このページの本文へ

アンドリュー・グローブ米インテル会長兼CEOが来日し講演

1998年05月13日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷


 米インテル社のアンドリュー S. グローブ会長兼CEOが来日、“ビジネス・コンピューティングの将来”と題し講演を行なった。ビル・ゲイツ氏と並び賞されるコンピューター業界の大物の講演とあって、たくさんの聴衆が詰めかけた。



 講演では、製品戦略とそのロードマップ、そして各製品のデモンストレーションが中心であった。製品戦略では、ベーシックPC用の『Celeron』、デスクトップPCを中心とした“パフォーマンスPC”用の『PentiumII』、サーバー・ワークステーション用の『PentiumII Xeon』、そしてモバイルPC用の『モバイルPentiumII』と用途別にCPUを展開していく方針を説明したが、製品戦略もロードマップもすでに発表されている内容であった。製品のデモ中、ワークステーションの機能を説明するために使用したCGが『エヴァンゲリオン』だつたのは、日本向けのサービスか。



 また、講演の中で「日本のビジネス用PCのうちわずか23パーセントしかネットワークに接続されておらず、50パーセントを超えている米国の半分以下」、「対GDP比で見た日本の情報化投資は、アメリカの半分」、「ここ数年日本の産業は国際競争力を落としている」といった説明があったことから、講演後に行なわれた記者会見では、「日本のIT産業をどうすればよいのか」といった質問が相次いだ。



グローブ氏との質疑応答は以下のとおり。

●世界のIT産業について

----米国ではIT産業の後退が懸念されているが、回復はいつごろになるか?

 「インテルの第1四半期の業績は、あまり芳しいものではなかった。第2四半期も第1四半期と同様に在庫が積み上がっている。米国全体のIT産業と同様に、回復は今年後半まで待たなければならない」

----アジアおよび日本の経済状況をどう見ているか?

 「経済の成長が鈍化し回復には時間がかかると思う。日本も、IT関連の投資が先進国の中で比較的低水準となっており、これは日本にとってリスクが大きいと考えている」

----日本に来る前に、中国を訪問してきたというが、中国の印象は?

 「IT産業が急速に立ち上がりつつある。私が中国を訪れたとき、地元のPCメーカーがちょうど100万台目のパソコンを製造したというニュースを聞いた。中国では5割以上のパソコンでPentiumIIが使われており、地元のパソコンメーカーが育ちつつある。もうひとつ感銘を受けたのは、政府の高官が、経済発展の重要性を認識しているうえに、技術的なバックボーンを持っている、という点だ。中国は、いずれ世界のトップ3のパソコン消費国へと成長するだろう」

----Windows98に関し、マイクロソフトと司法省が争っているが?

 「Windows98の問題に関しては、何が起きるか見当がつかない。私もみなさんと同じ新聞を読んでいる立場にすぎない。技術的な部分については、何も問題は感じていない」

●インテルの戦略について

----低価格CPUの投入など、商品戦略の転換によって利益の減少が予想されるが、設備や研究開発のための投資に変更はないのか?

 「'97年は70億ドルの投資を行ない、'98年も80億ドルの投資を行なう。投資は原則として継続していく。長期的な観点から投資を行なうべきであり、短期のビジネスの変化に縛られるべきではない。64bitアーキテクチャーに関する投資も積極的に継続していく」

----x86アーキテクチャーはいつまで存在するのか?

 「ひとつの特定のアーキテクチャーだけが最適なものであるとは考えていないので、x86アーキテクチャーは無限にサポートしていく方針だ」

----300mmウエハーの工場が2000年に完成すると聞いているが、プロセッサーの価格への影響はあるのか?

 「半導体産業に30年間かかわってきたが、ウエハーのサイズはどんどん大きくなっている。サイズが大きくなるたびに、大変な苦労をして工場を立ち上げてきたが、その苦労は変わらないが、メリットはどんどん小さくなっている。300mmウエハーの工場の立ち上げは、今までよりも慎重に移行を進めていくこともあり、予想よりも時間がかかる。製造装置なども一から開発し直す必要があると思う」

----先週末、台湾のメーカーがSlot1対応のチップセットを発売したが、これらのメーカーに対し特許に関する訴訟を起こすつもりはあるか?

 「台湾のメーカーの話はよく知らないが、MPUのデザインには知的所有権が存在し、株主に対する責任からも、違法なかたちで使われていれば法的に対応していく」

●日本のIT産業について

----先の講演で、日本のIT関連の投資はGDP比でみると米国の半分しかないと説明していたが、その理由はどこにあると考えているか?

 「誰も答えはわかっていない問題だが、私が感じていることを言えば、その原因は不景気だからではなく、'80年代にまで遡る。'80年代の日本の産業界は、製造業を中心に新技術を導入することで成功したが、このときは生産の効率化のための技術にのみ注目して情報化技術には注目しなかった。また、日本の職場におかれているパソコンはネットワークにつながれていない。日本の企業のトップは電子メールの使用にも積極的でなく、パソコンを使うことに保守的だと思う」

----バーミンガムサミットでも、NTTの通話料金が高すぎることが議題に上ったが、この点についてどう考えているか?

 「今の問題に関しては、熱烈に支持したい。日本だけでなく、コンピューターネットワークはテレコミュニケーションの業界に牛耳られていると思っている。もともと国営の独占企業であったこともあり、コンピューター業界の常識が反映されていない。ただ、それを除いても日米の通話料金には大きな差があるのは否定できない」

----日本のIT産業の成長を促すために、政策的な呼び水は必要か?

 「IT産業の成長に関して、日本と他国との一番の違いは、政策面にあるのではないと考えている。日本以外の国々では、ハード、ソフト含めさまざまな分野で新興企業が立ち上がり、これらが競争してIT産業が盛り上がってきた。米国のIT産業のほとんどはベンチャー投資の結果だが、日本はそうではない。ベンチャー投資は、政府がやれといってやるものではなく、その点はどうしようもない」

----日本の半導体業界は業績が悪いのだが、何かアドバイスはあるか?

 「この業界は50年の歴史があり、全体としては成長しているが、ミクロのレベルではいろいろと問題があった。日本の半導体メーカーへのアドバイスとして、短期的な変動に振り回されることなく、長期的な観点から投資を続けることが重要だと思う」

(報道局 佐藤和彦)

http://www.intel.com/

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン