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ジャストシステム、コンシューマー向けASP事業を7月に開始――ワープロソフトやマルチメディア関連ソフトをネット経由で提供へ

2000年06月05日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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(株)ジャストシステムは5日、一般コンシューマー向けASP(Application Service Provider)事業を開始すると発表した。第一弾として、共同で掲示板や電子メールが利用できる“グループ・コミュニケーション”サービスを7月末にプレスタートさせる。その後、ワープロや表計算などビジネスソフトをネット上から利用できる“パーソナル・ビジネス”、ホームページ作成やマルチメディア編集が可能な“ホーム・エンタテイメント”へと2000年度内にサービス範囲を拡大。まず機能を絞った無料版から公開し、その後でより高機能な有料版へと移行させる方針だ。同社では3年後に会員500万人、売上150億円を見込んでおり、パッケージソフトと並ぶ収益の大黒柱に育て上げたい考えだ。

サービスの統一名称は未定。サービスは基本的にウェブベースで提供される。ビジネスやホビーなど各種のアプリケーションソフトをネット経由で利用できる上、サイト上にユーザー専用の作業スペースを提供。ソフトウェアを利用して作成したデータをサーバーに保管できるという。サービスは“グループ・コミュニケーション”“パーソナル・ビジネス”“ホーム・エンタテイメント”の3カテゴリーに分かれている。

ビジネスから家庭向けまで幅広いサービス


“グループ・コミュニケーション”サービスの画面
“グループ・コミュニケーション”サービスの画面



グループ・コミュニケーションは、ユーザーが属するコミュニティー活動を支援するサービス。共同利用できる掲示板やスケジュール管理用のカレンダー、一斉同報配信ができる電子メールサービスといった機能を備えている。また記念写真を共有できる“想い出アルバム”や、イベントの出欠確認と会費集計など、グループ運営に便利なサービスも用意されている。

これらの機能は“合コン”“結婚式の二次会”といった目的をウェブ上で選ぶことで、必要な機能が自動的にセットさせる仕組みになっているという。パソコンに加え、エヌ・ティ・ティ ドコモ(株)の“iモード”にも対応し、携帯電話から掲示板の書き込みやメール機能を利用できる。その他のネット接続対応携帯電話サービスにも対応させる予定としている。

“パーソナル・ビジネス”サービスの画面
“パーソナル・ビジネス”サービスの画面



パーソナル・ビジネスは、ビジネスマン向けにアプリケーションソフトと個人データ保管スペースを提供するサービス。ワープロや表計算、プレゼンテーション、電子メールといった基本的なソフトをネット経由で利用できるほか、個人のスケジュールやTo DoリストなどPIMデータのホスティングも行なえる。また同社の自然文検索技術“ConceptBase”によるニュース検索サービスなども盛り込まれる。データはすべてサーバー上に保管されるため、ユーザーはオフィスや自宅、出張先と場所を選ばずに同じ仕事環境での作業が可能になるという。

“ホーム・エンタテイメント”サービスの画面
“ホーム・エンタテイメント”サービスの画面



ホーム・エンタテイメントは、主に一般家庭での利用を想定した生活密着型のサービス。電子メールやアドレス帳、ホームページ作成といったインターネット用ソフトや、グリーティングカードやラベル作成、家計簿、レシピ管理、オンラインバンキングなど日常生活で役立つソフトを提供する。またデジタルカメラで撮影した画像をレタッチしたり、DVムービーの編集、MP3再生ソフトといったマルチメディア関連ソフトも用意する予定だ。

サービス提供のスケジュールは、まず7月末にグループ・コミュニケーションの無料プレサービスを開始。8月にパーソナル・ビジネスの無料プレサービスをスタートさせる。10月にグループ・コミュニケーションの本格的なサービスを始め、同時に有料サービスも開始する。11月にホーム・エンタテイメントの有料サービス、2001年3月にパーソナル・ビジネスの有料サービスをスタートさせる予定という。

サービスは、機能が限定された無料版と、より多機能な有料版を合わせて提供する方針。有料版の課金は月額固定制をベースとし、希望するオプションサービスごとに追加料金を支払う仕組みを考えているという。基本的な料金は、月額で「数百円程度」(同社)になる見通しだ。

「3年後に500万人は控え目な数字」


ジャストシステム社長の浮川和宣氏
ジャストシステム社長の浮川和宣氏



都内のジャストシステム東京支社で発表を行なった同社社長の浮川和宣氏は、「インターネットの登場でコンピューターの使われ方が変わった。オープンなネットワークに接続するという視点で考えた方が大きな価値が生まれるだろう」と指摘し、インターネットとそのインフラの急速な普及で、将来はASP的なモデルが有望だと強調。その上で「まずはパソコンと携帯電話でスタートするが、将来はPDAや家庭用ゲーム機、情報家電など、ネット接続が可能なすべての機器でサービスを提供していきたい」と語った。

浮川氏によると、データセンターなどサービスのインフラ部分は、子会社のウェブオンラインネットワークス(株)が運営する接続サービス“ジャストネット”を利用してすべて自社グループでまかなう方針。年内には開発者200人を投入してコンテンツ開発に全力を挙げるという。有力コンテンツプロバイダーとの提携交渉も進めているという。

初年度の会員数は15万人から20万人程度を見込み、サービス開始から3年後の2003年度には会員500万人、利用料金や広告収入を含め年間売上150億円を目指している。2000年3月期の同社の売上高は168億8700万円(前期比2.7%増)。「目標会員数は控え目」(浮川氏)とのもくろみ通りに事業が成功すれば、不安定なパッケージソフト頼みの収益構造を抜け出し、将来性の高いASP事業へ軸足を移すことも可能だ。さらに「パソコン上のソフトからもASPを利用できるようにする。ASPでは基本機能を提供し、パッケージソフトではより高機能になっているため差別化できる」(同社専務の浮川初子氏)とASP事業との相乗効果でパッケージソフトの売上増加も見込む。

一方で、予定されているサービスは既存のサイトで無料提供されているものばかりとの見方もでき、有料サービスがなじむのか疑問の声もある。社長の浮川氏は「従来のサービスが無料だったのは、少額決済が未整備だったため。iモードが成功したように、少額課金の仕組みも変わってきた点が参入のポイントでもある」と語り、魅力あるサービスと決済システムさえ用意できれば有料サービスは軌道に乗ると見ている。「年間延べ400万人」(同社)という同社のユーザーとブランド力を活かしたジャストシステムの賭けは成功するのか。アライアンスパートナーによる高付加価値サービスや一般家庭のブロードバンド化も重要な鍵になりそうだ。

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