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【INTERVIEW】米Marimba社、「これからは、ソフトがサービスとなる」

1998年06月09日 00時00分更新

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 米Marimba社マーケティング開発担当副社長のTom Banahan(トム・バナハン)氏にMarimba社の戦略、アジアパシフィック担当David S.Jacobs(デービット・S・ジェーコブス)氏に日本市場の反応について訊いた。

マーケティング開発担当副社長Tom Banahan氏マーケティング開発担当副社長Tom Banahan氏



----Marimba設立の背景は?

 「'97年に、プッシュ技術は大きな注目を浴びた。より効率的に、より効果的に情報を流すという技術に人々は魅了された。しかし、プッシュ技術の正確な定義はなかった。'97年の年末に入って、プッシュ技術は幾つかの階層に分類できるようになった」

 「第1階層は、“Contents Aggregation”。広告ビジネスモデルに基づいたプッシュモデルで、情報をユーザーに効率的に、効果的に配信するサービスだ。この分野の代表的企業が、ポイントキャスト(http://japan.pointcast.com/)である。第2階層は、“Knowledge Management”。最近、ロータスやマイクロソフトに代表される大手企業から中小企業が、この分野に参入している。この分野の代表的な企業は、バックウェブ(http://www.backweb.co.jp/)である。そして、第3階層はMarimbaの“Administrative Management Distribution”である」

 「Marimbaは、2つの目的をもって設立された。第1にMarimbaの創立者は、'94年から'95年にかけてのインターネットブームを見て、Webがコンテンツ配信に適した技術だけでなく、ソフトを配信するインフラストラクチャーに適していると見たのである。第2に、企業がこのソフト配信を他の企業との差別化を図るために使用するだろうということだ。つまり、企業はアプリケーションを企業Aから企業Bへと配信し、双方の関係を高めるために、ビジネスのコストを削減するために導入するのである。Marimbaは、近い将来、アプリケーションそのものは背景に留まり、“サービス”が前面に出ることになると考えている」

----『Castanet』*導入の具体例は?

 「コンピューターソフトウェア・ハードウェア流通の大手、米Ingram Micro社を例にしよう。同社は、2万の販売店、5000もの価格表を所有している。これまで、分散された管理方法を採っていた。ある販売店にはある管理を、違う販売店には違った管理方法を用いていた。これは非効率的で、非効果的だった」

 「同社は『Castanet』を用いて、これらの販売店を総合的に管理するアプリケーションを作成し、2万の販売店に同時に配布した。これら2万の販売店が受け取る情報の80パーセントは同じで、残りの20パーセントは各販売店に特化したものである。同社は、『Castanet』を使用することにより、販売店との関係を全く違うものとし、2つの企業がよい関係を築くことを可能にしたのである」

 「同社はアプリケーションの配布権を所有し、その変更、管理、保持、機能の追加、機能の削除、各販売店特有の情報を加え、各販売店に必要な価格表を配布し、価格表の管理などすべての権利を所有している」

 「ユーザーは、アプリケーションのインストール、管理をする必要がなく、日々の業務で使用するのみ。ユーザーが何も手を加えないうちに、アプリケーションの情報は更新され、バージョンが変更される。つまり、ユーザー側から見るとこのアプリケーション本体が重要なのではなく、アプリケーションに付随する“サービス”が重要となる。このサービスがMarimbaが提唱する“Administrative Management Distribution(ADM)”である」

----“Administrative Management Distribution(ADM)”の需要は

 「3つのトレンドが、ADMを支えていると考えている」

 「第1のトレンド。'84年から’85年にクライアント・サーバー市場の動きがあった。これは、ビジネスロジックをクライアント側にも置くというものだった。これにより、エンドユーザーは、多くの作業をクライアント側で行なうことが可能になった。しかし、これは高いコストを生んだ。アプリケーションの管理、アプリケーションの導入コストが上がり、多くのケースではアプリケーションを所有するメリットを上回る運用コストが生じてしまった。そして、インターネットが到来した。これは、クライアント・サーバーとは、全く正反対な動き。アプリケーションをサーバー側に置き、アプリケーションのエレメントだけ、クライアント側に配信するというものだ。クライアントはブラウザーにあたる。ここでは、クライアント側はオンラインである必要があり、ブラウザーのウィンドウ上でユーザーは作業を行なう。この動きに拍車がかかったのは、クライアント・サーバーのコストが高かったから。われわれは、クライアントサーバーの動きと、ブラウザーの動きの中間に、新しい動きがあると思っている。つまり、アプリケーションを開発している人は、必要個所にビジネスロジックを配信する必要があるということだ。場合によって、クライアント側(PC、携帯電話、ポケベル)にこのビジネスロジックが必要であり、また、場合によってはメインフレームにビジネスロジックが必要な場合がある。要するに、メインフレーム、クライアント、サーバー、いずれにしても必要とされる箇所にビジネスロジックを配信する必要性が生じたのだ」

