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【INTERVIEW】“www.ascii.co.jp”ではなく“アスキー。会社”でウェブにアクセスできる――2バイト文字も含めた多国語ドメインサービスを展開する米i-DNS.netのウングCEOに聞く

2000年05月12日 00時00分更新

文● 聞き手/構成 編集部 佐々木千之

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ホームページを開くとき、英語のスペルを間違えてエラーになり、漢字仮名交じりでURLが書けたら間違えないのに、と思った経験はないだろうか。中国語を使ってURLが入力できるサービスをすでに開始し、今後日本を含めて全世界でサービスを開始しようとしている企業がある。それが米国カリフォルニア州パロアルトに本拠をおくi-DNS International社(以後i-DNS社)だ。来日中の同社CEOマイケル・ウング(Michael Ng)氏に日本と世界での事業展開についてうかがった。

―― WHOLEはじめにi-DNS社は日本で具体的にどのようなサービスを行なおうとしているのでしょうか。

マイケル・ウングCEO:「もうすぐ、日本のみなさんが日本のインターネットサービスを利用するのに、日本語のドメインネームを使って利用できるようになります。ご存じのように今までドメインには“ascii.co.jp”というようにアルファベットと数字だけしか使えませんでした。これは劇的な変化です。日本語でウェブブラウザーなどのURL欄に入力できるようになるわけですから。英語の分からない日本語しか知らない方が、より簡単にインターネットサービスを利用できるようになるわけです。日本語の漢字、ひらがな、カタカナが使えるのはもちろん、中国では中国の漢字、韓国ではハングルが使えます。インターネットを利用するときの、英語という障壁がなくなるということなのです。」

マイケル・ウングCEO
マイケル・ウングCEO



“。会社”、“。組織”“。ネット”への登録サービスを提供

―― WHOLEインターネット上のドメインで英語以外の言語が使えるという、国際ドメインネームシステム、あるいは多言語ドメインネームシステムについては、アジア各国の大学などでいくつかの試みや研究がされてきたようですが、i-DNS社のサービスはそれらの技術とは異なるものでしょうか?

ウング氏:「最初に違いを申し上げます。当社は国際ドメインネームの登録受付を行なっている唯一の企業です。単に技術を提供できるだけでなく、“.com”、“.org”、“.net”ドメインに相当する“。会社”、“。組織”“。ネット”への登録が多国語で行なえるサービスをすでに開始しているのです。では、なぜほかの企業や団体ができないことを、当社が行なえるかということですが、まずは技術基盤です。当社はこの技術を開発後に試験を行ない、すでに2年間の実績があります。

最初にプロジェクトとして開始したときは非営利団体として行なっていました。このプロジェクトにはJPNIC((財)日本ネットワークインフォメーションセンター。日本のドメインの管理を行なう非営利団体)をはじめとして、韓国、中国、シンガポールなどの同様の団体と協力して行ないました。ですから、日本語なら日本語、中国語なら中国語に特化した技術ではありません。システムとしては文字コードにUnicodeを使用しており、1つの国の言語しか使えないというものではないのです。

当社の技術は、ドメインネームシステムの仕組みに準拠しているので、ウェブブラウザーからだけでなく、ftpクライアントやtelnetクライアント、メーラー(多言語ドメインのメールアドレス)などでも利用できます」

―― WHOLE
―― WHOLE

多言語で入力されたドメインはどのように処理されるのでしょう。

ウングCEO:「各国の言葉で入力されたドメインは、当社の技術によってUnicodeに変換されます。Unicodeに変換されたドメインは英数字が並んだ文字列となっています。この変換されたドメインが、インターネット上のドメインネームシステムによってIPアドレスに翻訳され、目的のサイトに到達できるというわけです。各国語で入力されたドメインをUnicodeに変換する仕組みは2通りあります。ユーザーが入力した文字列を、多言語に対応したドメインネームシステムプログラムである“*i-BIND”が処理する仕組みと、クライアントパソコン側に“i-Client”プログラムをインストールし、クライアント側で処理する仕組みです。

*
i-BIND:ドメインネームシステムサービスを行なうために、広く使われている“BIND”プログラムをもとに、i-DNS社が開発し、無償で配布している“多言語対応BIND”。オリジナルのBINDは英数字と一部の記号しか受け付けない。

*i-Client: i-DNS社が開発し、無償で配布しているプログラム。i-BINDが持つ機能のうち、多言語ドメインからUnicodeで記述されたドメインへの変換のみを行なう。i-DNS社のホームページからWindows版がダウンロードできる。MacintoshやLinuxなどに対応したプログラムも開発中という。

ISPが自分のところで利用しているBINDを、i-BINDに置き換えれば、そのISP経由でインターネットを利用するユーザーはすべて、多言語ドメインを使えることになります。i-BINDが利用できない場合でも、i-Clientをインストールすればすぐに多言語ドメインを利用できるようになるわけです。

