【COMMENT】「いよいよ成長戦略の段階がスタートする」－－アップルコンピュータ（株）、原田永幸社長（29日のiMac発表イベント壇上にて）

　アップルコンピュータ(株)は、8月29日、同日午後3時からのiMacの国内出荷開始に合わせ、報道関係者や販売代理店、ユーザー代表者などを集めて、iMac発表イベントを行なった。このイベントにおける同社原田社長の発言を中心にレポートする。

　司会進行を務めたTBSの鈴木順アナウンサーの「歴史的瞬間にようこそ」の声で始まったオープニングイベントは、iMacの発売を「単なる新製品の発売ではなく、新しいストーリーの始まり」と位置づけるものである。凝った演出による“セレモニー”という言い方がピッタリだった。

　壇上に上がった原田永幸社長は、まず、1年前にスティーブ・ジョブズ氏が「アップルらしさ」の復活を宣言して以来、“グローバルスタンダード”の名のもとに具体的に取り組んできた変革の内容を紹介。製品ラインアップの見直しから、販売店政策の建て直し、サービス/サポート/物流インフラの再構築など、すべて順調にこなしてきたと胸を張った。

　特に物流インフラの再構築によって、シンガポールで24時間体制で生産されたiMacを、毎日、注文を受けた数だけ日本に出荷し、各流通販売網に直送するシステムが整えられたことを強調。これにより、日本での荷揚げ後の在庫をアップルコンピュータが抱えることがなくなり、間接コストを大きく削減することが可能となったという。原田社長の「物流インフラの構築においては、デルがライバル」という言葉に、アップルの物流インフラ再構築に賭ける意気込みが伝わってくる。

成長戦略のスタートを告げる原田社長。iMacのツートンカラーの一つ、アイスホワイトを意識したのか、青みの入った白のカジュアルウェア。soft wearを見ればハードウェアの狙いも見える？

　そして、これからは「いよいよ成長戦略の段階がスタートする」と宣言。成長戦略へ向けてのビジネスパートナーとして、ソリューション主導でiMacを販売する島村楽器、9月4日からMacintosh版Officeをリリースするマイクロソフト、ATOK12の開発意向表明を行なったジャストシステムなどが紹介された。お祭り好きのマイクロソフト、古川会長が、Yシャツを脱いで、その下に着ていたアップルとマイクロソフトのロゴをあしらったTシャツを披露して喝采を浴びると、原田社長もつい「今度は私がマイクロソフトの発表会に出席させていただきたい」と悪ノリする一幕も。

アップルとしのぎを削り続けながらMacintoshファンでもあり続けた古川氏はいってみれば面背腹従。太っ腹の氏の雄姿にMac OSのマークが映える。Yシャツの下に着ていたということはbasic soft wear？

　最後に原田社長は、「かつてマーケットシェアが第2位という時代があった。そのときの自信を再認識したい」と発言。目標数字を具体的に挙げない慎重な口調ながら、そこには、iMacから始まる“成長戦略”への強い自信が漲っていた。

スーツ姿も似合う原田社長。さきほどのカジュアルウェアがコンシューマー市場、スーツがビジネス市場を取る意欲の象徴と解釈するのは、うがちすぎか

　この後は、午後3時からのiMac販売開始の模様を、TBSのネットワークを使って全国から中継。iMac購入直後のユーザーに直撃インタビューをしたり、大阪でiMacを購入したユーザーが東京の原田社長に質問したりと、イベント一色となった。全国の販売店に行列するユーザーを見て、ほっとした感じの原田社長だったが、レポーターの「どこに飾りますか？」の発言には、すかさず「飾らないで使ってください」と念を押す場面もあり、一定の盛り上がりを見せたものの、アップルのメッセージが意図通りに伝わっていないかもしれないという不安な面も覗かれた。

東京、大阪、福岡の3元中継｡ASCII24では、東京・秋葉原、大阪・日本橋、福岡・キャナルシティの3つの街の様子をそれぞれ別掲でレポートしている

　8月29日から日本での出荷が始まったiMac。17万9800円という思いきった価格設定や、テレビコマーシャルを始めとする大規模な広告戦略などなど、アップルコンピュータのiMacに賭ける意気込みには、並々ならぬものがある。原田社長は、雑誌のインタビューで「年内20万台」という目標を口にしているが、これが今後のアップルの成長戦略の試金石となることは間違いない。