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【INTERVIEW】インフォシティ・岩浪剛太氏「コンテンツ主導型のサービスを提供する」

1998年04月22日 00時00分更新

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 Bitcast方式は、地上波データ放送のひとつで、電波のすき間の帯域のVBI(垂直帰線期間)を使用して、HTMLなどのデータを1分間に最大300KB送ることができる。TBS((株)東京放送)が昨年6月に、大阪の(株)毎日放送(TBS系列)が今年3月からサービスをスタート。(株)フジテレビジョンも6月1日に開始する。Bitcast放送の現状と動向について、同技術を開発した(株)インフォシティの岩浪剛太(いわなみごうた)代表取締役にお話を伺った。



----現在どのようなコンテンツが配信されているのでしょうか。

 「TBSでは、朝10時から放送を行なっていますが、“ワンダフル”など特に深夜の時間帯で、番組と連動したコンテンツが送られています。これは深夜番組は情報系のものが多く、レストランの地図などを配信するなど連動がしやすいからです。かえって、ゴールデンタイムに放映されるドラマでは、連動した情報を送ろうとしても、有名女優の写真1枚の扱いからして著作権上難しくなってきます。フジテレビでは(子ども向けの)“ポンキッキーズ”で、番組中に行なわれる工作の材料などの情報を放送する予定です。Bitcastの視聴者はインターネットユーザーと層がほぼ同じと言われてますが、お母さんや子どもなど向けに発信することで、ユーザー開拓をしていくという試みです」



 受信するには、文字放送に対応したPC用ボードを搭載したパソコンと、番組を見るための専用ブラウザーソフト『Bitcast Browser』が必要。対応ボードは現在、(株)アイ・オー・データ機器と日本電気(株)がBitcast Browserを同梱して販売している。また日本電気は対応ボードを標準搭載した家庭向けパソコン『CEREBシリーズ』も販売している。Bitcast放送の実際の視聴者数は不明だが、アイ・オー・データでは昨年6月の発売以来、1万5000枚を販売したという。

----今後ユーザーを拡大するために重要なことは?

 「放送局を増やすこと。今回フジテレビが乗ってくれたことは大きい。また受信可能なハードを増やすこと。対応テレビやセットトップボックス(STB)など積極的に進めていきます。そしておもしろい番組作りですね。キャプテンシステムなどのニューメディアがうまくいかなかったのは、コンテンツがハードに依存したからだと思います。ハードに依存しないHTMLで番組を作り、コンテンツ・オリエンテッド(コンテンツ主導型)な媒体にしていきたいです」

----競合他社との今後の関係は?

 「競合としてはテレビ朝日の“ADAMS”やテレビ東京の“ITビジョン”などです。ADAMSは、朝日新聞や日刊スポーツなどニュース系のコンテンツがまずある、という感じです。ITビジョンはテレビで見られますね。一度始めたサービスをやめてBitcastに切り替えることはないでしょうが、Bitcastの採用局が今後増えれば、これらの競合もBitcast方式も併用するという可能性もあるのではないでしょうか。日本テレビはBitcastの採用を検討中です。しかし巨人戦など野球中継が目当てのユーザーが多数いると考えられ、中継に連動したコンテンツの放送は、技術的には可能ですが、そのシステムを構築するための初期導入コストが高くなるというのが問題です」

----『Bitcast Browser』は、『InternetExplorer4.0』をコンポーネントとして使用していますが、Windows98の発売によって、なにか仕様の変更はありますか?

 「Windows98とはいえ、搭載されているのはIE4.0なので、その意味では特に変更はありません。ただし、Windows98に対応させるという意味で、10月にBitcast Browserのバージョンを現在の1.5から2.0にあげる予定です。Win98のパワーマネジメントの機能に対応させて、たとえば深夜にソフトの配信などを行なう場合に(ビデオの録画のように)、受信の時間指定ができるようになる予定です」

----インフォシティの今後としては?

 「Bitcast Browserのライセンス供給などは、各社から値下げの要求もありますし、今後はBitcastの利用面で新しい可能性を見いだすようなコンテンツの制作に力を入れていきたいです。昨年11月に設立した関連会社の(株)ビットメディアは、CMに連動したコンテンツを制作する予定で、将来的には広告のプランニングの段階から係わっていきたいと思っています。またそれ以外にいろいろなアイデアがあって、たとえば人気音楽番組の『カウントダウンTV』で紹介されるアーティストの曲などで、“30位だったのは、誰だっけ?”とテレビを見ている人は思うわけです。そこでランク・インしたアーティストの情報と、さらにそこでCD-ROMの注文ができるようなコンテンツを流す。ただし実際にやろうとすると、著作権の問題、顧客やレコード会社の情報など莫大なデータベース・システムが必要になってくる。技術的には可能でも、実現するにはハードルがあるものがたくさんあるので、先行事例的なコンテンツを制作していきたいです」

(報道局 若名麻里)

http://www.infocity.co.jp/

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