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組み込み用のハード、ソフト、OSが揃い踏み!! 第3回 組込みシステム開発技術展(ESEC)より

2000年07月13日 00時00分更新

文● 柴田文彦

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7月12日から7月14日まで、東京ビッグサイト東4、5、6ホールで、リードエグジビション ジャパン主催の“組込みシステム開発技術展”が開催されている。この展示会は、文字通り民生機器などを対象とした、比較的小規模な組み込み用のハードウェア、OS、そして開発環境に関する展示を中心としたもの。第9回ソフトウェア開発環境展(SODEC)、第5回データウェアハウスEXPO(DWH EXPO)、第2回データストレージEXPO(DS EXPO)という3つの展示会と同時開催で、入場券は共通に使用可能。

主に大企業での顧客データベースの管理システムなどを対象とした“データウェアハウスEXPO”と、そのためのハードウェアを扱った“データストレージEXPO”に関しては、別のレポートを参照していただきたい。

東京ビッグサイトで開催中の“組込みシステム開発技術展”。第9回ソフトウェア開発環境展(SODEC)、第5回データウェアハウスEXPO(DWH EXPO)、第2回データストレージEXPO(DS EXPO)も同時開催東京ビッグサイトで開催中の“組込みシステム開発技術展”。第9回ソフトウェア開発環境展(SODEC)、第5回データウェアハウスEXPO(DWH EXPO)、第2回データストレージEXPO(DS EXPO)も同時開催



“組込みシステム開発技術展”と“ソフトウェア開発環境展”に関しては入口も共通で区切られておらず、どこからどこまでがどちらの展示会かは、見学者には正確には分からない。前者が、文字通り民生機器などを対象とした、比較的小規模な組み込み用のハードウェア、OS、そして開発環境に関する展示を中心とするのに対し、後者では、主に今注目を集めるeコマースに対するソリューションなど、かなり大規模なシステムを提供する大手ソフトウェアメーカーの展示が中心となる。

例えば、マイクロソフト(株)では“.net”がテーマとなっていて、VisualStudio.netや.netPlatformなど、ウェブアプリケーションを意識した開発ツールを大々的に展示していた。

“.net”をテーマに掲げたマイクロソフトのブース
“.net”をテーマに掲げたマイクロソフトのブース



同様に日本電気(株)では、インターネット上のウェブサーバーと結合して動作するアプリケーションサーバー、WebOTXを中心とするインターネットビジネス対応システムを披露していた。

インターネットビジネス対応システムを展示した日本電気のブース
インターネットビジネス対応システムを展示した日本電気のブース



以下、本題の“組込みシステム開発技術展”の概要をレポートする。

浸透しているITRON

“組込みシステム開発技術展”の展示は、組込みシステム用のOSやその開発環境といったソフトウェア、機器に組込み用のコンピューターや、それを開発するための評価ボードといったハードウェア、そして組み込みシステムの設計、開発のサービスやコンサルティングを提供するソリューションの3つに大別することができる。いずれも技術的にみれば、パソコンの世界とさほど大きく異なるものはないが、目的が組込み用途に特化され、パソコンとは市場が大きくことなるため、パソコン中心の展示会とは雰囲気もかなり異なっている。十数年前の“マイコンショー”などを見ているような気がしてくる。

会場を回ってみると、多くのブースで「ITRONをサポートしています」といったパネルを表示していることが目に付く。実際、組込み市場では、ITRONは実質的な標準に近いシェアを持っていて、ITRONや、それをJavaに対応させたJTRONに準拠したしたソリューションを展示している会社が多い。JTRON仕様のリアルタイムOSでは、このところ何かと話題のJBlendは、開発元の(株)アプリックスだけでなく、他の多くのブースで目にすることができた。

アプリックスのブースでは、すでにJBlendを採用した製品として、SONYのMDビデオカメラMD DISCAMや三洋電機の業務用パネル端末MBC-J100、同社のデジタルカメラ画像保存・再生ツール(デジタルフォトアルバム)などの実機が展示されていて目を引いた。

