながら、それを実現するためにさまざまな要素技術を開発している。こうしたことを可能としているのは、ハードやソフトの困難な要求に対して、研究部門が対応できるだけの蓄積を持っているからだろう。また、今回のVAIO-C1開発には50名弱が関わっているそうで、研究部門をはじめ、各部門に十分な人材や資金を投入していることがうかがえ、ソニーの企業体力の強さを感じさせた。

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