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【INTEWVIEW】マルチメディア人材養成の教育機関、制作事業に着手。ビジョンの共有がカギ――インターメディウム研究所ディレクター、畑祥雄氏にきく

2000年07月12日 00時00分更新

文● ジャーナリスト/高松平藏

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マルチメディアクリエーターを養成するインターメディウム研究所(以下『IMI』)は、このほどデジタルコンテンツの制作事業に着手した。人材育成事業との相乗効果を図る。IMIのディレクター、畑祥雄氏に、先ごろオープンしたコンテンツ制作工房『インターメディアラボ』の狙いについてきいた。

「“編集加工”がITのカギだ」という畑祥雄氏。写真家でもある
「“編集加工”がITのカギだ」という畑祥雄氏。写真家でもある



21世紀の人々に贈る文化コンテンツをつくる

IMIはコンテンツ制作工房『インターメディアラボ』を、今年5月31日大阪府吹田市の万博公園内にオープン。同地区では国立民族学博物館をはじめ大阪大学、千里ライフサイエンスセンターなどがひしめきあっており、「文化の蓄積が高いのが魅力」とディレクターの畑祥雄氏はいう。

ラボでは映像編集用のパソコンやワークステーションなどを完備。出版事業、CD-ROMや映像制作に関わるあらゆるコンテンツ事業に対応できる。初年度で8000万円、3年後には3億以上の売上を見込んでいる。

インターメディアラボの見取り図
インターメディアラボの見取り図



ところで、同ラボには2つの経営戦略が組み込まれている。1つは“千里文化”とのコラボレーションだ。同地区の各施設が蓄積してきた文化芸術、科学の研究成果を工房でデジタルコンテンツ化することを見込んでいる。文化や教育のテレビ番組などを手がけたいという。

畑氏によると、先端科学や文化を視覚化するのが同ラボの目的としている。「我々は19世紀の人々から図書館をもらうことで、過去の人類の営為を知ることができた。21世紀に向けて、我々がデジタルアーカイブやAVセンターを贈る」と、同氏は工房事業にかける志を語る。

IMI内にあるサウンド加工のスタジオ。秋葉原などでひとつづつ買い集めた
IMI内にあるサウンド加工のスタジオ。秋葉原などでひとつづつ買い集めた



人材育成事業と組み合わせる~深さへの挑戦

もう1つの大きな戦略は人材養成事業との連携だ。畑氏によると、以前から学校内に事業部を作ることを考えていたという。学生にとっては実践につながる場を提供できるからだ。いわば産学共同という枠組みをつくる試みだった。しかし結果的に“校内工房”は実現しなかった。大きな理由のひとつがスピード。「人材育成とプロフェッショナルの制作スピードは違いすぎた」(同氏)。そこで学外に作ったのがインターメディアラボだ。

インターメディアラボのワークエリア
インターメディアラボのワークエリア



同フロアーにあるカフェコーナー
同フロアーにあるカフェコーナー



同ラボのスタッフはディレクターを除いて全員がIMIの修了生。在校生にとっては第一線で活躍する先輩たちを見ることにつながるというわけだ。また、ラボで蓄積したノウハウやアーカイブを人材育成に還元することができるわけだ。「学外のラボから学校へという流れをつくってやるとうまくいった」。

ところで、ITの要は編集加工が重要になってくる。素材をコンテンツとしていかに組み立てていくかということにかかるからだ。したがって、同校で重視しているのが幅広い教養とネゴシエーション(交渉能力)。技術はこれらが伴ってこそ生きてくるという考え方だ。

さらには、ネットワーク時代であるからこそ、「同じ釜の飯を食う場が必要だ」と畑氏はいいきる。ネット社会では、一見簡単に人とのつながりをつくっていけるような錯覚があるが、「実は表面的なつながりで、うまくいかない」。ひとつのテーマを掘り下げるには、共通の場の体験をかさね、ビジョンの共有が不可欠だという。

“ビジョンの共有”の重要性を示すのに、演劇の盛んな英国が分りやすい。同国では俳優から制作スタッフまで、人材育成のための教育施設も充実しているという。共通のビジョンに基づく教育は、舞台芸術というコンテンツづくりに深く反映している。それぞれの劇場である演目をつくりあげるときに、すぐさま内容の深さを創造していくことが可能だという。

新ラボは、いわばIMIの修了生によるドリームチーム。“同じ釜の飯”を食い、ビジョンを共有しようとする学生は、共有のビジョンを持ちながら働くプロの仕事を目の当たりにすることになる。「これからの課題は、IT時代の“深さ”の挑戦」と畑氏は人材育成とラボにかける意気込みを話す。

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