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【INTERVIEW】高電社・高基秀氏「言語の国境をなくしたい」

1998年04月24日 00時00分更新

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 大阪・阿倍野のずいぶんとのんびりした一角に、5F建ての(株)高電社本社ビルが目立っている。同社代表取締役社長の高基秀(こう・もとひで)氏は、「周りにはパソコン関連企業はほとんどありません。販売ルートも商談自体も大きいから、みんな東京へ行ってしまうんですね」と話す。同社でも10年ほど前、東京に支店を設立、高氏自身も大阪・東京間を飛び回っている。

 高電社では、ソフトの開発、販売およびパソコン周辺機器の販売を行なっており、今回、高氏とソフトウェア事業部事業部長代理の原田幸一氏に、同社の主力製品である中国語関連ソフト、韓国語関連ソフトなどについてお話を伺った。

高基秀氏(右)と原田幸一氏(左)。「この業界は若い業界なので、私のような年寄りより若い人を撮って」高基秀氏(右)と原田幸一氏(左)。「この業界は若い業界なので、私のような年寄りより若い人を撮って」



----4月初旬に中日翻訳ソフト『j・北京』(Windows95/NT4.0対応、4万9800円)を発売されましたが。

高「反応はいいですね。日中翻訳ソフトへの要望も多く、現在開発を進めています。ただ、リリースは1、2年後になる予定です。このj・北京や韓日翻訳ソフト『j・ソウル』は、翻訳率が英日翻訳ソフトなどに比べて高く、大きな特徴となっています」

高「中国語、韓国語関連ソフトについては競合というものがほとんどありません。また、インターネットによって他言語の解読の必要性は高まっていますから、爆発的な売上はないとはいえ、安定した需要を見込むことができます。投機的な要素は少ないといえますね」

----翻訳ソフトを始められたきっかけは。

高「10年ほど前、NECが韓国のパソコン通信会社大手のDACOMと提携したとき、お互いの言語が文字化けするので、それを解決するソフトを作ってくれ、と委託されたのが最初になります。韓国の人は、日本やアメリカの情報を欲しがる傾向にあり、そのときはまず韓国語のパソコンで日本語が読めるソフトを作りました。その後、韓国語ワープロ/フォントソフトや日韓翻訳ソフト、韓日翻訳ソフトも手がけてきたわけです」

----中国語関連ソフトについては。

高「インターネットの普及が開発の大きな要因です。中国のホームページには簡体字や繁体字が使われていますが、これが読めない。それで中国語ワープロ/フォントソフト『Chinese Writer』を作ったのです」

----中国語、韓国語、英語関連のソフトをリリースされていますが、それ以外の言語への対応は。

高「今後の課題ではありますが、採算を考えると、公共機関による委託などがなければ難しいと考えています。実際に、中国語、韓国語関連ソフトでは、開発はすべて自社で行なっていますが、特別認可法人のIPA(情報処理振興事業協会)から、アジアの文化交流促進ということで開発依頼、および支援を受けているものもあります。ニーズとしてはロシア語も多いとは聞いています」

----社内には中国あるいは韓国の方もいらっしゃるのですか。

高「ほとんどは日本人ですが、中国人5パーセント、韓国人5パーセントといったところです。私も韓国籍を持っています」

----ソフトの市場からいうと、中国と韓国はどのような比率になるのでしょう。

原田「高電社が抱える中国語および韓国語ワープロソフトのユーザーは約3万人おりますが、中国語と韓国語の市場は5:2くらいです。これで中国市場、韓国市場のニーズがおよそ把握できるのではないかと考えています」

高「TVの語学講座の割合、日本企業の進出の割合、日本人の関心の度合いなどもそれくらいではないでしょうか」

----ユニコードに関しては、どのような立場を取っているのですか。

原田「われわれは主導権を握る立場にはありません。日・中・韓、各国の主張もあるわけですし、世界全体の流れに応じて柔軟に対応していくというスタンスですね。中国語ではGBコードやBIG5コード、韓国語ではKSコードといった独自のコードがありますが、それらを抑えて一気にユニコードが普及するということはないと思います。時間のかかる問題ではないでしょうか」

----今後の事業展開は。

高「生鮮食品のように回転が激しい業界だけに、対応のスピードには注意しています。現在、ソフトウェア事業部とPC事業部の売上は半々。ただ、高電社は元来ソフト会社ですからあくまでもソフトを核に据えるつもりです」

原田「ソフトウェア事業部でいえば、中国語関連、韓国語関連ソフトが今後も中心となるでしょう。日中翻訳ソフト開発のほか、韓国語ではワープロソフト、翻訳ソフトが出揃いましたので、バージョンアップを進めています」

高「各国で研究が進められている、母国語の音声認識についても期待していますが、今はどこも中途半端です。コンピューターは口は達者になってきたけど、まだ耳は悪いですね」

高「われわれの目標は、言語の国境をなくすことにあります。異なる言語を話す人とも不自由なくEメールのやり取りをしたり、アジア各国のTV放送を互いに楽しめるようにできないか、などと考えています。需要もあると思います。そして、将来的にはひとつの機械を目の前にポンと置けば、それを媒介としていろんな国の人たちが会話できる。そういうのが理想ですね」

(報道局 浅野広明)

http://www1.mesh.ne.jp/KODENSHA/

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