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太陽光線による蓄電、発電機能を持つ生地などのユニークなアイデアも――“アジアウェアラブルグランプリ2000”開催!

2000年05月15日 00時00分更新

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12日、北青山の機械産業記念館(TEPIA)で、“アジアウェアラブルグランプリ2000”が開催された。現在、生活に浸透しつつあるモバイルコンピューターを発展させた“身に付けるコンピューター”として、機械産業記念事業財団では“ウェアラブルファッション”という発想を提案。国内外にデザインを募集し、第一次審査を通過した42点をファッションショー形式で発表、7名の審査員が会場で最終審査を行なった。グランプリに選ばれたのは、馬場園晶司氏。そのほか、TEPIA会長賞、優秀賞、奨励賞がそれぞれ選出された。

ウェアラブルという概念を広めるために

アジアウェアラブルグランプリは、アジアの国内外からデザイン画を広く募集し、その中から選び抜かれた50点の実物作品を、ファッションショー形式で発表し、審査するというもの。TEPIAのホール会場は、ファッションデザインを学ぶ学生など、大勢の若者で大盛況となった。
 
今回の催しは、ウェアラブルコンピューターという概念を一般に知ってもらうために行なわれるもの。近年、小型化の進むモバイル機器だが、今のところ“携帯機器”であり、“着用”という感覚ではない。ウェアラブルとは、情報活動を補助するための手段として自然に使えるもの、服を着るような感覚で利用できるシステムとして考えられている。

現在、今回の協賛企業をはじめとする研究機関が、ウェアラブルの実用化に向けて開発を進めているが、今後、ソフト面として“ファッション”という分野におけるコンピューターの研究開発のニーズは、さらに高まるものと予想される。今回のイベントなどを通じて、こうした“ウェアラブル”の概念の認知度を高め、新しい世代の人材を発掘していきたいとの考えから企画されたのが、今回のファッションショーである。

審査を兼ねた華麗なファッションショー

  審査員は、東京大学名誉教授の石井威望氏、東京大学先端科学技術研究センター教授、廣瀬道孝氏、文化服装学院教授の曽根美知江氏、メディアアーティストの八谷和彦氏、ファッションクリエーターの大矢寛朗氏、通商産業省機会情報産業局の江藤学氏、(財)機械産業記念事業団常務理事の林俊太氏の計7名。大矢氏、江藤氏は代理人の出席となった。

審査員の面々。右から、メディアアーティストの八谷和彦氏、ファッションクリエーターの大矢寛朗氏代理、文化服装学院教授の曽根美知江氏、東京大学名誉教授の石井威望氏、東京大学先端科学技術研究センター教授、廣瀬道孝氏、通商産業省機会情報産業局の江藤学氏代理、(財)機械産業記念事業団常務理事の林俊太氏の計7名
審査員の面々。右から、メディアアーティストの八谷和彦氏、ファッションクリエーターの大矢寛朗氏代理、文化服装学院教授の曽根美知江氏、東京大学名誉教授の石井威望氏、東京大学先端科学技術研究センター教授、廣瀬道孝氏、通商産業省機会情報産業局の江藤学氏代理、(財)機械産業記念事業団常務理事の林俊太氏の計7名



ゆったりと民族楽器の生演奏が流れる中、第一次審査で選ばれた50作品中、8点の棄権により、42作品が順に発表された。審査員は各々10点満点で審査し、7名の合計が出た時点ですぐ、数字のボードおよび司会者によって審査結果が会場に伝えられるという、リアルタイムな審査形式となった。合計点は20点台から50点台と幅広く、審査基準は少々辛め。
42点のファッションは、作者各々が持つ“ウェアラブル”のイメージを表現したもので、SF映画の衣装を思わせるものもあれば、街着としても違和感のない服もあり、まさに十人十色。全体的には、モバイルコンピューターや携帯電話など、現在利用されているモバイル機器をしまうポケットやバッグ付きのもの、現在開発中という、モニター機能を持つゴーグルやヘッドセットなどが多く見られた。