現在サポートしている言語(文字コード)は、日本語(JIS、Shift-JIS、EUC)、中国語(GB、BIG5)、韓国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語をはじめとして、タイ語、ヘブライ語など55に上ります。各国語のサポートは非常にデリケートな問題を含んでいますので、各国のレギュレーションをよく研究して、それに沿う形でサポートしていく方針です。

日本語についてはもう技術的な問題は解決されており、あとはコンセンサスを得る段階に来ていると考えています。日本でのサービス展開ではJPNICのルールを尊重して行なう予定で、例えば “セックス。会社”といったような(公序良俗に反する)ドメインは受け付けません」



日本で1年に10万ドメインの登録を目指す

―― WHOLE御社のビジネスモデルを教えてください。

ウングCEO:「当社はすべてを自社だけで行なうつもりはありません。日本でのビジネスでは11日付でニュースリリースを出しました。日本では(株)アスキー、(株)クレイフィッシュ、インターキュー(株)の3社と、多国語ドメイン登録などのサービス提供について合意に達しました。実際の登録サービスについては、当社が直接行なうのではなく、この*3社から提供される予定です。この3社はそれぞれ、すでにドメイン登録サービスをはじめとした各種のインターネットサービス基盤とノウハウを持っています。当社はほかの国々でも、こうしたビジネスパートナーを通じてサービスの提供を行ないます。韓国ではサムスン社、香港では香港テレコム社といったようにです」

編集部注:現時点(5月11日)では、これら3社とは、まだ正式な契約が結ばれたわけではなく、各社ともi-DNS社との提携やサービスそのほかに関しての発表は一切行なっていない。また、一部でこの3社と合弁企業を立ち上げるという報道がなされたが、そのような事実はないとしている。

同社Business Development担当生内眞司(はえうち・まさし)氏:「それで当社がどこから利益を得るかということですが、多言語ドメインを登録しようとする企業や個人からの“ドメイン登録料”が収入源ということになります。単純に申し上げますと、パートナーが登録しようとする人から登録料を徴収します。その一部が我々の収入となるわけです」

生内眞司氏
生内眞司氏



―― WHOLEどのくらいの日本語ドメインによる登録を見込んでいますか。

ウングCEO:「今年度末までに10万件を目標としています。この10万件という数字は10万社からの登録ということではありません。1社で多数の登録を行なう場合も多いと想定しています。ブランド名ごとに登録できますし、ひらがな、カタカナ、漢字の違いもあります。また、登録は日本語だけに限っているわけではありません。当社がサポートしているすべての言語について登録が可能です。すでに当社がサービスを開始している香港やシンガポールでは、いままでに10万ドメインの登録がなされました」

インターネット標準技術に準拠していく

―― WHOLEユーザーが多言語ドメインを利用する上では、i-Clientやi-BINDの普及が必要ですが具体的な計画はありますか。

ウングCEO:「当社のウェブサイトをはじめとして、パートナー各社の協力の下に配布を行ないます。また、現在インターネット上で利用されているBINDプログラムがすべてi-BINDに置き換わってしまえば、いつでもどこでも多言語ドメイン利用することができるようになるわけです。当社はインターネット上の標準化に大きな役割を占めるIETF(Internet Engineering Task Force)のメンバーであり、国際ドメインネームシステム(iDNS)ワークグループにずっと参加して研究してきました。i-BINDはインターネットの標準に沿う形で開発されており、i-BINDの技術が将来のiDNS標準として採用される可能性は十分にあります。もしも、ことなった技術が採用されたとしても、今までの技術的蓄積もあり、十分対応は可能だと考えていますし、その標準に準拠いたします」

―― WHOLE
―― WHOLE

今後の展開について教えてください。

ウングCEO:「日本でのサービス開始とあまり違わない時期に、韓国でもサービスを開始します。またイスラエルや中東諸国、北欧、ロシアでもサービスを開始します。当社がサポートする55の文字コードのうち、重点を置いているのは日本語、中国語、韓国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語の6言語です。日本は最重要拠点として、6月に日本法人を立ち上げる予定です。この6言語が使われている国々では、英語は普段使われる言語ではありません。例えば、ドイツやオランダでは英語はほとんど問題とされませんが、中国や日本では年少者や年輩の方には英語はインターネットを利用する上で障壁となり得ます。当社はそのような国々に重点を置いています。

技術的な観点から見れば、日本語や中国語のような2バイト言語でシステムがちゃんと稼働できるなら、英語以外のアルファベットを使う言語に対応することは容易なことです。当社のサポートする55の文字コードによって、世界の人口の95パーセントがカバーできると考えています」
(5月10日)

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