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【INTERVIEW】ノーツドミノのインターネット統合を完了したロータスが次に目指すもの

1998年04月20日 00時00分更新

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 ロータスは、専用ノーツクライアントとほぼ同等の機能をWebブラウザーに対しても提供するグループウェア製品として『ロータス イントラネット基本導入パック』を発表した(→製品概要)。これは、同社が数年前から進めてきた、ノーツドミノへのインターネット/イントラネット技術の統合という戦略に沿うものであり、インターネット技術がネイティブ機能となるドミノR5.0を先取りした形になっている。

 『ノーツ ドミノ』によってグループウェア市場で圧倒的なシェアを誇るロータスがインターネット統合の次に目指しているものは何なのか? 同社の戦略企画本部副本部長である平野洋一郎氏にお話を伺った。



----『ロータス イントラネット基本導入パック』の製品としての位置づけを教えてください。

 「数年前から、ノーツ ドミノにインターネットの標準テクノロジーを統合する作業を進めてきて、技術的には、昨年11月にリリースしたR4.6でほぼ実現することができました。しかし、この段階では、はっきり言って、技術的には可能だけれども誰もがすぐに使えるというものではありませんでした。そこでさらに開発を重ね、ようやく今回、クライアントとしてWebブラウザーを利用するシステムを誰もがすぐに構築できる製品として、イントラネット基本導入パックの発売にこぎつけたわけです」

 「昨年の8月から、専任のシステム管理部門を持たない中小規模の事業所を重点的なターゲットに据えた戦略を進めていまして、これまでに、インストールや初期設定などを簡略化した『ファーストステップキット』を提供したり、そこにフォーカスしたセミナーを開催したりしてきました。今回のイントラネット基本導入パックも、こうした戦略の一貫として位置づけられる製品で、R4.6で完成された技術をベースに満を持しての投入となります。これによって、中小事業所への販売がいっそう加速されることになると考えています」

----イントラネット基本導入パックでは、すでにあるサードパーティー製品と競合するような機能も提供されるようですが?

 「確かにそういう面もあると思います。これは、ファーストステップキットで漢字ユーザー機能を提供したときにもそうだったのですが、競合する面はあるものの、標準としてその機能が取り込まれたとなると、今度はそれをベースにしたさまざまなアプリケーションを提供するビジネスが新たに生まれます。ですから、サードパーティーさんとの関係をきちんと保っていれば、ビジネスとしてはどんどん新しい方向へと向かっていくわけですから、バッティングすること自体が問題になることはないと思います」

 「また別の見方をすると、今回のイントラネット基本導入パックで提供している『ドミノワークスペース』は、JavaやJavaScript、DynamicHTMLを駆使しており、Webアプリケーションの新しい方向性を示しているという面もあります。ドミノワークスペースそのものが、“こんなことができるんだ”、“こうすればできるんだ”という、サードパーティーさんに対する生きたサンプルとなっているわけです。当然ながら、ドミノワークスペースでは、Javaアプレット以外は、すべてソースコードが公開されていますので、設計も含めて参考にしていただけますし、ユーザーがカスタマイズすることもできます。あるいは、そうした部分のカスタマイズのビジネスというのも発生するかもしれません」

----ドミノワークスペースでは、JavaやJavaScript、DynamicHTMLといったWeb技術がすべて使われていますが、機能のすべてをJavaで提供する方法もあったと思うのですが?

 「それについてはかなり研究しました。社内でもいろいろ議論があったのですが、こういう部分ではこれを使ったほうがいいということを重ねていったら、結果的に、Webで使えるテクノロジーをほとんど網羅してしまったというのが本当のところです。パフォーマンスや互換性、あるいはその機能の将来性やバックワードコンパチビリティーなど、あらゆる角度から検討して、それぞれの部分で最適な技術を採用しました。実は、開発当初はかなりJavaにシフトしていました。しかし、Javaは、ロードしたあとの動きは速いけども、アプレットの数が増えるとクライアント側にメモリーがたくさん必要になるし、初期化にも時間がかかってしまうので、全部の機能をJavaで作るのは最適ではないだろうという結論に達しました」

