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【MACWORLD Expo(vol.3)】スティーブ・ジョブスとiMac、拍手で迎えられる

1998年07月09日 00時00分更新

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 日本時間8日午後10時、アップルコンピュータ社による最初の基調講演とともにMACWORLD Expoが本格的にスタートした。

 基調講演は初めから驚きの連続で、当初、アップル社ワールドワイドマーケティング副社長、フィル・シラーがするはずだった講演は、米国のほかの場所から衛星中継で参加するはずだった暫定CEO、スティーブ・ジョブスその人が行なった。

 コンピューター業界のカリスマ、ジョブス氏の予想外の登壇で会場はしばらく拍手がなりやまなかった。

 ジョブス氏が講演するとなれば、それだけで講演参加者はふくれあがることは明白だ。それなのになぜ講演が始まるまであえてジョブス氏が来ることを公表しなかったのかは興味深い。やはりジョブス氏は驚かすことによって関心を集めることが本当に好きなようだ。



■ジョブス氏、アップルが背負う5つの課題に回答

 ジョブス氏は、心理学者アブラハム・マスロブ氏の“欲求の5段階”(*1)に倣って、“アップル疑念の5段階(英語では“Apple's Hierarchy of Skepticism”。「アップルが会社としてちゃんとやっていけるかどうかの疑念を晴らすための5段階」ほどの意味)”をテーマに、最近のアップルの状況を振り返った。

*1:人間の欲求には5つの階層があり、生命の維持に必要なもっとも根元的な欲求から順に、ひとつの欲求が満たされるとその上の階層にある欲求を満たしていこうとする。

 “アップルの5段階”の1番下の階層は「会社の存続」だ。

 ジョブス氏は会社に優秀な管理者や取締役を招き入れ、さらには昨年のマイクロソフト社と提携したことで、この第1段階を満たしたとした。

 “アップルの5段階”、2番目の階層は「安定したビジネス」だ。

 これを満たすには会社として安定した収益を上げることが必然となる。ジョブス氏は1月と4月に発表された同社'98年会計年度第1、第2四半期の決算で 同社が予想以上の収益を計上したことを振り返り、「アップルは今から1週間後の7月15日に第3四半期の報告をする。喜びたいのはこの四半期で3四半期連続で黒字を計上するということだ」と語った。

 ジョブス氏はまた有名人の写真を使った“Think different.”キャンペーン の広告を積極的に展開していることや、米国で開始しているビルド・トゥー・オーダー可能なオンライン販売サービス、“Apple Store”の成功についても触れた。Apple Storeの開店で、同社Webサイトへの1日あたりのアクセス数は100万件から1000万件に増えた。そしてアップルの会社としての価値も約12億ドルから40億ドル以上にふくれあがったという。

■iMac登場

“アップルの5段階”3番目の階層は「製品戦略」だ。

 ここで、基調講演で一番の目玉(というよりも今回のExpoで一番の目玉)であるコンシューマー用デスクトップ製品iMacが登場した。ジョブス氏は、iMacのモデムを説明するにあたって、口ぶりを改め、こう語り始めた。

 「このモデムのスペックについては、多くのMacユーザーから強い意見をもらった。アップルにはいろいろ不備な点もあるが、ユーザーの意見に耳を傾けないということだけはしないつもりだ」

 そして、iMacのモデムの仕様が33.6Kbpsから56Kbpsに変わったこと、iMac発売日が8月15日であることを報告した。iMacは発売開始と同時に56Kbpsモデムを搭載した形で出荷する。



 また、数あるiMac関連の展示の中でももっとも重要なのがUSBを使った周辺機器だ。

 まず紹介されたのはイメーション社のUSB対応スーパーディスクドライブだ。スクリーンに映し出されたドライブはiMacと同じ緑青と白のツートンカラーからなる透明プラスチックを採用する。次に紹介されたのはアイオメガ社のUSB版Zipドライブ。同製品もiMacのデザインに合わせて青い透明プラスチックを採用している。またSyQuest社もiMacにあわせて赤い透明プラスチックを採用したSparQドライブを発表。さらにヒューレット・パッカード、エプソン、キヤノンからUSB対応プリンターも次々と登場する(ちなみにキヤノン製品は日本のみの販売となる模様だ)。



 このほかにもコダックのデジタルカメラ、マイクロソフトのジョイスティック、Connectix社のQCAM(電子会議用カメラ)、PDA製品Palm III用のUSB版クレードル(パソコンと接続して情報のシンクロを行なうための装置)、Entrega社をはじめとして多くのメーカーが販売しているUSB版Hubなど、実に多くの周辺機器を接続できる。

■マイクロソフトからもゲストが

 ジョブスが続いて語り始めた第4層目は「(サードパーティーの)アプリケーション」だ。

 ジョブス氏は暫定CEOに就任したとき、まず驚いたのはアップルとサードパーティーとの関係が悪化していたことだ。そこで、マイクロソフトから「Macはわれわれにとってもいいビジネスだ。Macには成功して欲しい」という申し出があったとき、彼はまずマイクロソフトとの関係修復にあたったという。それから1年の間に、マイクロソフトはOffice 98、Internet Explorer 4.01、Outlook Express 4.01という3つのヒット製品をMacのためにリリースしている。

