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【INTERVIEW】「バンダイはおもちゃ的なロボットと本格的ロボットの両方をやっていく」--“バンダイのロボット博士”芳賀義典氏 (前編)

2000年05月01日 00時00分更新

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携帯ゲーム機『ワンダースワン』を利用して動きをコントロールできる『ワンダーボーグ』、ねこ型のペットロボット『BN-1』、これらはともにこの夏の発売を目指して現在開発が進められている最中の(株)バンダイの最新ロボットだ。昨年来、精力的にロボット製品を発表しているバンダイは、もともと'80年代からこの分野に積極的に取り組んでいたメーカー。そのバンダイでずっとロボット関係のおもちゃに携わってきた“バンダイのロボット博士”メディア統括部の芳賀義典氏にお話をうかがった。

バンダイ メディア統括部の芳賀義典氏とロボットたち
バンダイ メディア統括部の芳賀義典氏とロボットたち



コミュニケーションするロボットとプログラミングできるロボット

バンダイが3月13日に発表した自律型ロボット『BN-1』。飼い主とのコミュニケーションを図ることに重点をおいており、他のペットロボットと比べて、センサーの種類や行動パターン、目の表情パターンが多い。発売時期は2000年秋。価格は5万円以下で、インターネット販売のみで提供される
バンダイが3月13日に発表した自律型ロボット『BN-1』。飼い主とのコミュニケーションを図ることに重点をおいており、他のペットロボットと比べて、センサーの種類や行動パターン、目の表情パターンが多い。発売時期は2000年秋。価格は5万円以下で、インターネット販売のみで提供される



--BN-1のように開発表明をするケースは、バンダイさんでは珍しいですよね

芳賀「そうですね。いまは開発の参考になる声をいろいろ聞いているところです。それでも発売までの時間が短すぎるんですけどね(笑)。もっと検討したり改良を加えたいところもあるんですけど、ソフトウェアを使って動作パターンの更新ができますから、あとから機能をバージョンアップさせることも可能です」

--BN-1の前に先行して開発したワンダーボーグ、そしてそのプロトタイプの『ビートロイド』*がありますね

*ビートロイド:名古屋で開催された“99RoboCupジャパンオープン”でバンダイが展示した昆虫ロボット。ワンダーボーグのプロトタイプ。

芳賀「ビートロイドはロボットホビー的な要素ですね。組み立てて動かしてみようと。それでサイズの小さい昆虫型で開発したんです。サイズが大きいとエネルギーがたくさん必要ですが、ビートロイドだと60~70g程度ですから、机の上でも容易に走破できる。そこに昆虫型の脳ミソを入れたんです。昆虫型のプログラムはインタープリタのようなもので、我々は“エンジン”と呼んでいますが、センサーの状態に合わせた場合分けの行動を定義することで、虫みたいな動きができるんです。そのプログラミング環境を遊びとして提案できるんじゃないかと。そこで、あっちこっちで実際に子どもに遊んでもらって、プログラムして遊ぶものとして形ができました」

--プログラミング環境は最初からありましたよね

芳賀「もともとは開発者の開発ツールだったんですが、やっぱり面白いんですよ、ツール自体が。だから商品になった(笑)」

--それがBN-1へどうつながったんでしょうか

芳賀「BN-1の発表会で、恐竜ロボットのモデルなどを写真で見せましたが、どういう構造ならどんな動きができるかといった運動モデル自体の研究はずっとやっていたのです。そこにソニーのAIBOが出てきて、上司に「ウチではあれできないのか」と言われて、実はやってましたと(笑)。ただし当社は最初からなるべく値段を安くしたいと思っていますから、モーターを少なくする構造を考えました。脳ミソは、さっきのエンジンの技術をもっと複雑にすればペット的にも使えるということで、それと本体を合体させたわけです」

--ポイントはこのグラフィカルな目玉ですか?

芳賀「運動チームの主な目的は、ロボットの動きで人とのコミュニケーションをとることだったんです。ペットロボットというものがどんな動きをしたらいいのかということを研究しているんですね」

--しぐさみたいなものですか?

芳賀「ええ。実際にネズミなどを飼って、しぐさを検討しました。それでわかったことは、ロボットの表現には、やっぱり関節がたくさんあったほうがいいということです。でも、モーターは減らしてしまったから、それなら目玉をグラフィックにして気持ちを表現しようと。最初は正直いって漫画のような感じがして心配だったのですが、実際に動きと連動させてみるとうまくいきました」

--顔全体をグラフィックにする方法もありますよね

芳賀「ただ、顔と筐体部分とをどうつなぐかが難しいですね。顔はやっぱり重要ですから。角度や位置はちゃんとヒトの顔を見るようにしてあります。LEDの目玉も意外といい。デザインの面では、大きな目が入るということで難しかったようですが」

--動きというと、やはりロボット工学的に自由度だとかリンク機構だとかのアプローチになるんですか?

