このページの本文へ

【INTERVIEW】アンテナハウス小林社長「PCソフトが成功するには、10年は必要」

1998年08月06日 00時00分更新

文● 報道局 浅野広明

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷



 アンテナハウス(株)では現在、PC用パッケージソフトとして3本の製品群をリリースしている。

 まず、データ変換ユーティリティーソフト『リッチ・テキスト・コンバータ』。一太郎、Microsoft Word、OASYSなど主要ワープロソフトや、Excel、Lotus 1-2-3などの表計算ソフトはもちろん、ワープロ専用機との間のデータ交換を可能にするソフトである。文字サイズ、飾り、罫線、文書イメージなどを忠実に再現するという。同社ソフトの売上本数のうち、3分の2を占めるという主力商品だ。

 次に、ファイルビューアソフト『自在眼』。PCにアプリケーションがインストールされていなくても、そのファイルが表示、印刷できる。ワープロ、表計算、画像、音声、圧縮などさまざまファイルに対応。先月発売されたIBMのThinkPad235にもバンドルされている。

 最後に、SGML/HTMLタグ付けソフト『Tagme』。ワープロソフトやワープロ専用機の文書ファイルをSGMLまたはHTML形式に変換するソフト。9月21日に発売する新バージョンでは、XML文書にも対応するほか、SGML/XML文書の加工、編集が可能な『TagEditor』をワンパッケージ化する。

 今回、同社の小林徳滋・代表取締役社長にインタビューした。小林氏は同社製品の開発経緯、新バージョン情報、今後の展望などについて語ってくれた。

9月21日発売の『Tagme98+TagEditor』。Windows 95/98/NT4.0対応で、価格は4万4800円
9月21日発売の『Tagme98+TagEditor』。Windows 95/98/NT4.0対応で、価格は4万4800円



----3つの製品群には、すべてワープロソフトが絡んできます。

「ワープロソフトに関していえば、官公庁はかなり大きなマーケットです。うちのユーザーも官公庁関係が多いですね。今、官公庁ではSGMLを公式文書に採用しようという動きがあり、それに合わせて、申請書を官公庁に出す生命保険業界などでもSGML化が進められています。これらの動きには、ソフトメーカーも注目していて、うちも、『リッチ・テキスト・コンバータ』の次期バージョンで“特許庁電子出願対応HTML”(以下、特許庁HTML)を、『Tagme』の次期バージョンでも特許庁HTMLや総務庁の“電子公文書SGML”を標準でサポートします」

----その特許庁HTML、電子公文書SGMLというのは。

「これがまた厄介な言語です。たとえば特許庁HTMLは、HTMLとはいうものの、改行には<p>タグではなく<br>タグを使う、というような特殊な制約が課せられています。特許庁はもともと、特許庁指定の専用端末で作成した書類のみ受付けていたのですが、その端末がなかなか普及しないので、今年に入ってWindows 95対応の通信ソフトを無料配布し始めました。その通信ソフトは、特許庁のコンピューターにアクセスし、特許データベースを引き出したり特許申請をしたりできるというもの。そして、そこで使用されているのが、特許庁HTMLというわけです」

「電子公文書SGMLでも標準の仕様が改変されています。例を挙げると、SGMLの文書構造を定義するDTD(Document Type Definition)の世界共通通し番号が、電子公文書SGMLにはありません。そのため、通常は通し番号で指定できるSGML文書の構造が、指定できないのです。つまり、すべての文書に毎回、膨大なDTDを付加しない限りSGMLに変換できないということで、通常のSGMLタグ付けツールなどは使えません」

「しかし、官公庁に導入するワープロは、この電子公文書SGMLに対応していなければ入札の対象にもならないのです。まあ、特許庁HTMLにしろ、電子公文書SGMLにしろ、弁理士事務所や生命保険業界などで、ワープロソフトから変換せねばならないという新たなニーズを生んでいることは事実なのですが」



----『リッチ・テキスト・コンバータ 98』を9月3日に発売されますが、新バージョンの特徴は。

「まずWindows 98に対応したこと。そして、先ほど述べた特許庁HTMLやWord 98など新たなフォーマットに対応したことです。リッチ・テキスト・コンバータはどうしても頻繁にバージョンアップしなければいけません。新しいソフトにいかに素早くキャッチアップしていくかが付加価値だと考えています」

----更新したデータのみホームページ上にアップロードするということは考えないのですか。

「確かにそういうニーズはあるでしょうが、うちのユーザーのうち、ホームページを閲覧できるのはまだ半分。また、自分でダウンロードしたりインストールするよりも、ソフト丸ごとバージョンアップしたものを買う方が、ユーザーからしてもスッキリとしていいんじゃないかと思います」

----自在眼についてはバージョンアップの予定はありますか。

「今年末にバージョンアップの予定で、これは大幅に機能強化します。データベースビューア、表ビューア、Unicodeビューアなどを追加する予定です。現状の6900円では安いから、少し値上げしようかな。自在眼の利用法でいえば、今後は電子メールへの適用が増えていくでしょう。添付ファイルを見るのにわざわざアプリケーションを立ち上げる必要はないし、アプリケーションをインストールする必要もない。ただクリックすればいいだけ。今後伸びるソフトだと考えています」

「しかし、インターネットに関しては、皆さん著作権に対する認識が低いですね。実は自在眼をホームページ上に無断でアップロードしている人がいると聞いたので調べてみると、全部で133人も見付かりました。全員に警告を出しましたよ。130人は止めたのですが、3人はどうしても止めないので、頭に来て麹町警察署に行ったこともあります。彼らの住所や証拠が必要だとか、彼らを罰することによってわれわれが得られる利益がほとんどないとかで、警察は何もしてくれません。結局、民事にするしかないんですかね。でも、著作権法で送信可能化権が正式に認められたという追い風もありますから、断固とした対応をとりますよ」

----3本の製品群のほかに、新しいカテゴリーの製品計画などは。

「予定はありませんが、研究はしています。やはり新しいOSにも注目しています。OSが変わるとアプリ市場も変わるわけですから、その変わり目を逃してはいけません。あと、海外進出も今後必要となってくるでしょう。やはりPCやソフトにバンドルするといっても、単価からいえば安いものです。日本だけではなかなか利益につながりません。また、ソフトのオリジナルは海外製の場合が多いので、根っこに行かねばという気持ちもあります」

「パソコンソフトは簡単にはできない、というのがこれまでやってきた率直な感想です。リッチ・テキスト・コンバーターの初版が'90年。最初の3年間はまったく売れませんでした。4年目くらいからやっと売れ出して、Windows 95の発売もあって、何とかここまで来たという感じ。売れないからといってすぐ開発をストップするのは駄目だと思います。Windowsのようなソフトだって、金を払う気になるWindows 3.1が出るまでに、10年かかっているわけです。やはり10年はかかるとみた方がいいでしょう」

    http://www.antenna.co.jp/

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン