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水球ルールの“アクロカップ”や、災害の救助をテーマにした“レスキューロボットコンテスト”など、新しい対戦競技も登場――

2000年08月15日 19時47分更新

文● ジャーナリスト 高松平藏

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大阪国際会議場でこのほど、“ロボットフェスタ関西2001”のプレ大会が開かれた。2001年の本大会で開催される新規競技の実証実験ほか、同イベントの認知度を高めることがそのねらいだ。

今月11日に行なわれた開会式。テープカットの模様

ロボットをテーマにした総合的なイベント

同プレイベントが行なわれたのは8月11日から13日まで。夏休みの週末とあってか、会期中に親子連れなど5440人が訪れた。会場ではロボットの競技大会のほか、最新ロボットやジオラマ、フィギュア、ロボット映画のポスターなども展示された。また、ロボットと触れ合うことを目的に“アイボとあそぼ!”といった催しも行なわれた。

映画のポスターと撮影に使われたロボット

同イベントの正式名称は“ロボット創造国際競技大会 関西2001プレ大会”。来年開かれる本大会“ロボット創造国際競技大会 関西2001”は、ロボットをテーマにした世界でも初めての催し物だ。これまで、NHKのロボットコンテストなど、ロボットの競技大会はいくつかあったが、一堂に会して総合的に行なおうというもの。

「これまで競技者を中心に行なわれてきたようなところがあるが、一般の人へも門戸を開いていく」(ロボット創造国際競技大会関西2001実行委員会事務局)。プレイベントは今回の大阪のほか、11月に神奈川県でも開かれる予定。

LEGOブロックを使ったロボット教材
音声命令で動くロボット
ご存知、ファービー人形

本大会で行なわれるのは、各国の大学生が共同作業でロボットを製作し競い合う“ロボコン”のほか、サッカーのワールドカップ“ロボカップ”など。さらに、小中学生が参加できる虫型ロボットによる競技大会も用意される。

ロボットフェスタ関西小中学生が参加する虫型ロボット競技会。京都や奈良、兵庫でも行なわれた

さらに“アクロカップ”という新規競技も行なわれる。無線で動く水上ロボット“アクアカップロボット”を使ったもので水球のルールで対戦競技。創造性とチームワーク、科学技術への興味を喚起することが目的だ。

新規競技に関して、プレイベントでは実証実験という意味あいも大きい。ロボット創造国際競技大会中央実行委員会会長、森政弘氏は開催に先立ち「成功には失敗がつきもの。失敗を出し尽くしてください」と挨拶した。

ところで、今回の新規競技“レスキューロボットコンテスト”と“ロボットカップレスキューシミュレーションリーグ”には注目すべきものある。

“レスキューロボットコンテスト”は災害での救命救助がテーマ。競技場は大地震で倒壊した市街地を設定したもので、がれきの中にあるダミー人形を遠隔操作のロボットで救出するもの。ロボットを使った救助活動や救助機器のアイデアを通して、研究テーマの発掘と実用化につなげる。

“ロボットカップレスキューシミュレーションリーグ”も災害救助に関する競技だ。ただしこちらは都市災害のシミュレーション。競技につかうのはロボットではなく、プログラムだ。人工知能やロボット工学を使って、どれだけの人を助けられるか、被害を最小限にとどめられるかといったことを競う。いずれも災害救助に向けて、技術の社会貢献を意識したものだといえる。

シミュレーション型のロボカップレスキューの会場。技術を社会貢献につなげる

ロボット競技を通じて、理工系学生に感動を

プレ大会開催日には“ロボットフェスタへの期待~ロボット競技はどのような未来を目指すのか”というフォーラムも開催され、三菱総合研究所主席研究員の野口和彦氏によるコーディネートで進められた。近年、科学技術に関心を持つ子供が減少傾向にあり、技術立国としての日本の将来に危ぶむ声がある。これに対して、ロボット競技を通じて人材を育てることが重要というのが議論の共通認識だ。

基調講演を行なった森正弘氏は、'81年に同氏が初めて東京工業大学で行なったロボコンのきっかけや、低予算でロボットをつくることが創造性を育むことにつながると話した。

森政弘氏(左)と浅田稔氏(右)。「ロボットの研究は人間を研究することだ」(浅田氏)

「動くかどうか答えがないのがロボットづくり。グループ製作を行なった中学生はその充実ぶりを『苦しくて楽しかった』と述べている。理工系の教育分野に“感嘆詞”ができたかたちだ」。また、衆議院議員で経済企画総括政務次官の小野晋也氏も科学技術の分野で「感動のある世界をつくらねばならない」と述べた。

左から野口和彦氏、丸野豊子氏、小野晋也氏。「現代にあってITは欠かせない。しかしインターフェースはもっと開発する必要がある。将来の情報端末はロボット型のものになるだろう」(小野氏)

ロボットのグループ製作が子供たちに好奇心と感動、自分で考える力が育まれるということに対して、キッズプラザ大阪の館長、丸野豊子氏は「当館では、子供が道具の使い方や素材について学べるようにしている。いわばロボットづくりの基本部分を担っている」と強調した。

ロボット競技の向こうにあるもの

来年行なわれる本大会では“ロボット憲章”を提唱することを予定している。これを受けてロボットと人間の関係性などについても議論が行なわれた。

これまでのロボットと人間の関係を省みると、機能的には人間の身体のある部分を強化するというものだ。たとえば、自動車などはヒトの移動のための“足”の機能を強化しているわけだ。これに対して、昨今、感情を扱うレベルにまで技術が到達しているという。たとえばテレビも電源がはいっていなければ、ただのハコ。しかし映し出される映像によってヒトの感情を動かす。「将来のロボットは人間の心に影響を及ぼすことになるだろう」(小野氏)。

ダイハツ工業の開発した人力車ロボット『鉄腕アッシーくん』
日常活動型ロボット『ロボビー』。子供と抱擁もできる

また、ロボットがこれまで以上に生活に変化をもたらすと考えられる。なぜならば、生産のためにはたらく工場のロボットのみならず、介護目的のものなどの分野に普及していくからだ。

これまで、製造システムや利益重視という観点から、技術体系に人間が合わせてきたという側面もある。同時に「ロボットを人間の目下においていた」(森氏)。しかしながら、今後は「人間とモノの関係がかかわり、人間とロボットのパートナーシップが必要になる」(小野氏)。

ジオラマの作品より。生活にロボットが入ってくる

本大会での“ロボット憲章”提唱をふまえて、日本はロボットの発展について優位性があるとパネラーのひとり、大阪大学大学院工学研究科教授の浅田稔氏は述べた。なぜなら、“ヒトを造るのは神”という宗教的背景が欧米には支配的な傾向がある。これが人間型ロボットの発展や普及に影響するという。これに対して、日本ではアニメなどの影響もあり“ロボットは友達”という“ロボット神話”が根付いている。「ロボットと人間の関係性を提示するオピニオンリーダーとしての役割が日本にはある」(同氏)との見解を示した。

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