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【Mail Interview】 有料電子メールサービス配信の『でじぱぶ』に問う

1998年08月04日 00時00分更新

文● 報道局 篠田友美

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 (有)ブレインは、6月13日から有料電子メールマガジン発行システム『でじぱぶ』を開始した。発行者がブレインに契約料を払って電子メールマガジンを配信してもらう。一方、読者からの購読料を代わりに徴収し、発行者に渡す。新規に登録する電子メールマガジンの初期契約手数料を先着10誌に限り免除するという発行者募集キャンペーンで注目を集めた。発表後約2ヵ月。同社の園木幹朗氏に、電子メールで『でじぱぶ』について伺った。




でじぱぶを始めるまで

----電子メールマガジン配信代行サービスの先輩格として原則として発行者からも読者からも料金をとらない(読者から購読料をとるためには配信とは別の仕組みを使う)『まぐまぐ』などがあります。どのようなきっかけで『でじぱぶ』を始めたのですか。

「私個人は、フリージャーナリストとして自動車雑誌に寄稿したりしています。しかし、制約が多いフリージャーナリストではなく、自分自身の書きたいことを書けるようにと、メールマガジンに着目しました。無料で情報を提供するつもりは当初からなく、読者の方から購読料を徴収するつもりでした」
 
「しかし、有料メールマガジンの発行が当初考えていたように容易ではなく非常に面倒であることが分かりました。中小企業や個人が発行しているやり方では、まず集金方法に問題が生じます。読者管理を手作業で行なうので、非常に工数がかかるのです。工夫のない方法では、ビジネスとして成り立たないと考えました」

電子メール配信サービスのビジネスモデル

----どうすればビジネスとして成り立つのですか。

「ポイントは2つ。人件費を押さえることと、読者が支払いをしやすくすることです」

「まず集金方法です。発行者がコンビニエンスストア(CVS)で支払えるように、集金代行業者と契約しました。現在、入金の75%がCVSを利用しています」

「次に管理システムです。4つの手順を実行するシステムが必要です。読者が申し込むと自動的に振り込み用紙を発行すること、入金が確認できると自動的に読者登録すること、期限が切れる前にメールを出して継続を促すこと、期限切れになると配信を停止することの4つです」

「これにはサーバーの設置や専用のソフト開発など多額の投資が必要です。現在、このようなシステムで発行しているのは、大手の出版社や新聞社に限られることも分かってきました」

「私の発行するメールマガジンだけのために多額の投資をしても、資金が回収できないことは明らかです。そこで、このシステムを合理的な料金で開放すれば、多くの方に使ってもらえるのではないかと考え、『でじぱぶ』を誕生させました」

----園木さんは、この有料電子メールマガジンを、どの程度採算のとれるビジネスとして考えているのでしょうか。

「今までは、有料メールマガジンを発行する良いシステムがなかったので、有料マガジンはごく少数でした。しかし、有料化したいという希望はたくさんあります。十分に採算が合うビジネスに成長すると考えます」

----現在無料の電子メールマガジン配信代行サービス『まぐまぐ』が対抗相手になると思います。どのような差別化を考えているのでしょうか。

「現在の『まぐまぐ』では事実上、有料メールマガジンを発行することはできません。従いまして、対抗相手とは考えていません。『まぐまぐ』にはできない、隙間を狙ったビジネスと考えています。“有料と優良”これが『まぐまぐ』との差別化です」

「誰でも簡単に発行できるところが『まぐまぐ』の良いところです。しかし登録すればほぼ自動的に発行できるので、配信している電子メールの質について配信代行側がチェックするプロセスがないというのが現状です」

「読者からお金を取る以上『でじぱぶ』では、発行者にプロとしての仕事を要求します。誰でも簡単にというわけにはいきません。『でじぱぶ』の規模は『まぐまぐ』のようには大きくならないと思っています」

----先着10名にかぎり初期契約手数料無料ということで6月13日に受け付けを開始しましたが、どれくらい、どのような依頼がありましたか。

「このシステムを発表してから問い合わせは30件ほどありました。しかし、発行までには十分な準備期間が必要ですし、コンテンツの質がある程度のレベルに達していなくてはなりませんので、すぐに発行ということにはなりません」

マガジンの質の向上と採算との関係

----今後はどのようにビジネスを発展させるお考えですか。

「まず、質の高い優良なメールマガジンを集めることです。内容が貧弱な発行者にはまず、内容の向上を求めます。あるレベルに達しないものは、有料化しても読者が付かないとアドバイスしています。質の低いマガジンが多数集まることは、信用面でマイナスです。当座の収入という短期の視点では動かないようにしています」

「紙の雑誌編集者の大半が、メールマガジンに対し懐疑的です。現在大半が無料で、質的にも玉石混交、石の方が圧倒的に多いという現実があるからでしょう。ビジネスとして採算が取れているものも非常に少ないのが現状です。質を向上させ採算の合うビジネスに育てることで、メールマガジンに対する世間の見方も変わってくると思います」

「次に各メールのビジネスとしての採算についてです。採算が合わなければ、有益な情報を提供し続ける人がいなくなります。収益を上げる方法として、広告収入による方法と、直接課金する方法とがあります。広告で十分な収入を得ているのはごく一部のコンテンツだけです」

「直接課金の試みを行っているコンテンツは、非常に少ないのですが、私達はこちらのほうがビジネスとしての可能性が高いと考えます。信頼性の高い情報を配信できると考えます。成功のためには、ユーザーに、有益な情報を得るにはお金がかかることを理解してもらわなくてはなりません」

「このような試みを最初に始めた者として、“優良な情報は有料”という意識改革にも取り組む必要があります。社会奉仕のような役割も担わなくてはなりません。当面は苦しい状況が続くのかもしれません」

「私達は『まぐまぐ』に挑戦するわけではなく、共存を願っています。無料のメールマガジンには『まぐまぐ』を、有料版には『でじぱぶ』をというように使い分けてもらえればと思っています」

「有料版を発行するためには、まず、無料版で読者を集め、無料版から移行する必要があります。無料版を卒業した発行者が有料版に移行するケースが当初は多いでしょう。『でじぱぶ』も、『まぐまぐ』にある意味でお世話になるという関係にあるわけです。いわば、共存共栄の関係になります」と抱負を語った。

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