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「マスマーケティングだけでは、対応できない」ワン・トゥ・ワン・マーケティング協議会事務局、和田昌樹氏に伺う

1998年08月06日 00時00分更新

文● 報道局 篠田友美

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 情報技術の進展は、マーケティング業界にも新風を吹き込んでいる。従来通りのマスマーケティングでの広告は本当に効果的で効率の良いものなのだろうか。マルチメディア時代の到来にともない、最終的にもたらされる利益の視点からマーケティングの見直しがなされている。'97年4月に発足した“ワン・トゥ・ワン・マーケティング協議会”を運営する(株)ダイヤモンドの広告本部長、和田昌樹氏にワントゥーワンマーケティングについて伺った。

ワン・トゥー・ワン・マーケティング協議会を運営するダイヤモンドの広告本部長、和田昌樹氏
ワン・トゥー・ワン・マーケティング協議会を運営するダイヤモンドの広告本部長、和田昌樹氏


----“ワン・トゥ・ワン・マーケティング協議会(OTOMA)”とは、どのような活動をしているのですか。

「ワン・トゥ・ワン・マーケティング協議会(OTOMA)は、'97年4月に発足した非営利団体です。情報時代が到来し新しいパラダイムが生まれています。この時代にふさわしい企業文化を再構築し、新たな市場と競争を創造するという目的で設立されました。井関利明慶應義塾大学教授を会長に現在約50の企業、団体が加盟しています」

「ワントゥーワンマーケティング実施のための情報リテラシー能力、コミュニケーション技術向上のためのケーススタディを紹介する“セミナー活動”。ワントゥーワンマーケティングを実施する際のプログラムに役立てる“ケース研究”“調査活動”。ニューズレターを発行する“広報活動”。以上4つが主な活動です。“セミナー活動”は年間6~10回程度ですね。特に実践的なワントゥーワンマーケッターの育成、ケーススタディの蓄積、教育プログラムの作成を目標としています」

----ワントゥーワンマーケティングとはどのような概念なのでしょうか。

「情報技術の発展により、製造業において、顧客のニーズにきめ細かに応えられる生産手段が確立し、生産の個別化が行われるようになってきました。市場はメーカーが唯一無二の価格を付けて勝手に市場に放り出す“一物一価”型から脱却しつつあります。顧客が欲しがっているものを顧客の好みのオプションを聞き入れて製造する“百物百価”型あるいはまったく同じ商品でも売買のシチュエーションや顧客のブランドロイヤルティーによって値付けが変わる“一物百価”型が出てきました。従来通りのマス・マーケティングだけではもう対応しきれない。そこでインターネットの双方向性を利用するワントゥーワンの発想が生まれました」

 和田氏は、基本となる7つのキーワードを挙げて、概念をわかりやすく説明した。
 
「購買履歴や趣向などについて顧客と対話し“学習関係”を築くこと。個別対応で顧客のニーズを掴み“顧客差別化”を図ること。“顧客シェア”で顧客を囲い込み自社製品をリピートしてもらうこと。顧客を差別化した上で、商品やサービスを趣向に合わせて提供する“カスタマイゼーション”。データベースを構築し“顧客マネージャー”を配置し、多数の顧客との対話を維持すること。顧客ニーズのスコープを広く捉え、最終的なマーケティングコストを下げる“限界効用逓増”。顧客との長期安定的な“生涯価値”を築き、一度獲得した顧客を確実に満足させること。以上がワントゥーワンにおいて重要な7点です」

「獲得顧客との良きリレーションシップを保ち、顧客のロイヤルティーを高め、最終的に口コミで新規顧客を呼んでくれるという宣伝マンに成長してもらうこを目指します。この顧客と手を携えての成長というのがマスにはなかった視点です。従来の新規顧客開拓やブランドロイヤルティー構築を目指すマスマーケティングとは異なります。マスでは見えなかった顧客ひとりひとりの顔が見える時代になってきたのです」

----ワントゥーワンでの成功事例はありますか。
 
「ワントゥーワン先進国である米国のあるスーパーでは、折り込み広告にクーポン券を付けるというサービスを廃止しました。代わって顧客の購買履歴に応じて、貢献度別のサービスを提供するというシステムを導入しました。それだけのおかげとは言いませんが、米国の食品スーパーの純利益率の平均は'87年の0.47%から’92年の1.2%まで上昇しました」

「日本は米に比べ、10年は遅れています。最近の日本では、Freequence Service Pointが流行っています。例えば航空会社では利用回数や距離に応じてポイントをカードに溜めると特定の特典が付くというサービスを実施しています。日本では単調にただインセンティブポイントを与えるだけです。米国は違います。購買貢献の高い顧客では、オフシーズンだけでなくオンシーズンも特典の対象に入れるなど細やかです。購買履歴とサービスとを組み合わせたCustomer Specific Marketing(顧客識別マーケティング)を行っているのです」

----OTOMAが主導となった日本での成功事例はありますか。

 「ある食品会社では、来店した顧客の累積貢献度に従い、個々の人の盛りの量におまけをつけられないか検討しています。ファーストフードでは、個々の客の好みの調味料や調理法のデータを構築して、個々の人に対応してサービスしています」

 「米国ではGMが始めており、日本でもある自動車会社が検討しているサービスがあります。顧客の選んだ車種を顧客の選んだ色にし、顧客の姿の車体への写り込みをCGで合成します。これをオンデマンドプリンティングという技術を使って、この世に一部しかないカタログにするのです」

 「米国では、複数メーカーの多数の車種を扱うメガディーラーが普通になっていますから、この個別カタログが威力を発揮します。他社製品も含めて多数の製品が存在するという顧客の立場を考えた販売方法やサービスを模索しているのです」

 「'99年には非接触で反応する“ワントゥーワンレジスター”が発売される予定です。客が来店したときに顧客のIDカードを非接触で読み取りレジの画面に“接客を嫌う”とか“詳細な説明を求める”といった顧客の接客の嗜好や購買嗜好を表示します。これにより客に嫌な想いをさせないように応対できます」
 
 「従来のマスとワントゥーワンをミックスさせたマーケティングがこれからの主流となっていくでしょう」

    問い合わせ先:03-3504-6555

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