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【レビュー】HPの日本語版Pocket PC『Jornada 548』──スタイリッシュなビジネス仕様PDA

2000年08月18日 23時04分更新

文● 編集部 小林久

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米国で4月に発表された『Pocket PC』が、今秋日本市場に登場する。その先陣を切るのが、日本ヒューレット・パッカードの『Jornada 548』だ。編集部では、その発売に先立ち、日本HPから実機の貸し出しを受けることができた。短期間の貸し出しのため、未検証の部分も多いが、ファーストインプレッションという形で、その機能と特徴を紹介しよう。

Jornada 548のデザインは、Jornada 680などを手がけたヨーロッパのデザイナーが担当している
本体カラーはビジネスユーザーが違和感なく使えるダークグレーで、フリップは取り外し可能

シック&エレガントな薄型ボディー

滑らかな曲線を主体に構成された格調高い輪郭線。ダークグレーを基調としたシックな色合い。そしてアルミ製の薄く、ずっしりとした本体の質感。Jornada 548は玩具のような楽しさを前面に押し出したこれまでのPalm-size PCとはひと味違った大人のガジェットとしての魅力を満喫できるPDAだ。同社は、Jornadaシリーズのデザインにヨーロッパのデザイナーを起用しているが、そのデザインの秀逸さは、米国版の従来機『Jornada 430』が、映画『007 World Is Not Enough』に登場したことからも推し量れる。

Jornada 548のフリップケースは曲線を主体にしたデザイン。アルミ製で手に持った際の感触も上々だ
フリップケースの裏側にはスタイラスを収納。試作機ではスタイラスが外れやすく、液晶に当たって電源が入ってしまうことがあった

OSを一新した最新機種Jornada 548では、PDAに求められる携帯性を重視し、約6mmの薄型化に成功。本体の厚みはPocket PCとしては最薄レベルの16mmとなった。液晶保護用のフリップカバーにはスタイラスの収納が可能で、兄弟機のハンドヘルドPC『Jornada 680/690』同様、ギミックの面でも楽しませてくれる。本体には前面に4つのアクションボタンと電源ボタン、左側面にメニュー選択用のスライドキーとボイスメモ起動ボタンを装備。各キーには使用頻度の高いアプリケーションを割り当てることができる。

本体前面には4つのアプリケーション起動ボタンと電源ボタンを装備

基本仕様は米国モデルと同等で、クロック周波数133MHzのSH-3プロセッサー、32MBの内蔵メモリー、解像度240×320ドット/4096色表示に対応した3.8インチカラーSTN液晶を搭載。米国では16MBメモリーの下位モデル『Jornada 545』も用意されているが、日本市場には投入されない。これは、日本語化でOSやソフトウェアのメモリー消費が大きくなることを考えると、現実的な選択と言えるだろう。バッテリーはリチウムイオン充電池で連続8時間の使用が可能。通信などを行なうとかなり短くなるが、スケジュールやアドレスなどが中心なら、数日~1週間程度使えるだろう。

Jornada 548のSH-3-133MHzは、Windows CE用のCPUとしては比較的低速な部類に入るが、OSがかなり軽くなっており、ペン操作に対するレスポンスや各アプリケーションの起動時間は速い。ブラウザーなど重いアプリケーション起動時にも砂時計は表示されずストレスなく使用できる。ただし、評判の悪かったタスク管理についてはまだまだ改善の余地があるようだ。新しいアプリケーションを次々と起動していくとかなり動作が遅くなる場合があった。ただし、タスク管理機能が向上したWindows CE3.0をベースにしているためか、その頻度は格段に減っている。なお、テスト機のOSは最終版でないため、製品化の際に改善される可能性もある。

付属のクレードルはUSB対応なので、シリアル接続に比べ高速にデータ転送が可能
USBポートのないユーザーのためにシリアルケーブルも付属する

標準アプリケーションには、MS標準のPocket Outlook、Pocket Internet Explorer、Windows Media Player、Pocket Word、Pocket Excelなどに加え、7種のHPオリジナルソフトを搭載している。その内容は実にHPらしく、目立たないが実用性の高いソフトが揃っている。たとえば、『HPタスクスイッチャー』と『HP設定』は、起動中のソフトの切り替えと終了、ディスプレー/音量/メモリー残量の確認が行なえるアプリケーションである。これらは、Windowsのメニューをたどって行けば設定できるが、階層が深く見つけにくい。特に前者は先に述べたパフォーマンスの問題と、アプリケーションを終了できないのは心理的に気持ち悪いという2つの理由から重宝するだろう。

オリジナルソフトには、このほかアプリケーションランチャーの『HPホームメニュー』、メモリーの内容をCFカードにバックアップができる『HPバックアップ』、タイマー付セキュリティー機能の『HPセキュリティ』などが用意されている。

さらに快適な操作感のために

満足度の高いJornada 548だが、まったく不満がないわけではない。そのひとつがコンパクトフラッシュ(CF)スロットだ。従来のPalm-size PCの大半は厚さ5mmのTypeIIスロットを搭載していたが、Jornada 548は厚さ3.3mmのTypeIスロットを搭載する。データ保存という点では問題ないが、周辺機能を統合したカードの多くはTypeII対応で、従来使用していたモデムカードや携帯電話インターフェースが使えない可能性がある。

コンパクトフラッシュスロットは本体上部に装備する

また、CF TypeII対応の内蔵型PHS電話機『P-in Comp@ct』を使用することもできないが、1/4VGAのカラー液晶とオンラインブラウズに対応したPocket Internet ExplorerをPHS内蔵端末に近い感覚で使えればさらに大きなメリットとなっただけに残念な部分だ。可能なら、TypeIIのカードを差し込めるアダプターなどを用意してほしい。

一方、ハードの操作性に関しても若干の注文がある。本体側面にあるボイスメモ用のボタンをスライドキー(ジョグスイッチ)の真横に置いて、スタートメニューの起動ボタンにしてほしいこと、電源ボタンは本体正面ではなく、左手の親指が来る位置にほしいことの2点である。Pocket PCでは、本体にスライドキーを備え、片手でメニュー操作ができるようになっているが、Jornada 548では「本体の起動」と「アプリケーションランチャ」の表示が両手でないと操作できない。

本体左側面にはジョグスイッチ、録音ボタンなどを装備。ボタンの内容はスタートボタンなどを割り当てられる

録音ボタンに関してはOS側で別の機能をアサインし直せるので問題ないが、日本国内ではボイスメモの使用頻度は非常に少ない。出荷時にあらかじめ設定しておくぐらいの配慮があってもいいだろう。なお、試作機では、OS付属のWindows Media Playerで、CFカード内に記録したMP3ファイルの再生を行なうことができなかった。試用期間が短かく詳しく検証できなかったため、この点に関しては改めて確認し、別途レポートする。

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