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【INTERVIEW】認可されるか-音楽著作権仲介業務、文化庁回答の「引き延ばしの真相」をMCA三野氏に直撃

1998年07月16日 00時00分更新

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 パソコンやゲームのCD-ROMやDVD、コンピューターネットワークやインターネット配信によるダウンロード--。これらマルチメディア関連の音楽著作権管理業務への参入を試み、認可申請を行なっているのがミュージックコピーライトエージェンシー(株)(MCA)である。文化庁からの回答の期限は当初7月7日であったがその結果はどうなったのか。(株)オラシオン取締役社長であり、MCA許可申請の中心になっている三野明洋氏に伺った。



----7月7日に文化庁から申請についての答えがでるというお話でしたが、遅れている原因を教えてください。

「審査が遅れて手間どっているというのが現状です。文化庁の方からは先延ばしになりますが、7月末に最終的に回答するという返事をいただきました。MCAの業務プランニングは完全に出来上がった状態です。認可が下りたら、当初の予定通り10月あたりから業務を開始したいと考えています」

「私どものシステムを使用すればすぐにでも開始できるのですが、MCAが新聞や雑誌で取り上げられてから、一緒に事業をやりたいという企業からの申込みが結構ありました。大手ネットワーク関連会社、大手ソフト会社などです。認可が下りた後、共同で始めるのであれば、もっと大掛かりな事業になるかもしれません」

----申請受理日4月8日から3カ月以上経過しますが、なぜ審査にそれほどの時間を要するのでしょうか。

「60年間仲介業務法が変更されたことがないからでしょうね。文化庁としても申請を受けたことがないので、経験も基準も現在までありません。しかし法律では仲介業務への新規参入を禁止するものもありません。許可するのかしないのか、文化庁内も相当混乱しているようです。認可しないという法律があるわけでもないので、MCAが認可される方向であると私どもは見ています」

改正された行政手続法に従うと、申請を受けた官庁は3カ月以内に、理由をきちんと添付して回答を示さなければならない。申請受理日の4月8日から逆算すると回答期限は7月7日であった。MCAは認可申請後、文化庁の要請により追加の資料を提出している。文化庁によるとその資料作成期間の分だけ回答期限が延びるという。

----認可された場合の事業方針についてお聞かせください。音楽著作権管理の全般をカバーするのですか。

「扱うのはゲームやCD-ROM、DVDなどのマルチメディア関連に限ります。また、インターネットを介したダウンロードによる配信も扱います。インターネット放送などのストリーム(流れてきては消えていく)配信には、参入しないつもりです。ストリーム配信は、今のところJASRACによる使用料規定がないグレーゾーンです。ただ、将来的に演奏権の領域になる可能性が高いと思っています。演奏権には、JASRACが行なっている一元的な管理の方が向いているのです」



----MCAの特徴が打ち出せる分野というのはありますか。

「米国では音楽と映像とを同時に定着させることを“シンクロナイズ”と呼び、この“シンクロナイゼーション”に関わる音楽著作権の仲介業務が存在します。この概念は、日本にはまだ導入されていません。日本では、ゲームに利用される音楽について明確な使用料規定がありません。映画の著作物として扱うという動きはあるのですが」

「ここ数年の技術革新により、音楽と映像との新たな関係が生まれたわけです。新しい概念であるシンクロナイゼーションを導入すれば、その関係についてきちんと規定を設けることができます。それにより、著作権者にビジネスチャンスを与えてあげたいですね」

 

“シンクロナイゼーション”とは映画、音楽と現在の法体系でバラバラに成立する権利を一体のものとして評価しようとするものである。

 現在、映画の世界でも、言語の著作物である映画脚本と音楽の著作物である映画音楽については、それぞれの著作者が“クラシカルオーサー”と呼ばれ、映画の著作権とは独立した権利を持っている。ゲーム、セルビデオなどは映画の著作物として扱われているので理論的には同じ枠組みになる。この仕組みなら音楽の著作権が映画全体の著作権の中に埋没する恐れはない。

 一方で、音楽と映像とを“シンクロナイズ”させる創作活動が評価されることなく、映像側と音楽側(JASRAC)のそれぞれが自分の権利料を主張する構図を温存することになった。

 現在、創作物を構成する権利要素のうち、音楽が独立した著作物要素として扱われ、かつ、その権利処理料が旧来のレコードやカラオケビデオディスクとほぼ同じ枠組みで決まっているために、音楽の権利料が一般消費者の感覚と大きくずれた額に定まってしまう。三野氏の所属するミュージックコピーライトエージェンシー(株)のような音楽著作権仲介業者や権利管理団体が増えれば、従来とは違う仕組みで権利料を柔軟に決めることができる。
(若菜麻里、報道局 降旗敦子)

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