 ジョブス氏は壇上にマイクロソフトのBen Waldman(ベン・ウォールドマン)氏を招いた。ウォールドマン氏は「Macのイベントでマイクロソフトの人間が拍手で迎えられるなんて昔なら考えられないことだが、これもマイクロソフトがMacらしいソフトをつくることを学んだおかげだろう」と切り出した。

 そしてOffice 98はWindows版よりMac版が先行販売となり、多くの機能がMacでしか手に入らないことを強調し、さらなる喝采をあびた。

 またiMacがWindows版Internet Explorerにない先進的な機能をたくさん持つInternet Explorer 4.01 for Mac(注:Internet Explorer 4.01 for Mac単体での提供はすでに始まっている)を標準でバンドルすることも明らかにした。

■iMac用アプリケーション、すでに177本発表

 ウォールドマン氏の演説が終わるとジョブス氏が再び登壇し、Macにコミットしている開発者がマイクロソフトだけではないことを語り始めた。

 iMacの発表は5月9日でこの基調講演のちょうど9週間(63日)前のことだ。このわずか63日の間に多くのサードパーティー開発者が再びMacの開発に興味を示し、なんと177の新アプリケーションが発表された。



 ジョブス氏はサードパーティーによるアプリケーションの一部として簡単に製品紹介を行なった。中でもジョブス氏が力強く紹介したのはゲームだ。ジョブス氏は、「なぜか過去のアップル社重役はゲームを嫌ったが、われわれはゲームが大好きだ」とした上で、X-Files、Legacy of Time、Titanic、Riven、StarWarsをテーマにしたゲーム、StarTrekをテーマにしたゲーム2種類、Civilization、REAL POOL、Deer Hunter、Tomb Raider II(Tomb Raiderシリーズ全作品をMacに移植中とのことだ)、Diabloなど20種類近くのゲームの名を紹介した。

 ジョブス氏はこうしたCD-ROMベースの製品以外にネットワークを使ったすばらしい製品もあるとした上で、ディズニー社のネットワークサービス“Blast Online”を紹介した。“Blast Online”はインターネットを使った子供向けのサービスで、JavaやMacromedia Flashを使ってディズニーキャラクターが登場するアニメやゲームを楽しむことができる。

 



 ところでWebブラウザーで閲覧可能なインターネット上のサービスなのになぜMac版が必要なのかと疑問に思う読者もいるだろう。これは実際にFlashやJavaを用いてつくったコンテンツでもMac版のInternet Explorer/Netscape NavigatorとWindows版では実際に搭載している機能が違うために凝ったページデザインをしていると同じコンテンツが表示できないためで、Blast Online for MacはMac版のInternet Explorer/Netscape Navigatorでも楽しめるようにページを作り直してある。ベータ版は基調講演の2日後から、http://www.disneyblast.com/mac/で見ることができるということだ。

■iMacでコンシューマー市場へ進撃

 ジョブス氏は再び“アップルの5段階”に話を戻した。

「このようにMacにアプリケーションも戻ってきた。では次の段階は?...『Growth(成長)』だ」。

 アップルは会社にとってもっとも深刻な問題を次々と克服をしていき、ついにはアプリケーションも戻り始めていることがわかった。となると、次に重要なのはマーケットをどうやって大きくしていくかだ。

 1年前にはアップルの製品はデザイン/出版と教育の分野以外ではすでにすっかりマーケットを失いつつあった。しかし、アップルはiMacで、この2つの間にぽっかりあいたコンシューマーという市場への進撃を開始する。コンシューマーパソコンはもともとアップルが生み出したものだ。

 ジョブス氏はアップルはiMacを成功させるのに重要な4つの基盤をすでに持っていると説いた。4つの基盤とは“ブランド”、“インストールベース”、“デザイン”、“シンプルさ”だ。

 ジョブス氏は、情報や製品が氾濫し購買者がひとつひとつの製品を検討するのをわずらわしく感じ始めている今、ブランドイメージはこれまで以上に重要になってくると語る。そしてアップルはソニーやナイキ、ディズニーなどと並ぶ強いブランド力を持っていると力説した。

 また、iMacでもっとも重要なのは“シンプルさ”であることだと説き、iMacを買ったばかりの子供とコンパックのコンシューマー向けパソコンを購入した大人が実際に箱をあけてセットアップを完了し、製品を使い始めるまでの経過をコミカルに映し出したビデオを流した。



 最後にジョブス氏は、「アップルはこのExpoまでに“アップルの5段階”の1~3番目までを実証してみせた。これからは4番目の『アプリケーション』と『成長』を証明していくことになる」として講演を結んだ。

(取材・文 林信行)

[詳細記事は、弊社Macintosh情報誌『MacPower 8月号』(7月18日発売)をご覧ください]

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