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アドビシステムズ(株)新社長、堀昭一氏が就任記者会見。SVG(Scalable Vector Graphics)のビジネス展開についても言及

2000年06月21日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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Web元年として頑張る

アドビシステムズ(株)は21日、日本記者クラブにおいて、6月1日付けでアドビシステムズ(株)代表取締役社長および、米国アドビシステムズ社副社長に就任した堀昭一氏の記者会見を行なった。同社の社長職は、昨年9月の前社長ジェシー・ヤング氏の退任以来、10ヵ月の長い間に渡り空席となっていたものだ。

堀 新社長は、これまで米国ソニーにおいてコンピューター・ビジネスの立ちあげに寄与、アップルコンピュータの要職を務めた経験もある人物で、前職はインフォミックス(株)の代表取締役社長だった。今後は、これまで日本法人を率いていたアドビ社のワールドワイドセールス&サポート上級副社長グラハム・フリーマン氏のもとで、日本市場におけるビジネス全般を統括することになる。

堀社長は、会見に先立って「(アドビは)Web元年として、頑張っていく」とし、会見の随所でWeb、インターネットに力を入れていくことを強調した。

会見の冒頭、堀社長は、アドビのビジョンである“To Help People Communication Better~人々のコミュニケーションに貢献する”と、コーポレートタグラインである“Inspiration Becomes Reality~インスピレーションを現実に”を紹介し、「(Inspiration Becomes Realityとは)夢を見ること、頭の中にあることを現実にすること。アドビはこのために、これまでは紙の上での表現を実現してきましたが、今後はそれをWebの世界に広げて行きます」とした。
 
さらに「アドビの使命は、たくさんの情報を共有するために貢献すること。私はこのように世界が変わっていくことに関わっていきたい。これが私がアドビに入社した理由です」と語った。
 
堀社長は、情報を共有するための技術のひとつであるツールとして、AcrobatとPDFについて言及した。「AcrobatならびにPDF(Portable Document Format)によって、みんながプラットフォームを超えて情報をシェアすることができます。Acrobat Readerは、全世界で1憶5000万コピーが配布されており、この数字は欧米ならびに日本のパソコンユーザーのおよそ半分の数ということになります」と、アドビの技術がワールドスタンダードであることを強調した。

アドビシステムズ(株)代表取締役社長、米国アドビシステムズ社副社長に就任した堀昭一氏。ソニー、アップルコンピュータ、日本ビューロジック、インフォミックスを経て同社に
アドビシステムズ(株)代表取締役社長、米国アドビシステムズ社副社長に就任した堀昭一氏。ソニー、アップルコンピュータ、日本ビューロジック、インフォミックスを経て同社に



2000年はSVGをスタンダードに

さらに堀社長は同社のビジネススタイルに言及し、「(アドビは)スタンダードを作って、その上でビジネスを展開してきました。これまで、'80年代はポストスクリプト、'90年代はPDFをデファクト・スタンダードとしてきました。これからの2000年代は、SVG(Scalable Vector Graphics)をスタンダードとしてビジネスを展開します。SVGによりWebパブリッシングを強化し、紙の上でのパブリッシングとの“クロスメディア”を実現していきたい」とした。

同社によれば、「SVGは、XML(Extensible Markup Language)で2次元画像を描写するための新しいオープンな言語で、World Wide Web Consortium(W3C)が仕様の策定を推進しているもの。SVGはXMLによりベクトルグラフィックを表現し、W3Cの他の規格とも互換性があるため、デザイン、開発、最終的には高度な電子商取引Webサイトにおける顧客体験に大きな影響を与えることになる」という。

また、このSVGを最新のInternet ExplorerやNetscape Navigatorで表示させることができる“Adobe SVG Viewer”は、先だって6月2日に米国での出荷が開始されたAdobe Illustrator 9.0に同梱されるほか、同社のWebサイトにおいてダウンロードが可能だ。

主要アプリのWeb対応、出版の完全なDTP化を事業戦略の柱に

続いて掘社長はアドビ社の業績は4期連続して過去最高の売上げを達成していることを紹介し、「2000年第2四半期は、3億ドルを超えました。日本においては、それよりも早い勢いで伸びており、追い風にあります」と語った。

今後の事業戦略については3つのポイントを上げて説明した。
 
まず、Webでのドキュメント、コミュニケーション分野では「Illustrator、Photoshopはこれまでは紙の上で使うのが前提でしたが、最近では、Webでの画像作成に使う人が非常に増えています。それに対応するようにWebで便利なファンクションがどんどん増えています」とした。電子ドキュメント分野においては、「PDFなどをSIベンダーとともに広めていきます」とした。また、PDFなどをベースとした情報コンテンツの電子商取引に対応した同社の技術――『PDF Merchant』や『Web Buy』の日本での展開について質問したところ、「現在、準備中でまもなくSIに対して供給を開始します。eBookについても、すでに技術的には整っており、すぐにでも展開できるところには来ています」とコメント。

同社がこれまで最も力を入れてきた分野である“印刷・出版分野”においては「米国の出版は90パーセントがDTPされていますが、日本では30パーセントにとどまっています。これは日本特有の組版や外字などの問題があったため」とし、アドビ社のジョン・ワーノック会長兼CEOの「世の中のパブリッシングはwebが標準となり、必要に応じて紙にプリントする方向に向かっている」という見解を引用し、「InDesignを投入することで、過去、日本で広げることができなかった、60パーセントのマーケットを狙ったクリエーションを展開します」と語った。

さらに今後の計画として戦略的事業提携を推進し、Webの人材、組織の育成に力を入れたいとした。また、米国在住時の経験として中学、高校で積極的にWebを導入していることに触れ、「日本の教育に対してもお手伝いしていきたい」と語った。

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