電源の仕込まれたブーツ、必要に応じてモニター代わりとなるサングラスなど、近い将来の実用化も予想させる、嶋田純子さんの作品(奨励賞)電源の仕込まれたブーツ、必要に応じてモニター代わりとなるサングラスなど、近い将来の実用化も予想させる、嶋田純子さんの作品(奨励賞)



中には、当面実用化できそうにないがユニークなアイデアとして、“太陽光線による蓄電・発電機能を持つ生地”や“コンピューターとして利用できる生体細胞”など、突飛で未来的な“装置”を表現したものもあり、そうした柔軟な発想が評価されていたようだ。

 一般のファッションショーで見かけるようなスタイルだが、実は、将来は人間の体内細胞自体がコンピューターの役目をするという、SF的な発想を形にしたデザイン。 大槻聡士さんの作品(奨励賞) 一般のファッションショーで見かけるようなスタイルだが、実は、将来は人間の体内細胞自体がコンピューターの役目をするという、SF的な発想を形にしたデザイン。 大槻聡士さんの作品(奨励賞)



グランプリは馬場園晶司氏の手に

  表彰式では、まず奨励賞が10名に贈られた。代表として、川原場幸雄氏が賞状を受け取った。優秀賞は、門柳聡氏と山口智弘氏。山口氏は、顔を覆うゴーグルをモニターとして情報を取り込むという、近未来的なイメージ。門柳さんは、ソーラーシステム機能を持つと仮定した生地を使った大きなフードのアイデアで、メンズ、レディス両方をデザインした。次に、TEPIA会長賞が安藤鉄平さんに贈られた。安藤さんの作品は、体をすっぽりと覆うスタイリッシュなジャンプスーツで、モバイル機器を効率的に身にまとえる工夫がされている。  

和風の派手な意匠が目を引く、安倍理絵さんの作品(奨励賞)和風の派手な意匠が目を引く、安倍理絵さんの作品(奨励賞)



奨励賞の10名。代表として、川原場幸雄氏が賞状を受け取った
奨励賞の10名。代表として、川原場幸雄氏が賞状を受け取った



優秀賞の2名。左端が山口智弘氏、右端が門柳聡氏
優秀賞の2名。左端が山口智弘氏、右端が門柳聡氏



TEPIA会長賞を獲得した安藤鉄平氏(右)TEPIA会長賞を獲得した安藤鉄平氏(右)



そしてグランプリは、ショーでの審査でも高得点を獲得していた、文化服装学院研究生の馬場園晶司氏に決定した。大きく立てた衿はスピーカー機能を持ち、ウエストを取りまくポーチにはモバイル機器を収納するなど、デザインの美しさと機能性への評価により、グランプリ受賞となった。

グランプリを獲得した馬場園晶司氏の作品。アイドルの衣装のように可憐で華やかだが、各ディテールに高機能を設定グランプリを獲得した馬場園晶司氏の作品。アイドルの衣装のように可憐で華やかだが、各ディテールに高機能を設定



賞状を受け取る馬場園晶司氏
賞状を受け取る馬場園晶司氏



  最後に、東京大学名誉教授の石井威望氏が挨拶を述べ、「ファンクションは、ファッションとして受け入れられた時に普及するもの。ファッションとして洗練されていくことで、ウェアラブルコンピューターも近い将来には日常的なものとなるのではないか」と語った。
 
なお、TEPIA1階“暮らしのデジタルインパクト展”(4月14日~6月16日)においても、ウェアラブルファッションについての展示が行なわれている。

“暮らしのデジタルインパクト展”に展示されているウェアラブルファッション
“暮らしのデジタルインパクト展”に展示されているウェアラブルファッション



船木万里

TEPIA
 http://www.tepia.or.jp/

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