芳賀「いえ、必ずしもそうではなくて、われわれの場合、実際にモノを作るというのが先にあるんですね。作ってみて動かしたらよかったという感じです。おもちゃですから、モノになって動いてみないとわからないというのが基本的な考え方です」

--BN-1のデザインは最初から猫型だったのですか?

芳賀「骨組みができた段階で外装を検討したら、猫がいちばん可愛かったんですね。ただCAD上で見たときは非常に心配でした。ほとんど顔ばっかりですからね(笑)。実際に動かしてみたら、わりと可愛かったのでホッとしました」

--本体の色は白ですか?

芳賀「まだどうなるかわかりませんが、基本的には白です。実はボディーの部分だけがはずれるようになっているので、ここのデザインを変えるというアイデアはあるかもしれません。開けると保証外になりますけどね(笑)」

--女性がVAIOカラーにしてほしいと言ってくるかもしれませんね

芳賀「(笑)。かもしれないですね」

ワンダースワンの周辺機器ロボット『ワンダーボーグ』

ワンダーボーグは、ワンダースワンの周辺機器である自律型歩行ロボット。ワンダースワン専用ソフト『ロボットワークス』で、ワンダーボーグの動作パターンをプログラミングし、赤外線通信でそのプログラムをワンダーボーグにダウンロードできる。本体に赤外線センサー、明るさセンサー、光フェロモンセンサー、体内時計センサーを内蔵しており、周囲の状況を感知しながら、自身の判断で動き回る。今夏発売で価格は1万円前後
ワンダーボーグは、ワンダースワンの周辺機器である自律型歩行ロボット。ワンダースワン専用ソフト『ロボットワークス』で、ワンダーボーグの動作パターンをプログラミングし、赤外線通信でそのプログラムをワンダーボーグにダウンロードできる。本体に赤外線センサー、明るさセンサー、光フェロモンセンサー、体内時計センサーを内蔵しており、周囲の状況を感知しながら、自身の判断で動き回る。今夏発売で価格は1万円前後



--ワンダーボーグも反響は大きいですね

芳賀「簡単にプログラミングできる技術を軸にしてまとまっていると思います。最初は、もっと昆虫型にして、ポケットから出して戦わせて遊ぶようなコンセプトもあったんですが、結局現在の形になりました。遊び道具として、今までのおもちゃにはない要素があると思ってます」

--ワンダースワン上でのプログラミング環境はもう出来上がっているんですか?

芳賀「まだです。このプログラミング環境というのは、“このセンサーが反応したらこうする”ということをケースバイケースで決めるんですね。例えば、障害物を見つけると避けるとか。そう定義された脳ミソが全部で8個あって、時間ごとに切り替えています。8つのモードを動的にリンクすることで、最初は猪突猛進で前に動いて、一定時間経ったらいったん下がるというような動きの切り替えをやっています。BN-1ではそれをさらに発展させて、脳ミソにあたる行動モードが1000以上あってそれを切り替えています」

--AIBOなんかだと、成長しきっちゃうと見慣れたことしかしなくなっちゃうんですよね

芳賀「それはどんなロボットでもそうでしょうね。ただBN-1は行動のセットを自分で作り出す機能があるので、バリエーションはとっても多い。その行動セットを作り出す機能自体を実装するところはまだ作業中なんですけどね」

--それが開発でいちばん大変なところなんでしょうか?

芳賀「いえ、そうでもないんですけど、ロボットが遊びの中で、どう行動が変わればいいのか、いつ変わればいいのかが決まっていないわけです。ユーザーインターフェイスの問題ですね。ただ何となくロボットの行動様式を作ったとしても、BN-1は人間とのコミュニケーションが目的ですから、人間が知らない間にBN-1の行動パターンが変わっちゃうと面白くないんですよね。人間が見ているときに行動パターンが変わって、何か違うことを始めたぞ、とならないと面白くない。例えば『たまごっち』もそうでしたが、人間が見ていないときに成長するとだまされたような気分になるじゃないですか(笑)」

--あたかもコミュニケートしているように見えるのがいいと

芳賀「ええ、そうです」

--以前、タレントの黒柳徹子さんがテレビで、『AIBOに“ワッ”って言うと驚いてビクっとするんです』って自慢げに話していたんですけど、AIBO自身にはそんな機能はないんですよね、ホントは。あくまでAIBOがビクッとなったのは偶然なんですけど、でも本人がそう思える、思い込めることって意外と大事なんじゃないかなと思いますが、いかがでしょう

芳賀「そうでしょうね。それはわれわれもずいぶん気にしていることのひとつです。昨年、名古屋の“RoboCupジャパンオープン”にビートロイドを出したときも、センサーで障害物を検知してターンするという機能がうまく働かなかったんですね。でも手で進行方向を遮ったときに偶然曲がったら、『お、曲がった曲がった』って喜ばれて(笑)。今テストしているBN-1でも同じようなことがありました。そういう意味で、人間はこういうロボットと遊ぶ能力を持っているんですよ。ガラス窓の水滴を見ているだけで楽しめる人がいるように、そこに意志はないんだけど、人間は楽しめる。ですからそういう部分を誘発するのも仕事だと思っています」

(後編に続く)

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