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あらゆる機器からの“デジタル情報の収集”と“ネットワーク化”が経済を変える――ベンチャー・フォーラム2000(前編)、村井純氏による基調講演より

2000年07月11日 00時00分更新

文● 船木万里

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10日、東京都庁の大会議場において“ベンチャー・フォーラム2000”と題したイベントが催された。主催は東京都、東京商工会議所、日経BP社。午前中は、慶應義塾大学環境情報学部教授、村井純氏による基調講演とパネルディスカッション、午後からは実務者対象のセミナーがあった。また、併催フォーラムとして、都庁近くの京王プラザホテル、新宿ワシントンホテルにおいても、“コラボレーションフォーラム”、“プレゼンテーションフォーラム”が開催された。本稿では、村井純氏による基調講演“eビジネス革命とインターネットの未来”の模様を報告する。

慶應義塾大学環境情報学部教授、村井純氏
慶應義塾大学環境情報学部教授、村井純氏



エンドシステムが全体のシステムを変えてしまう可能性

まず村井氏は「最近は、大企業の社員や公務員になりたい学生はどんどん減ってきている。先輩の成功や、最近のビジネスを取りまく状況の大きな変化などを見て、学生たちは“自分で起業する”という、新しいビジネスの可能性への夢を持ちはじめている」と語り、eビジネス実践のためのテクノロジーとビジネス知識を合わせて教えられるような体制を、大学側で整備する必要があると述べた。

インターネットはビジネス社会を大きく変えようとしている。インターネット技術の原理はビジネス構造とどのように関わっているのだろうか?
 
村井氏によれば、インターネットの原理はそもそも自律分散的なものであり、エンドシステムが主人公となる仕組みが、電話と大きく異なる点である。電話のシステムでは、中継地点となる電話局の設備が重要だが、インターネットの場合は一人ひとりのコンピューターシステムが、最も重要な役割を果たしている。エンドシステムが変われば、全体のシステム機能も全く変わってしまうということは、予想できない可能性を秘めているという意味でもある。

ネットビジネスに対する新しい法制度も急務

最近のeコマースにおいては、信頼性の役割分担が進んでいる。これまでの商取引では、100パーセントの消費者保護を保証することが当然とされていた。しかし、今後の電子商取引では、この保証を保険会社などの第三者が分担するなど、新しい社会の規範も創出されようとしている。
 
現在、電子商取引の法律整備が進められているが、これは通信販売法が基本となっている。

村井氏は「通信販売法では販売のための電話番号記載が義務づけられているが、インターネットによる新事業においては、電話が事業参入の妨げになっている」と指摘。例えばインターネットでの商品販売を副業しようと考えていたとしても、電話番が必要なら開業できない、という人も多いはずだという。

インターネットという今までになかったビジネスフィールドには、これまでの法律をそのまま適用するのではなく、新しい事業を育成し、発展させるための法制度を整えていく必要がある、と村井氏は説いた。

クルマや家電などすべての機器から情報を

今後のインターネットの技術革新は、eビジネスの発展に大きく関わってくる。村井氏は、将来的には、テレビ放送や電話などもインターネットの機能のひとつとして利用できるようになる。インターネットは、回線を共有利用しているため、混んでくると表示が遅くなる。映画やテレビ放送など、動画を扱う場合の対処法として現在進められている研究では、音声データはそのままにして、許容できる範囲で画像のコマ数を間引きする方法が考えられている。

さらに、世界中の自動車をインターネットにつなぐという構想も現実化に一歩ずつ近づいている。自動車内にセンサーをつけて、天候や交通情報、地形測量など、さまざまな情報を収集し、ネットワーク化できるようになれば、情報の精度は飛躍的に高まる。また、家電に情報収集機能をつけるなど、個人の日常的な情報を収集できるようになれば、製品開発などにおけるマーケティングも容易になる。このように、インターネットによって効率のよい情報収集が可能になるにつれ、ビジネスの方向性もこれまでの経済の延長上では予測できないものとなる。

「情報を集め、ネットワーク化することで経済革命が起きる」と村井氏「情報を集め、ネットワーク化することで経済革命が起きる」と村井氏



  「情報をなんでもビット化して、世界中の誰とでもやりとりできるインターネットは、今後のビジネス社会の常識や原理を大きく変革していくだろう。新しい技術を開発したり社会制度を整備していく中で、我々はインターネットならではの自由な環境を守り、新しいビジネスを発展させていくための基盤をつくっていかなくてはならない」と村井氏は強調。

「これまでのコピーではなく、全く新しい、結果の読めないようなビジネスにも、ベンチャー企業は勇気を持ってチャレンジしていってほしい。それが可能になるのが、この自由なインターネットの世界なのだから」と語った。

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