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SME、『プレイステーション 2』効果ねらいDVD事業を拡大

2000年07月05日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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国内のDVDソフト市場はスタートしたばかり。著作権問題などから邦画のDVD化が遅れている一方で、モーニング娘。の『映像 ザ・モーニング娘。ベスト10』(ゼティマ)や浜崎あゆみの『HAMASAKI AYUMI』(エイベックス)など人気ミュージシャンをフィーチャーしたDVD音楽ソフトが、DVDソフトのヒットチャートに上るようになった。

そのような中で、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は今年4月、1枚1000円で音と映像が楽しめる“DVDシングル”の商品化に踏み切った。また、今後手掛けるミュージックビデオについては、VHS、DVD同時発売にする予定だ。「音楽映像商品の分野でも、DVD市場を確立したい」というのSMEビジュアルコンテンツ部の内藤謙一氏。DVD事業の拡大は、ずばり「『プレイステーション 2』効果を期待して」という。

SMEは、これまでに約140タイトルのDVDソフトを発売している。写真は7月19日発売の、郷ひろみの『なかったコトにして~HIROMI GO CLIPS~』。VHS・DVD同時発売で、価格は3150円。DVDバージョンでは、音声切り替え機能でオリジナルカラオケを字幕表示で楽しめる。(C)2000 Sony Music Entertainment(Japan)Inc. SMEは、これまでに約140タイトルのDVDソフトを発売している。写真は7月19日発売の、郷ひろみの『なかったコトにして~HIROMI GO CLIPS~』。VHS・DVD同時発売で、価格は3150円。DVDバージョンでは、音声切り替え機能でオリジナルカラオケを字幕表示で楽しめる。(C)2000 Sony Music Entertainment(Japan)Inc.



『プレイステーション 2』のDVD再生機能は、映画・音楽などのコンテンツ制作に携わる各業界から熱い視線を集めている。'99年のDVDプレーヤーの国内出荷実績は38万8000台*であった。ところが、『プレイステーション 2』は発売3ヵ月を待たずに200万台以上の出荷を記録。全国の家庭に“DVD再生マシン”が、'99年と比べて5倍以上導入されたことになる。

一方、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)によれば、一店舗あたりのDVDソフト関連の平均売上げを2000年2月と3月で比較すると、レンタルでは約2.8倍、販売では約3.7倍伸びているという。PlayStationフォーマットのDVDソフト、すなわち『プレイステーション 2』専用のゲームタイトルがまだまだ少ないということもあるが、『プレイステーション 2』の登場は、DVDソフトの需要を確実に喚起したようだ。

*(社)日本電子機会工業会が発表した'99年1月~12月の国内出荷実績より

もう1つの『プレイステーション 2』効果?

DVDソフトの取り扱い状況を見てみると、大手フランチャイズチェーンや、大都市の大型レコード店はともかく、“地元”のレコード店でその姿を見かけることは少ない。内藤氏によれば、全国の約7000店舗のレコード店のうちDVDを取り扱っている店舗は、2000年春の時点でわずか500店しかなかったという。入手ルートが限られていては、大きな効果が期待できない。そこで、7月5日より“DVD MUSIC ALIVE”というDVDソフトの宣伝キャンペーンを打つと同時に、営業活動を行ない、DVDソフトの取り扱い店舗を1700店舗にまで増やしたという。

ここで気になるのが、もう1つの『プレイステーション 2』効果、“PlayStation.com”だ。“PlayStation.com”は、『プレイステーション 2』の発売に併せて開設された、プレイステーションのハードとソフトを扱うソニーグループのECウェブサイトである。購入窓口が広がるということでユーザーには吉報だが、同サイトで販売するゲームソフトに変動価格制を適用したり、既存の流通経路でも中間業者に対する流通マージンを撤廃したりと、流通関係者は苦渋の表情だ。

SMEは、'99年末に始めた音楽データ販売で「中間流通業者を中抜きにする」という議論を巻き起こした経緯がある。内藤氏に“PlayStation.com”を使ったDVD音楽ソフトの直販は行なうのかと聞いたところ、「少なくとも当面は行ないません」という答え。“PlayStation.com”は洋画のDVDタイトルを既に取り扱っているのだが、こちらは推移を見守るしかない。

「女性演歌歌手の着物着せ替えなんて人気が出るかもしれませんね」

SMEは、静岡県と茨城県にDVDソフトをプレスするための自社工場を構えている。工場のDVDソフト製造ラインを、年内に現行の約2倍にあたる25ラインにまで増す計画だという。もっともここでは、DVD音楽ソフトだけではなく、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCN)が発売するプレイステーション 2用のゲームソフトも100パーセント生産受託しているが、製造ラインの増設により、1日1ライン1万枚の計算で、20日間で500万枚の生産が期待できる。

ユーザーとしては、DVDソフトならではの機能を持つ、キラーコンテンツの登場に期待したいところ。マルチアングルや音声切り替え機能を持つDVDタイトルは発売されているが、内藤氏は「例えば、女性演歌歌手の着物着せ替えなんて人気が出るかもしれませんね」と笑いを交えて語った。DVDソフトならではの見せ方を研究していくという。

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