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【21世紀夢の技術展 レポート Vol.4】ホンダのP3見ずしてゆめテクを語るなかれ!――水槽の水を揺らさずに運ぶP3初公開、チーフエンジニアに速攻インタビュー!!

2000年07月21日 00時00分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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本田技研工業(株)(以下、ホンダ)のブースは、同社が開発している自律歩行人間型ロボット『P3』(HONDA HUMANOID ROBOT PROTOTYPE 3)一色。今回のゆめテクでは、自律歩行や階段昇降といった、これまで公開されてきたデモに加え、歩行しながら物をなるべく揺らさずに持ち運ぶという新技術を付加したデモが初公開されるとあって、一般来場者はもちろん、報道陣も多数ブースに詰め掛けた。

本邦初、物を揺らさずに運ぶP3


“Do you have a HONDA?”のTVCMで一躍有名になった“歩く企業秘密”『P3』。身長160cm/体重130kgのナイスバディで、最大歩行速度は時速2km、動作時間は約40分。壇上に登場し、会場の皆さんに手を振ってご挨拶
“Do you have a HONDA?”のTVCMで一躍有名になった“歩く企業秘密”『P3』。身長160cm/体重130kgのナイスバディで、最大歩行速度は時速2km、動作時間は約40分。壇上に登場し、会場の皆さんに手を振ってご挨拶





P3のデモは、ホンダのロボット開発チームのチーフエンジニアである竹中透氏の説明を交えつつ行なわれた。写真はP3と、まっすぐな軽い棒を台に立て、台を傾けたもの。5度傾けると、棒も5度傾くが、P3は自分で下半身のバランスを取り、身体が地面に垂直になるように立つ(写真上)。さらに台を10度傾けると、棒は倒れてしまうがP3はなおもバランスを取り続けている(写真下)
P3のデモは、ホンダのロボット開発チームのチーフエンジニアである竹中透氏の説明を交えつつ行なわれた。写真はP3と、まっすぐな軽い棒を台に立て、台を傾けたもの。5度傾けると、棒も5度傾くが、P3は自分で下半身のバランスを取り、身体が地面に垂直になるように立つ(写真上)。さらに台を10度傾けると、棒は倒れてしまうがP3はなおもバランスを取り続けている(写真下)



片足立ちするP3。止まっているように見えるが、始終自分自身の重心を計算し、少しずつ動いてバランスを保っているという
片足立ちするP3。止まっているように見えるが、始終自分自身の重心を計算し、少しずつ動いてバランスを保っているという



階段を降りるP3。階段昇降をする際は、階段の手前で立ち止まり、階段を確認した後、バランスが取れるよう自分の立ち位置を調整してから1歩1歩踏み出していく
階段を降りるP3。階段昇降をする際は、階段の手前で立ち止まり、階段を確認した後、バランスが取れるよう自分の立ち位置を調整してから1歩1歩踏み出していく



今回初公開となるスペシャルデモは、水の入った水槽や手さげ袋を大きく揺らさずに持ち運ぶという“揺らぎ制御技術”を用いたもの。この制御を使用しないと、水や袋が大きく左右に揺れるが、制御を利用すると、水槽や袋を持っている手を揺らしながら下半身でバランスを取り、揺れ具合を押さえる。

本邦初、水槽を運ぶP3。揺らぎ制御技術を利用して、さほど水を波打たてないように持ち運んでいる。人間である記者でさえ、ときどきお盆の上の水を運んでいる最中にこぼすというのに……
本邦初、水槽を運ぶP3。揺らぎ制御技術を利用して、さほど水を波打たてないように持ち運んでいる。人間である記者でさえ、ときどきお盆の上の水を運んでいる最中にこぼすというのに……





手さげ袋を持ち運ぶP3。制御を使わないと袋は左右に激しく揺れるが(写真上)、制御を使うとほとんど揺れない(写真下)
手さげ袋を持ち運ぶP3。制御を使わないと袋は左右に激しく揺れるが(写真上)、制御を使うとほとんど揺れない(写真下)



ホンダのロボット開発の歴史がまるわかり

P3のデモ以外の展示ブースも見逃せない。1歩に30秒かかって静歩行(引き摺り歩き)で直線移動を実現したホンダの電動ロボット第1号『E0』(1986年発表)をはじめ、ホンダがこれまで開発してきたロボットが一堂に紹介されており、ホンダのロボット開発の道のりがひと目でわかるようになっている。

左から『E0』(1986年製)、『E2』(1988年製)、『E6』(1992年製)


『P1』(1994年製)(左)と『P2』(1995年製)(右) 『P1』(1994年製)(左)と『P2』(1995年製)(右)



ステージでは、P3のデモ以外にもイベントを行なっている。写真は“Do you have a HONDA?”のTVCMに自分も参加できるというイベントで、希望者は地下鉄から出てP3を追いかけるという動作を行なうと、その場でその動きとCM画像が合成される仕組み。合成されたCM映像はビデオテープにして参加者にプレゼントされる
ステージでは、P3のデモ以外にもイベントを行なっている。写真は“Do you have a HONDA?”のTVCMに自分も参加できるというイベントで、希望者は地下鉄から出てP3を追いかけるという動作を行なうと、その場でその動きとCM画像が合成される仕組み。合成されたCM映像はビデオテープにして参加者にプレゼントされる



ホンダのチーフエンジニア竹中氏インタビュー

ASCII24では、スペシャルデモを終えたばかりのホンダチーフエンジニアの竹中氏にお話を伺うことができた。

――水槽の水を揺らさずに運べるのはすごいですね

竹中氏「両手で揺らしながら下半身でバランスを取っているんですよ。実はまだ開発途中で、先日できるようになったばかりなんですよ(笑)。水槽の水はこぼれないけど、小さなコップの水はこぼれてしまいますね」

ホンダのロボット開発チーム。右側が竹中氏。お忙しい中、にこやかに応えてくださった
ホンダのロボット開発チーム。右側が竹中氏。お忙しい中、にこやかに応えてくださった



――今後の開発ポイントは

竹中氏「歩行のスピードアップですね。まだ人間に比べると遅いんですよ。それから軽量化。ホンダの目指しているロボットは、一般家庭に存在して人間の手伝いをしたり、いっしょに遊んだり勉強したりできるロボットですから。一般の人が触れられる世界から入っていきたいですね」

――音声認識や対話機能はどうですか

ゆめテクのデモではやりませんが、スピーカーを備えていて音声合成でしゃべったりできるんですよ。ただそれをやると一般の皆さんへのイメージが固まってしまうので今回はお見せしません。音声認識はまだ弱いですね。現在では、言語処理からアプローチするロボットがほとんどですが、ホンダはその逆をいっていて、まず運動機能からアプローチしています。人間の脳の働きを見ると、確かに言語処理を行なっている部分は大きいですが、それと同じくらい運動機能も重要なんです。ところが、ロボットの運動機能の研究に関しては世界的にも希薄なんです。P3は2足歩行が脚光を浴びているので、「じゃあ、バカなの?」と言われるんですが(笑)、運動機能も知能のひとつですよね。まだ運動機能の制御の段階です。それから知能をやっていきたい。表現能力などもまだまだですから」

――歩くのを見せていただくだけでも感動しますが(笑)

竹中氏「手と足を持っているので、いろいろな作業もできるようにしたいんです。足と手をいっしょに使って作業できるロボットというものを普及させたいですね。揺らぎ制御も、手と足の動きを調節しながら動かしているんです。手と足を協調させないと、揺れ止めひとつできないんです。カメラの揺れ止めとは異質だと思ってください」

――デモは子供から大人まで一般の人も夢中になって見入っていましたね

竹中氏「ホンダの研究所の中よりも、一般の人のほうがロボットのいろいろな可能性を発見できるのではないかと思います。PCも、一般の人はメーカー側が想像つかないような使い方をしていますよね。それと同じように、ロボットについても、一般の人のほうがいろいろわかるのではないでしょうか」

揺らぎ制御技術を用いたP3スペシャルデモは7月21日、22日、23日の15時から30分程度(その他の時間帯および別日は歩行などの通常デモを行なう)。ちなみに、なぜスペシャルデモが3日間だけかというと「開発チームがそっくりこの会場に来ていて、研究所をそのままこのブースに持ち込んだようなものなんですよ(笑)。私たちは開発者なので、戻って開発を進めないと……」(竹中氏談)。21~23日はホンダブースがロボット研究所。お父さん、今度の土日は東京ビッグサイトで決まりです。

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