このページの本文へ

“マルチメディア・アライアンス福岡”総会開かれる――東京への販路開拓が課題(福岡県知事、麻生氏)

2000年06月26日 00時00分更新

文● クールステーツ・コミュニケーションズ 岡田智博

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

地元財界およびクリエーターがバックアップ。全国公開“博多ムービー”がソニー・ピクチャーズを通じて制作

MAFは、マルチメディア・コンテンツ産業の育成支援を目的に、福岡県の働きかけで'98年8月に設立された団体。福岡県内を中心とするユーザー企業と制作者を核に教育機関および行政が参加、現在214者の企業、個人、団体で構成している。MAFは、マルチメディアコンテンツ産業が創造性をもとに成り立っていることを認識し、個人のクリエーターと行政や大企業とが同じ会員であるという運営形態がとられており、このことから会員による自発的なプロジェクトが創設以来、生まれ続けている。

総会の席上、MAF会長である、九州電力顧問の吉田清治氏は「様々なアクションを起こすのが大事な時期として2年目をとらえてきた」と発言。MAFプロデューサーであるソニー・ピクチャーズエンタテインメント取締役の森下恒行氏がプロデュースした、福岡県出身の役者総出演による“博多ムービー”プロジェクトを例にあげ、会員の自発的な取り組みによるマルチメディア・ビジネス振興のムーブメントが福岡に根付き始めたことを評価。さらに、3年目以降の一層の盛り上がりに期待を示した。

MAF会長、吉田清治氏のスピーチMAF会長、吉田清治氏のスピーチ



その後、'99年の活動報告が事務局からなされ、成果として、会員に向けたワークショップ助成としてアイディー社長の吹上剛一氏がリーダーとなった“インターネットテレビジョンステーションの試験運用ワークショップ”など3案件の紹介があった。また、“第1回アジアデジタルアート展”や“MAFデジタル広告賞”などコンテストの開催とその成果、冒頭にあげた博多ムービー“ちんちろまい”の制作企画とクランクアップが報告された。

特に、アジアデジタルアート展は、昨年まで福岡CG展として開催されてきたものをリニューアルしたもの。福岡CG展以来、韓国からの応募者が多く、「韓国ではCGクリエーターとしてプロフェショナルのキャリアのひとつとなるもの」(九州芸術工科大学教授・CGデザイナー源田悦男氏 談)となっており、今回も韓国からの出展作品が数多く受賞を果たした。

東京への販路進出が大きな課題――福岡県知事、麻生氏

総会終了後開かれた懇親会において、顧問である福岡県知事の麻生渡氏は、本レポートのための独自インタビューで、MAF設立準備から現在に到るまでを振り返った。

福岡県知事、麻生渡氏
福岡県知事、麻生渡氏



麻生氏は、「マルチメディア・コンテンツにふさわしい、クリエーターとユーザー企業とをフラットに結びつける産業支援の場として着実に動き出し始めることができた」と評価する一方、「いかんせん大きな需要を持つ東京に向けた販路開拓が足りなく、販路開拓が大きな成長を見込む上で不可欠」と指摘。「いかに東京に向けた販路を築くのかがこれからの課題である」と示唆した。また福岡県内でのマルチメディア・コンテンツの活用に向けては「マルチメディア・コンテンツの地場での活用を考えた場合、広帯域のネットワークの整備が必要不可欠である」との認識を示した。

交流会の様子
交流会の様子



“タレント”というコンテンツ満載の福岡発の映画だからビジネスになる――ソニー・ピクチャーズ取締役、森下氏

また、“ちんちろまい”の仕掛け人である森下恒行氏は「とてつもなく多くのタレントを生み出し続ける福岡だからこそエンタテインメント映画が(他の地方と違って)成立する」(武田鉄也、牧瀬里穂、後藤理沙などが出演)とプロジェクトの理由を語った。そして、九州を中心にアニメ以外の邦画としては最大級である全国配給のスクリーンを押さえられたことに触れながら「福岡発の映画がビジネスとなることをお見せしたい」と今年秋の上映に向けて抱負を語った。

総会の後、MAFデジタル広告賞の表彰式も同時に行なわれた
総会の後、MAFデジタル広告賞の表彰式も同時に行なわれた



マルチメディアで活気づくアジアとのアライアンスこそが必要――MAF副会長、榎本氏

キャナルシティーやネクサスなど、福岡独自のランドスケープを開発し続けている福岡地所社長の榎本一彦氏は、財界出身のMAF副会長の立場として「福岡は元気であり続ける都市でなければならない、マルチメディアは“都市そのものがメディアである福岡”にふさわしく、盛り上げていかなければならない」とその支援理由を語り、「同じくマルチメディア・ビジネスで活気付いているアジアとの交流が高まることがあれば」と、これからに向けての期待を寄せていた。

福岡地所の社長、榎本一彦氏
福岡地所の社長、榎本一彦氏



キャナルシティーにはナムジュン・パイクのビデオインスタレーションが展示 されているキャナルシティーにはナムジュン・パイクのビデオインスタレーションが展示 されている



初年度は英語によるWeb、電子メールおよびiモードによる外国人向けデイリー地域ニュース配信がワークショップとして採択され、実用化された(フクオカナウ)。東京では知られていなかったが、こういった新規性のあるサービスが確実に生まれてきた。しかし、2年目の今回、新しいものが出尽くした感があるとの意見も懇親会で聞かれたのも事実であった。3年目を迎え、これからも新たな企業やクリエーターが生まれ続け、活躍できる土壌を生み出し続けられるかどうかが試される年になりそうだ。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン