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【INTERVIEW】マルチメディア時代の音楽著作権、あるべき姿とは。NMRC代表世話人佐々木隆一氏の提案

1998年07月09日 00時00分更新

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 マルチメディア時代を迎えて社会や産業が変化しているのに、第2次世界大戦前夜に決まった枠組みが生き続けているのが音楽著作権問題である。現在、日本で音楽著作権を管理しているのは(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)のみである。JASRACには、ネット上での使用料などの規定がないため、支障が生じている。使用許諾条件等についてJASRACと交渉を続けるネットワーク音楽著作権問題協議会(NMRC)の代表世話人、佐々木隆一氏に、インターネットにおける音楽のダウンロード配信と使用料の問題を中心にお話を伺った。



----現在NMRCとJASRACとの交渉状況はどこまで進んでいるのでしょうか。

「NMRCは、事業者側としてシンプルでわかりやすく、国際的にみて妥当性のある価格設定を求めています。JASRACの提案はわかりにくいのです。配信するサーバーに登録している楽曲数に応じて毎月支払う“基本使用料”と、売り上げ(例えばサーバーからのダウンロード数)に比例して払う“利用単位使用料”の2つの合算を主張しています。さらに細い注釈があり、いったいいくら払えばいいのか不明瞭な状態となってます」

「NMRCは、インターネット上の著作権の使用料を大勢の人にとってわかりやすく伝えなければならないと思っています。サーバーに著作物を用意しただけで基本使用料を取られることは理解しにくく、同意できません。これまでは団体間の協議でしたが、何が問題なのかをすべての人に理解してもらうためにも7月中に、ホームページを立ち上げて情報を公開していくつもりです」

----それでは、使用料の問題は7月中に決着が着かないということでしょうか。以前 JASRACは、6月中に暫定的な使用料を決定して、来年の4月までに本格的な使用料徴収を開始したいと表明していました。佐々木さんのお話とスケジュールが食い違いますが。

「NMRCはサーバーに登録しただけでとられる基本使用料をなくすことを主張し続けています。しかし、すべて一括で決めるには無理がありますし、納得できるところから処理し決定していかないと問題の解決は難しいのです。そこで、暫定的な合意をという話が出てきています」

---- 利用単位使用料を配信収入の何パーセントにするか合意はなされたのでしょうか。

「まだ折り合いはついてません。JASRACは、インターネットでの使用料率を配信売り上げの10パーセントにすると提案してきました。レコードの録音複製権料がレコード価格の6パーセントなのに比べると跳ね上がっています。NMRCが主張する4.5パーセントとレコード料率との間で決まるのではないかと思います」



----先ほど国際的にみて、とおっしゃいましたが日本を海外と比べるとどうなのでしょうか。

「米国では現在、インターネットで音楽を放送のように流すことが可能です。日本では現時点で関係者間の合意ができていないので、TV放送のようにはレコード演奏できない状態です。著作権料よりこちらの方が重要ともいえます。このままだと、インターネット上で音楽を流すには自分で音楽を作るか、著作権のない音楽を使用するかしかありません。この日本のシステムには重大な欠陥があると思いますね。今年1月に著作権法に追加された送信可能化権により逆にレコードが米国のようにはインターネットで使えなくなったのではないでしょうか」

「著作権料問題が解決したとしても米国並みにネット上に音楽が流せる日がくるとは限らないのです」

----ミュージックコピーライトエージェンシー(株)(MCA)が仲介業務の許可申請を行なっています。マルチメディアコンテンツに対応した音楽著作権に対象を絞るようですが、認可されたらどのような影響がでますか。また、NMRCも仲介業を始める可能性はあるのでしょうか。

「今まで一元管理をよしとしていたJASRACもMCAを認める策へ移行するでしょう。NMRCは、(社)音楽電子事業協会、(社)日本レコード協会、(社)テレコムサービス協会、電子ネットワーク協議会など、9団体で構成されているので、仲介業はできません。私が代表を務める私企業のMCJは、権利管理の周りを仕事にし続けていきます。たとえば、電子透かしの埋め込みのサービスなどを行なうデジタル権利センターを社内に設立しました」

(若菜 麻里、報道局 降旗 敦子)

http://www.music.co.jp/

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