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【シリーズSFA】日本のSFA市場はどうなる?日本シーベルの熊坂憲二社長を直撃

1998年08月05日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司/取材協力 (有) アースウェア代表取締役社長 枷場博文

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 SFA(Sales Force Automation)は、コンピューター技術を利用して営業部署の効率を向上させようという概念。典型例として、現場の営業マンの携帯型パソコンなどと社内情報システムとをインターネットで結び、情報やり取りする営業支援の仕組みがある。訪問先の顧客に対してその場で見積書を作成したり、製品情報を提示したりできる。一方で、商談の状況や顧客情報を即座に社内に送信することが可能になる。一種のモバイルオフィスを構築して、営業効率を上げる。

 ツールやネットワーク環境が進化するにつれ、その概念も変化してきたが、大まかにいえば、アメリカでは'90年ごろから盛んに企業に導入され始めた。日本でも2年ほど前から急速に広まりつつある。

 今回は、'93年の創立以来、急成長を続けている米シーベル社の日本法人である、日本シーベル(株)の熊坂憲二代表取締役社長を直撃した。同氏は'96年5月に渡米し、複数のSFAベンダーを訪れる。そこでシーベル社の創立者でCEO(最高経営責任者)であるThomas M.Siebel(トム・シーベル)氏と出会った。帰国後の'97年2月に日本シーベルを設立し、現在に至っている。同社は現在、日本電気(株)、日本IBM(株)などとパートナー契約を結び、ライセンス販売を行なっている。



----シーベル社以外にもアメリカにはSFAベンダーが多数ひしめいていますが、その中からなぜシーベルを選んだのですか。

「アメリカにはシーベル社以外にも、オーラム社、バンティブ社などSFA市場で成長しているベンダーがありました。複数のベンダーをまわりましたが、どこへ行っても『うちの製品が一番優れている』といわれました。しかし、私は、売上を左右する最も大きな要素はその企業のマネジメントであると考えています。シーベルは、アメリカのSFAベンダーとしてはやや後発である'93年の創立ながら、黒字でした。そして最大の理由は、トム・シーベル氏のトップとしての経営戦略と個性的でアグレッシブな人物に将来の成長を予感したことです」

----主力製品である『SSE(Seibel Sales Enterprise)Ver 3.0J』の引き合いはどうですか。

「非常に好調です。日本電気(株)と提携し、1000人規模の営業部隊に適用したのをはじめとして、多くの引き合いがあります。また、日本のマイクロソフト(株)の営業部門への提供も決定しています」

「米シーベル社の主要な顧客は金融業ですが、厳しい金融事情の影響もあり、日本では製造業や製薬メーカーの営業部隊が主なユーザーでした。しかし現在、ある大手地方銀行に提供することがほぼ決まっています。これを足がかりに、金融業界にも提供していきたいと考えています」

「大手製薬メーカー2社とも話を進めています。また、通信、ハイテク業界にも積極的にアプローチをかけていきます。通信業界では国際デジタル通信(株)が、提案からわずか8週間で導入を決めた例もあります」

----今後の戦略を教えてください。

「現在のSSE Ver3.0Jをバージョンアップし、Windows 98に対応させたSSE98を今月末にリリースします」

「また、今年3月に米シーベルがSFAベンダーの米スコーパス社を買収しました。シーベルの中核がSFAシステムなのに対し、スコーパスでは顧客応対を行なうコールセンターや、保守サポート要員を支援するシステムが主力です。今後は両社のシステムアーキテクチャーやデータモデルなども統合していく予定です。現行ユーザーには、統合製品へのマイグレーションパス(移行手順)を準備する計画です。この統合作業を今年の秋頃までに終了させ、今年中に『SSE99(仮称)』としてリリースしたい」

「今年度は25~35億円、来年度は40億円を全体の売上目標にしています」

----今後のSFA市場について、どうお考えですか。

「現在のSFA市場における競争は沈静化する方向に向かい、合併などによって淘汰されるベンダーも出てくるでしょう。アメリカではこの動きがすでに始まりつつあります」

「今後は、日本の市場にも大手ERP(Enterprise Resource Planning:財務、人事、生産管理など企業の基幹業務の情報をサポートする統合業務ソフト)ベンダーが進出してくると予想しています。これらのベンダーとの競争に勝ち残れるか否かがポイントになります」

 熊坂氏は実際にノートPCを使って、デモを行なった。デモに用いたのはSSE Ver3.0Jの金融業界の個人顧客営業担当者向け製品である。担当している顧客の個人情報や家族情報などをデータベースを通じて入手する様子を実演して見せた。

 同社およびNECなどのパートナー企業では、SSEの営業担当者が実際に同システムを使っている。自らをユーザー事例として顧客にアピールするという。

 同氏は「自分が実際に使っている製品ですから、説明もきめこまかいところまで行き届き、熱意も自然に相手に伝わります。つまり、SSEユーザーが新たなSSEユーザーを開拓していくのです。非常に効率的で、ロスの少ない方法だと思っています」と語った。急成長を続ける同社のノウハウの一端を垣間見たように思う。

    日本シーベル03-5469-3811(本社営業本部)

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