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【INTERVIEW】ビースタジオ小川氏、「DTP業界は変化のとき。総合的なプロモーション活動で対応する」

1998年08月13日 00時00分更新

文● 報道局 小林久

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 現在、DTP(DeskTop Publishing。印刷業界ではDeskTop Prepressとすることが多い)業界は変化の時だという。従来の単なるデータの出力や、大部数の印刷用の製版を視野に入れた仕事は、減少しているという見方もある。今回は名古屋にあるブラザー工業(株)の直営ショップ、ビースタジオの統括店舗責任者、小川剛(おがわつよし)氏にお話を伺った。変化の時を迎えつつある、DTP業界の現状とその中での同社の取り組みが主な話題となった。

ビースタジオの統括店舗責任者、小川剛氏ビースタジオの統括店舗責任者、小川剛氏




●DTP業界は変化の時

----今、DTP業界で起こっていることについて簡単に教えていただけますか。

「一言で言えば、変化の時を迎えていると言えるでしょう。受け取ったデータの装飾や出力を行なったりと、大部数印刷のための製版を目的にした従来の方法が少しずつ変化してきています」

「現在のトレンドとして、大型出力機を利用し、大判の印刷物を数枚印刷するニーズが高まってきています。宣伝ポスターや展示用パネルなどがそれで、小部数ながら確実な需要があります。出力した作品にラミネート加工や裏ぶちの加工などを行なって、イベントや短期間の展示会、セールなどで利用するケースが多くなってきています」

「また、ビデオレンタル店や車販売店のセールなどでも、ポスターやパネルの定期的な入れ替えがあるため、似通った需要があります」


●顧客のニーズに技術が追いついた

----従来の製版用途から、ディスプレー(展示)用途にトレンドが変化してきた要因は何でしょうか。

「プリンターやRIP(Raster Image Processor)(*1)の性能向上が挙げられます。最近では、A0判用紙以上の幅(54インチ以上)の紙を出力できる“ワイドフォーマットカラープリンター”が普及してきています。長さの制約はありませんから、このプリンターを利用すれば、バナー(インターネットのバナーのことではない。広告などに用いられる横長の印刷物)なども紙の継ぎ足しなく、1枚で出力できます。また、画質のほうも上がってきていて、ディザリングや発色の悪さによる見栄えの問題も大分改善されてきています」

「技術の進歩によって、従来やりにくかった用途に対応できるようになってきたわけです。加えて、DTPでは小部数でも比較的安価に印刷できますから、コスト面で魅力的です」

*1:RIPとは、パソコンからPostscriptで記述されたページデータ(ベクトルデータ)を受け取り、ラスターデータに変換してイメージセッターに送る装置。イメージセッターは、印刷用の製版フィルムや印画紙を出力する装置である。

●総合的なプロモーションの道を模索

----ビジネススタイルも変化してくるでしょうね。

「ええ。従来のデータ出力だけでは、商売が成り立たなくなってきているのかもしれません。単なるデータの出力ではない、付加価値の創出が必要になってきています。私どものショップでは、制作のコンサルティングのようなことも行なっていますが、DTPを中心に、プロモーション活動全般のサポートが行なえないかと方向を模索中です」

----具体的にはどんなことをなさっているのですか。

「ポスターや名刺から始まって、ビデオ、インターネットなど、幅広いコンテンツ制作や、それを視野に入れたプロモーション活動のプランニング、またその全面的なサポートです。当然、コンサルティングやクリエーションなどもその中に含まれます。ちょっとした広告・宣伝活動をやってみたいのだが、広告代理店を通すほど大規模でない。そんな展示会やイベントの企画・宣伝に協力できればと考えています」

「また、ブラザー工業の開発部門は、MPEG2のエンコード技術を持っていますから、その辺の利点を生かし、持ち込みビデオの編集や複製のほか、MPEGへのエンコードやDVD-VIDEO化なども行なっています」

----総合的なプロモーションということですが、どの辺りから攻めていくのですか。

「現在、その取り組みについては、社内向けの製品を中心に実験中です。社内で新しい製品を発売する場合の展示会のコーディネート、コンテンツ制作などを請け負っています。この実験によってある程度の成果が得られたなら、事業を拡大し、他社向けにもサービス提供を行なっていきたいと考えています。単なるDTPの出力やコンテンツ制作ではなく、総合的なプロモーション活動を、弊社は他社より早く視野に入れているという自負があります。自社で抱えているDVDなどの技術を有効に生かしながら、新たな方向性を探っていきたいと考えています」

 ユーザーの窓口として、ブラザー工業のアンテナショップ的な役割を果たしていきたいと語る小川氏。マルチメディア技術との融合の中で、どんな表現が可能になっていくのか。今後の取り組みが楽しみだ。

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