 「第2のトレンドは、“Enterprise Server Provider(ESP)”企業・サーバー・プロバイダーである。中小企業は、システムにお金をかけることができない。ESPはビジネスに必要なアプリケーションをパッケージして、サービスとして『Castanet』を使って配信する。この分野は、まだ展開を見せていないが、大きな期待をしている。多くの機会があると信じている」

 「第3のトレンドは、企業が双方の関係を高めるという動きだ。顧客、メーカー、信頼できるビジネスパートナーとよりよい関係を築き上げたいという場合だ。ここでは、アプリケーションの配信、ソフトがサービスとなる」

 「Marimbaは、この3つのトレンドを支える企業だと考える。この3つのトレンドの共通点は、アプリケーションを中心とした世界であるということだ。アプリケーションを開発したものは、それを配信、管理、一部の管理を下流に送る、この3つのトレンドには、大きな市場が存在する。莫大だ」

----次期バージョンの『Castanet』はどうなる?

 「次期バージョンの『Castanet』では、アプリケーションの管理権を下流に流すことを可能にする。例えば、Ingramのケースで言えば、ある小さい販売店は、 アプリケーションを受け取り、従業員全員に配布をするかも知れない。一方、違う販売店、大きい販売店はアプリケーションを受け取った後、このアプリケーションのコントロールを取得し、彼らの管理下で従業員、システムハウスに配布したい場合がある。よって、Castanetは、ただ単なるアプリケーションの配信ではなく、一部の管理を下流に配布することが可能になる」

----日本における活動は

 「日本市場に参入してから1年半近く経つ。当初は英語版を出荷し、去年の12月には日本語版を出荷した。日本市場での活動は教育から始まった。プッシュの誤解を説くために、パートナーだけでなく、市場も教育しなければならなかった。われわれがコンテンツではなく、アプリケーションの配布に焦点を当てていると教育しなければならなかった」

 「ビジネス面から見ると、昨年、日本は非常に積極的だったといえるだろう。恐らく、インターネットに乗り遅れたとの認識が強く、多くの企業はインターネット技術を取り入れることに躍起だったと考える。これらの企業は、ビジネス業務へのインターネットの導入に注目した。彼らは、インターネットを用いて、ファイヤーウォール外のメーカーと販売店にも、同じソフト・情報を提供したいと考えたのである。日本の現状は、通信コストが高いということ。『Castanet』では、変更された箇所だけが圧縮され、通信回線を介して配信されるので、非常に効率的だ。最初のダウンロードをすませれば、変更箇所だけ、1バイト変更されれば、1バイト分だけ、通信回線を通じて配信される」

----Marimbaの企業向け戦略は、日本で受け入れられているのか

 「日本企業から、大きな反響を得ている。大手銀行、NTT と5つのパイロットプロジェクトも開始している、保険会社、出版社などが、われわれの技術を採用している。よって、導入範囲は大変広い。また、日本でビジネスをしてわかったのは、米国と比較して、6~9ヵ月遅れているということだ。基本的には、日本は米国と同じ道を歩んでいると考えている」

 「ただ、中には興味深い導入例もある。1つは、ハードウェアメーカーがわれわれの技術を採用したことである。先日、東芝が『Castanet Tuner』技術を搭載した、Network Computer (NC)『Confolio シリーズ』**の出荷を開始した」

 「このほか、PDA、携帯電話、PHSメーカーと一緒に、同技術の小型機器への採用を図ってる。電話はサービスの1例で、ハードウェアよりむしろ、サービス、オプションが重要である。電話にMarimbaの技術を採用することによって、ニュース、スポーツ、株価、交通情報を配信することが可能になる。また、企業ユーザーは、電話にデータベース、企業情報を入力することが可能になる。可能性は未知数だ」

 「日本では、あらゆる分野でMarimbaの技術が採用されている。ある分野では米国よりも進んでいると思う。これは、米国に遅れをとったという認識から生じた積極性の結果だと思っている」

----導入を検討する企業の傾向は?

 「2000年問題を解決する際に、2つの解決方法がある。1つは、既存のものを治す方法である。この手法を用いる企業は、通常Marimbaの取引先ではない。もう1つは、この機会を用いて、新しいクライアント・サーバー環境を構築する企業である。これらの企業は、通常Marimbaの取引先になる。彼らは、『Castanet』の技術を採用することによって、大きなコストの削減、業務の効率化を得ることを認識するのである」

(報道局 西川ゆずこ)

*Castanet(カスタネット)
米Marimba社が開発した、Javaをベースにしたソフト配信の仕組み。サーバー側は『Castanet Transmitter』、クライアント側は『Castanet Tuner』から構成されている。

**『Confolio シリーズ』
デスクトップ用NCとモバイル用NCのラインアップ。NC用OS(JavaOS)と、オフィスツールを備えた(Castanet Tunerを含む)JCViews、もしくはブラウザーのみのConfolioブラウザーから選択する。写真はモバイル用NC『Confolio 300S』。CPUにStrongArm SA-1100 200MHz、メモリーはDRAMを32MB(最大32MB)、ハードディスクは810MB、10.4型DSTNカラー液晶ディスプレーを搭載。



http://www.marimba.com/

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