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【INTERVIEW】デジタルハリウッド代表の杉山氏、「大きな使命感を持って」DHWを運営

1998年09月02日 00時00分更新

文● 報道局 西川ゆずこ

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 デジタルコンテンツ制作のクリエイターを養成する“マルチメディアスクール”を運営するデジタルハリウッド(株)は、東京、横浜、大阪、米国のサンタモニカ、福岡と相次いで拠点を増やしている。今年、累計卒業生が5000人を突破。今年の10月に“マルチメディアスクール”開校5年目を迎えるデジタルハリウッド(株)校長兼代表の杉山知之氏に“マルチメディアスクール”運営を通して見る、デジタルコンテンツ業界の動向について伺った。

デジタルハリウッドの杉山知之代表 デジタルハリウッドの杉山知之代表


----“マルチメディアスクール”に通う生徒の特徴は。

「平均年齢が高いということですね。だいたい26、27歳ぐらいじゃないでしょうか。大学を卒業してから通う人、社会に出て、1年から2年ぐらいたって、それで会社を辞めてくる人も多いです。恐らく、会社のお金で通っている人は、100人に1人、いや、200人に1人ぐらいですね」

卒業生の7割がコンテンツ系、残りの3割はマルチメディアに就職

----カリキュラムの特徴は。

「生徒の平均年齢が高いということもあって、2年間かけて勉強して、それから就職なんて長すぎるんですよね。いかに、短い時間でノウハウを習得できるかを目標に、3ヵ月の“短期Webコース”、6ヵ月の“総合Proコース”、1年間の“本科/専科”を開講しています。常に最新の情報、動向、新しいスタイル、業界の作り方、生徒の意見などを考慮してカリキュラムを編成しています」

「当校は、世間的にはCGを教えるところとして有名ですが、『Adobe Illustrator』、『Adobe Photoshop』、『Adobe Premiere』、『Macromedia Director』、『Strata Vision』などのソフトを扱うMacのコースも人気です。現在当校に通っている生徒のうち半分以上は、Macコースを受講しています」

「卒業生の7割がコンテンツ系、残りの3割はマルチメディアに就職しています」

「ソニー(株)やセガ・エンタープライゼス(株)などへの就職を希望する人、ゲーム作家希望はあまりいないですね。映像という意味では、セガのDreamcastは、インタラクティブムービーというスタンスでゲームを作成することができますから、興味を持っている生徒はいると思います」

「映像という側面から見ると、米国が本家本元にですが、当校の卒業生が米Digital Domain社に採用された実例が出ましたので、目前の目標になったのではないでしょうか」

『3D Studio MAX』で作品を作成するSOHOクリエイターを視野に

----CGコースで扱っている製品は。

「加ソフトイマージュ社の製品『SoftImage』。このソフトは、セガですとかゲーム系の業界で好んで使用されています。ほかに、米オートデスク社の『3D Studio MAX』、Alias/Wavefrontの『Power Animator』を扱うコースも開講しています。そして、こちらは業界向けのソフトになりますが、10月から米Side Effects社の3DCGアニメーションソフト『Houdini』を扱う“O2 3DCG アニメーション『Houdini』総合Proコース”を開講します」

「今後は、『3D Studio MAX』を扱うコースに重点が移行していくかなと思っています。理由としては、ユーザーに支えられているということ、『SoftImage』に比べて敷居が低いということですね。『3D Studio MAX』ですと、ノウハウを取得してから、SOHOや自宅で作品を作成することも可能です。今後、自宅で作る作家やアマチュア的作家が増えるのではないでしょうか」

米国校では日本人の生徒が4割、米国人の生徒が6割。

----米国のサンタモニカに“Digital Hollywood The Multimedia School USA校”(DHIMA)を'98年5月に開校したわけですが、開校に至る経緯は。

「日本人は決して想像力に欠けているわけではないと思いますので、ちょっと英語がしゃべれて、それで作品が面白ければ十分世界に通じると思います。そういった意味でも、DHIMA校は新しい道を開いていると自負しています」

「上映中の映画『GODZILLA』、そして映画制作が発表された『鉄腕アトム』のように、日本産、日本のアニメーションの原作が、米国で映画化されるケースが増えていくと考えます。米国では、日本のアニメは人気がありますからね。そういった観点からも、日本語、英語がしゃべれて、CGが作れる人材は今後、重要になっていくと考えています」

「面白いことに、DHIMA校では、日本人の生徒が4割、米国人の生徒が6割ですね」

「米国のCG分野での採用制度は、デモテープを送って、それでインターン制度で採用してもらってという形です。でも、最近米国のこの業界では爆発的に人手が必要になって、人手不足なんですね。この制度ではなかなか必要な人材が集まらないということで、最近になって、専門的にデジタルコンテンツ制作のクリエイターを養成する学校がいくつか開校しています。そういった意味でも、日本人だけでなく、米国人にも受け入れられているのだと思います」

11月に“DIGITAL HOLLYWOOD The Internet School”を開校

----今後の予定は。

「今年の11月に“DIGITAL HOLLYWOOD The Internet School”を開校します。立ち上げコース“Webクリエイター総合Proコース(6ヵ月)”に続き、来年の4月には“本科/専科コース”(1年間)も開講する予定です。当校のアドバイザリーボードの一人、Infoseekを運営する(株)デジタルガレージ代表の伊藤穣一氏などの協力を得て開校します。当校の特徴は、一人にWindowsとMacintoshの計2台の環境で作業することです。また、最低『Internet Explorer』と『Netscape Navigator』の主流ブラウザーで学ぶことも特徴です。この両プラットフォーム、両ブラウザー環境で学ぶことによって、両者の相違点を知った上で、“Webの仕組み”をデザインする人材を育成することに意義があります」

----最近のデジタルコンテンツの動向は。

「当校には、求人票がありますが、面白いことに、最近ではゲーム系、CD-ROM系を抜いて、広告代理店、インターネット関連の求人が多いですね。ちょっと前まではCD-ROM系が多かったのですが、最近ではめっきり減っています」

「要するに、Web関連のクリエイターの需要が増加しているということですよね。そういった流れを踏まえて、“DIGITAL HOLLYWOOD The Internet School”を開校することにしました」

----海外では、クリエイターのサポート体制がありますが、そのような動きは日本ではあるのでしょうか。

「CGソフトの『SoftImage』にしろ、映画『CUBE』*1にしろ、政府の支援があってこそ、世の中に広まったものです。コンテンツの商売は想像力が勝負ですよね。でも、担保がない。だから、日本の銀行はお金を貸さない。コンテンツ業界をなんらかの形で政府が支援しなければ行けないと思います。優遇政策をとるべきです」

次世代の人材を育てる

----そうしますと、DHWができることは。

「当校は、表面的にはデジタルクリエイターを養成するためソフトの扱い方を教える学校ですが、われわれとしてはもっと大きな使命感を持ってやっているつもりです」

「授業、セミナー(*2)を通じて、今の子を支援することだと思っています。今の子は、スーツを着て、会社に行って、ということを望んでいませんから。そうすると、この時代にあったニーズは、デジタルコンテンツしかない。デジタルコンテンツを通して、時代のニーズを満たしたいですね。たとえ、CGを学んで、CGの会社に入って、数年後辞めてしまっても、一度深く、専門的に入り込んだデジタルコンテンツの世界、考え方は生き残っていくと考えています。そういう子が世の中に増えていけばと思っています」

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