----Webブラウザーからも、専用クライアントとほぼ同じ機能を利用できるようになったということで、クライアントのライセンス体系も新しくなりましたね。

 「基本的には、ノーツクライアントと同様、Webブラウザーからのアクセスでも、ドミノサーバにアカウントを作成して電子メールなどの機能を利用する場合はアクセスライセンスが必要です。これまでと違うのは、Webブラウザーからアクセスする場合に、ドミノサーバにメールボックスを作成しなくても、ライセンスが必要になったという点です。これは、ドミノワークスペースというアプリケーションを提供したことで利用できる機能が格段に豊富になったということによるのですが、他社のグループウェア製品でも、多くは同じ方法でライセンスを計算しています」

----なるほど。ドミノサーバでユーザーを管理しない利用については、これまでどおりライセンス料は必要ないわけですね。

 「そうです。その点についてはまったく変わっておりません。ちなみに、Exchangeなどでは、クライアントが専用ソフトウェアであろうとWebブラウザーだろうと、ライセンス料金は同じなのですが、ドミノでは、Webブラウザーからアクセスする場合は、専用クライアントよりも安く設定しています。このWebブラウザーによるアクセスに対しては、ドミノサーバ上にメールボックスを作成する『フルアクセス』(1ライセンス7400円から)と、メールボックスを作成しない『ベーシックアクセス』(同3400円から)の2種類を用意していて、これは、専用クライアントである『ノーツデスクトップ』の1万3800円よりもかなり安く設定しています。

----イントラネット基本導入パックをリリースによって、ノーツドミノのクライアントビジネスに変化はあるのでしょうか?

 「はい、確実にWebブラウザーをクライアントとして利用しようというユーザーが増えてくると思います。これは、イントラネットを指向する世の中の流れとしてもそうですし、ロータス自身が、Webブラウザーからでもこれだけのことができますよというふうにプロモートしていくことで、さらに増えるでしょう。私どもとしては、これによって、ユーザーの底辺が増えることを狙っているわけです。また、中小事業所という重点ターゲットを考えた場合、これまでよりもさらに導入コストを安く抑えることができるというのは、ひとつのアピールポイントにもなると考えています。しかも、他社はアクセスするクライアントソフトウェアに関わらずすべて同じ料金ですから、その点でも差別化できると思います」

----今回提供されるドミノワークスペースはR1.0となっていますが、今後は、ドミノサーバ本体と一緒にバージョンアップされていくことになるのでしょうか?

 「はい。『ドミノ R5.0』を国内で年内にリリースする予定ですが、ドミノワークスペースも同時にバージョンアップして、今よりもさらに良いものにしていきます。このドミノR5.0では、完全にインターネットネイティブな環境になる予定です。インターネット技術がすべての面においてドミノの標準となり、ドミノサーバが、かなりの機能をWebブラウザーに対して提供することになります。そういう意味では、今回のイントラネット基本導入パックで提供される機能は、R4.6とR5.0の中間的な位置づけと言うこともできるでしょう。もちろん、ノーツ独自のプロトコルもそのままサポートされますので、現状のインターネット技術では実現できないような機能については、それを利用することになります。これまでは、まずノーツクライアントがあって、“Webブラウザーもクライアントとして使えます”ということでしたが、R5.0では“ノーツもWebブラウザーもドミノのクライアントです”という言い方になるわけです」

----そうすると、いよいよインターネット技術を取り込むというドミノの目標は達成されることになりますね。

 「そうです。インターネットとの関わりで言えば、今までは、われわれがインターネット技術をドミノに取り込んできて、ずっと追いかけてきたわけですが、今後は、インターネット標準では実現されていない機能を積極的に提案して、標準化を進めていくというフェーズに入っていくことになります。たとえば、インターネット上のレプリケーションプロトコルなどを策定しようとしています」

----この先、ドミノは何を目指していくのでしょうか?

 「ドミノというグループウェア環境の上で何をするのか、どういうふうにそれを活用していくのか、ということになると思います。ノーツが出てきたころは、部署やせいぜい社内の情報共有を目指していたわけですが、インターネットに接続してしまった今日では、個人も会社も世界も繋がってしまって、いろいろなところに、いろいろなレベルの情報がゴチャゴチャ存在するようになりました。それをどうやって自分のために活用するのか、ということです。これが、今年、ロータスが掲げる『Knowledge Management』ということです。すでにそれを目指した製品開発が始まっていて、ドミノをプラットフォームにして、そういった点にフォーカスした製品をこれから投入していくことになります。ご期待ください」

(聞き手 風穴 江)

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