JBlendを大きく掲げたアプリックスのブース
JBlendを大きく掲げたアプリックスのブース



家電製品に採用されているJBlendのデモ
家電製品に採用されているJBlendのデモ



JTRONに準拠したリアルタイムOSは、JBlendだけではない。富士通(株)のJ-REALOS/PJもその1つだが、これはJavaバイトコードを直接実行するJavaチップ上で動作するところに特徴がある。同社では、これを“組込みJavaソリューション”として展示していた。

富士通のブース。J-REALOS/PJを展示
富士通のブース。J-REALOS/PJを展示



JTRONに対抗する2つのOS

このようなJTRONの台頭に対して、負けじと対抗しているように見えるのが、組込み用としてはともに長い歴史を持つ2つのOS、QNXとOS-9である。

先日、日本法人を作ったことで話題となったQNXソフトウェアシステムズは、リアルタイムOSのNeutrinoと、その周辺技術を、各種の実機とともに展示デモしていた。

QNXソフトウェアシステムズのブースQNXソフトウェアシステムズのブース



このOSは、組込み用にも使えるウインドー表示システム、ウェブ対応ツール、GUI構築ツール、制御用アプリケーションの開発ツールなど、開発環境として幅広いエリアをカバーしている。しかも、このようなツール類が、非営利目的に限るものの、無償でダウンロードして使えるというキャンペーンを実施している。多くのWindowsマシン上で動作させることができる興味深い環境だ。展示されていたQNX採用機器の中で特に目立ったのは、以前にBeOSを採用するという発表もあった米ナショナルセミコンダクター社のWebPADだ。

QNX採用機器の中で目立ったWebPAD
QNX採用機器の中で目立ったWebPAD



マイクロウェア・システムズ(株)のOS-9は、もちろんMac OS 9とは何の関係もない、本家本元のOS-9である。このリアルタイムOSも、長い歴史と多くの実績を持ち、応用機器も多種にわたる。技術的にも多くの特徴を持っているが、今回の展示では、IEEE-1394やUSB、IrDAといった、通信や入出力デバイスに対するソリューションを、きちんと示していたことが印象に残った。

新しい通信や入出力デバイスに対する対応をしていたOS-9のブース
新しい通信や入出力デバイスに対する対応をしていたOS-9のブース



組込み市場進出を狙うLinux

はじめから組込み用に主眼を置いて開発されてきたOSに対して、言うまでもなく当初はパソコン用のOSとして開発されたLinuxは、組み込み市場に対する足がかりをつかみ始めたといっても良いだろう。Linuxのディストリビューターとして有名なレッドハット(株)が、比較的大きなブースを構えていたことにもそれが現われている。

組み込みLinuxの足元を固めつつあるLinux。写真はレッドハットのブース
組み込みLinuxの足元を固めつつあるLinux。写真はレッドハットのブース



またLinuxに関しては、これとは別の動きになるが、パシフィックソフトワークスジャパンでは、Linuxベースの組込み用ブラウザー、WebPilotの実機をデモしていた。

Linuxベースの組込み用ブラウザー、WebPilot
Linuxベースの組込み用ブラウザー、WebPilot



この他、組込み市場での展開も目指しているWindowsCEは、例えばコマツが展示していた産業用ボードなどにも採用されているが、少なくとも現状では大きな勢力とはなっていない。Windows CEに関しては、次期バージョンの3.0が出てから、動向を見定める必要があるだろう。

コマツのブース。組み込みの世界では、CE関係はまだ勢力が小さいようだ
コマツのブース。組み込みの世界では、CE関係はまだ勢力が小さいようだ



このレポートでは、個々の技術については詳しく触れられなかったが、興味深いものについては、今後折りに触れて連載コラム“OS包囲網”()の中で扱って徐々に取り上げていきたい。

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