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JEPA定例会、テーマは“電子出版をめぐる国立国会図書館の最新動向”

1998年08月03日 00時00分更新

文● 報道局 小林久

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 日本電子出版協会(JEPA)は、7月28日、電子出版物の納本制度と国立国会図書館の電子図書館構想をテーマとした定例会を開催した。講師に静岡大学教授で、納本制度調査会の専門委員も務める合庭惇氏、国立国会図書館の春山明哲氏、田屋裕之氏を招き、約2時間に渡る講演が行なわれた。

「納本制度調査会中間答申について」--春山氏



 春山明哲氏より、5月に発表された、納本制度調査会の中間答申について説明があった。納本制度調査会は、昨年の3月に発足した国立国会図書館長の諮問機関で、法律、出版、情報などの各分野から選出された17人の委員と7人の専門委員によって構成されている。

 今回の中間答申では、電子出版物を大きく2つに分け、通信などを介して情報の送受信を行なう“ネットワーク系”とCD-ROMなど何らかのメディアを介して流通する“パッケージ系”で扱いを変えることに決まった。“パッケージ系”のコンテンツが内容・形態を問わず収集の対象になる一方で、“ネットワーク系”のコンテンツは、範囲が非常に広範で網羅的収集が困難、法制上の問題も多いとして今回の対象からは外された。

 答申で注目すべきなのは、既存の法制の拡大解釈によって、電子出版物を納本制度に取り込むのではなく、民間の出版社などとの事前協議によって新たなルールを作るべきだという見解が提示されたこと。電子出版物の納本制度には再販価格がないため代償金の額が決めにくい、公衆送信、複製などに関する著作権上の問題をクリアーしなければならないといった問題が残っている。同審議会では、これらの問題に関して引き続き意見交換の場を持ち、来年の2月をめどに正式な答申を提出、再来年の4月に新制度をスタートさせたいとしている。

「納本制度調査会中間報告に関する私見」--合庭氏



 合庭惇氏より、今回の答申に関する見解が示された。同氏は、中間答申で“ネットワーク系”が対象から外された事に対しては、従来の“もの”としての流通経路を利用しないこと、電子出版という言葉はあくまでもメタファーとして用いられていることなどの特徴を指摘。今までの出版物と同質には扱えないのではないのかという見解を示した。

 また、シンクタンク系のCD-ROMなどデータが希少なため、価格が非常に高価となるものに関して、代償金はその電子出版物を新たにもう1部作るための費用とするべきとする意見に対しては、情報の内容に対して支払う対価を無視していいのかと問題を提起した。

「電子図書館構想について」--田屋氏



 田屋裕之氏より、デジタル社会の中で図書館の果たす役割に関する講演があった。同氏は、社会全体とのコミュニケーションを考える中で、図書館の意味を考えなければならないと述べ、図書館の持つ記録・知識の集積と再配分、未来への伝達といった意味を再確認した。

 同氏は、図書館の本来の意味に立ち返る意味で納本制度の果たす役割は大きいと指摘、どのように資料を収集するのか、またどのように利用してもらうのかということについて、利用者の立場で考えるべきだと語った。また、昨年から始まった電子図書館推進会議の結論も、今回の中間答申発表と基本姿勢で一致するものだと述べた。

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