このページの本文へ

個人開発者に朗報!! Unlimited版のWeb Objects、約692万円の値下げを敢行――WWDC2000(後編)

2000年05月16日 00時00分更新

文● 林信行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

主力アプリケーションのMac OS X最適化版が続々登場

ジョブズ氏は、Mac OS Xに付属のアップル社製ソフトはすべてMac OS Xに最適化されていると語った。つまり、同OS付属のソフトでClassicアプリケーション(Mac OS 9以前用のソフト)は1本もないこということだ。
 
一方、今回の基調講演ではサードパーティー製ソフトも続々とMac OS X対応(圧倒的にCarbon版)を果たしていることが明らかにされた。

まず紹介されたのはMac OS付属の標準Webブラウザー、Internet Explorer for Macだ。
 
AQUAのインターフェースで表示される同Webブラウザーは既に2月のMACWORLD EXPO/TOKYOでも発表されていたが、最新版は内部的にも現行のInternet Explorerにかなり近い機能が実装されている。
 
ジョブズ氏によれば、マイクロソフト社はなんとか同OSのリリース頃までに製品を完成させたいとしている。
 
同様にアドビ社は注目の新DTPソフト、InDesign 1.5やサードパーティー製プラグインソフトを組み合わせれば、いかに簡単にレイアウトができるかを強調した。

しかし、一番目立っていたのは、米エイリアス|ウェーブフロント社が開発する3Dソフト、MAYAだ。MAYAは、ワークステーションなどで動く、プロ用3Dソフトとして各方面から高い評価を受けている製品だ。

3Dオブジェクトを自由自在に変形できるMAYA。映画製作や製品デザインを効率的に行なえるように随所に工夫が凝らされている
3Dオブジェクトを自由自在に変形できるMAYA。映画製作や製品デザインを効率的に行なえるように随所に工夫が凝らされている



このほかにも米Palm社のPalm DesktopなどもMac OS X対応版が披露された。

新しい業界標準を次々とサポート

今回の基調講演ではデモが行なわれなかったが、ジョブズ氏は今回配布されたMac OS X DP 4で、ちょうど1年前の講演で披露したJava 2サポートも実現したことを明らかにした。
 
アップル社はこのように新しい業界標準を採用することにも相変わらず積極的だ。
 
OpenGLのサポートを紹介するデモでは、Quartz対応のサンプルソフトを使ってPDF画像を、ボトル(瓶)のラベルとして貼り付け、PDF画像に手を加えると、その変更が瞬時に3Dイメージ(ボトル)にも反映されるというデモが行なわれた。

これまでにも何度か披露されているQuartzのデモだが、編集したPDF画像(左側のTOY STORYのロゴと子供の写真を合成したモノ)を変形すると、右側のウインドーにあるボトルにマッピングされたラベルの絵もその変更を瞬時に反映された
これまでにも何度か披露されているQuartzのデモだが、編集したPDF画像(左側のTOY STORYのロゴと子供の写真を合成したモノ)を変形すると、右側のウインドーにあるボトルにマッピングされたラベルの絵もその変更を瞬時に反映された



ジョブズ氏はまたアップルがこの夏までにQuickTime次期バージョンをリリースすることを明らかにした。残念ながらデモは行なわれなかったが、新しいバージョンではMPEG2のエンコード/デコードをサポートし、頭上や足下までも含め周囲の状況を完全に見渡せるQuickTime VRの新バージョンも含まれる予定だ(以前にも同様のことが可能だった時期があったが、その後、他社の特許に抵触する可能性があったことからこの機能に制限が加わっていた)。

Unlimited版のWeb Objectsは、約692万円の値下げ!!

今回の基調講演で最も衝撃が強かったのは、値下げのニュースかも知れない。

WebObjectsといえば、アップルが買収する前の米ネクスト・ソフトウェア社が'95年に出荷して以来、極めて費用効果の高いソリューション開発ツールとして、多くの大企業がWebサイトの運営や社内向けソリューションの開発に採用してきた製品だ。
 
同ソフトはソリューションの開発に用いるDeveloper版が19万8000円だが、同バージョンでは一度に行なえる処理の量に制限がかかっており、この制限を完全に外したUnlimited版は米国価格で5万ドル(日本では699万8000円)という高価な製品だった。
 
ジョブズ氏は、この業界の中でも最も定評がある優れた技術をより多くのユーザーに広めるべく、Unlimited版をわずか699ドル(日本での価格は7万2800円)で提供する(日本では6月上旬から)ことを明かした。

WebObjects 4.5には、アップル社のサーバーOSであるMac OS X Server版に加えてSolar、isHP-UXといったUNIX系OS版やWindows 2000版もある。
 
さらにアップル社はまもなくJava対応の任意のOSで動作するJava版WebObjectsをリリースする計画も明らかにした。

アップルやディズニー、日産自動車、CSKやキューピー、三井海上といった巨大企業だけがなかば独占的に使っていた技術が、ケーブルテレビモデムやADSLなどで常時接続した個人でも手が届く価格で提供されるというのだから、SOHO関係者の間でも注目を集めそうだ。

新戦略発表の場から、開発者のための情報収集の場へ

今回のWWDCでは新機種や新戦略に関する目立った発表こそ行なわれなかったものの、その分、かなり現実的でしっかりとした中身のあるイベントとなっていそうだ。ただし、残念ながらこの基調講演以外の内容は、すべて秘密保持契約の対象となる。そのため、パソコン雑誌などを含む各種メディアでも報じられるのはこの基調講演の内容だけに限られずはずだ。
 
秘密のベールの中身は、この夏、Mac OS Xのパブリックベーター版やQuickTimeの最新バージョンが登場して初めて明らかになるのだ。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン